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【医師解説】メッシの身長はなぜ伸びた?成長ホルモン治療の真実と、低身長を「最強の武器」に変えた理由

2026.03.09

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「メッシ選手はどうしてあんなに小柄なのに、世界のトップで戦えるの?」
「実は病気で身長が伸びなかった時期があるって本当?」
「プロのスポーツ選手を目指す子どもに、身長を伸ばす治療を受けさせるべき?」

サッカー界のレジェンド、リオネル・メッシ選手。テレビで彼のプレーを見るたび、周りの大柄な選手たちに囲まれながらも、圧倒的な技術でゴールを量産する姿に魅了される方は多いでしょう。

しかし、彼のその「小柄な体格」の裏には、幼少期に直面した「身長が伸びない病気」と、そこから立ち上がるための「成長ホルモン治療」という医学的なサポートがありました。

こんにちは。関節治療や、成長期のお子様の運動器疾患を専門とする「シンセルクリニック」総院長の武内晋司郎です。私自身、学生時代はラグビーや柔道といったフィジカルコンタクトの激しいスポーツに打ち込んできたため、アスリートにおける「体格」の重要性と、それに悩むお気持ちは痛いほどよくわかります。

【この記事でわかること】

  • メッシ選手の現在の身長と、幼少期に抱えていた「病気」の正体

  • もし「成長ホルモン治療」を受けていなかったらどうなっていたか?

  • 医師が解説する「成長ホルモン注射」のメカニズムと効果

  • 高身長が有利なサッカー界で、メッシが低身長を「最強の武器」にできた理由

  • プロを目指すお子様の身長を最大限に伸ばすための黄金習慣と治療の選択肢

この記事では、メッシ選手の軌跡を医学的な視点から紐解きながら、「子どもの身長を伸ばしたい」「スポーツで不利にならない体格を作ってあげたい」と願う保護者の皆様に向けて、医師が正しい知識とアプローチを徹底解説します。

1. メッシの身長は170cm。幼少期を襲った「伸びない病気」とは

現在、公式に発表されているリオネル・メッシ選手の身長は約170cm(169cm〜170cm)です。アルゼンチン代表の平均身長が約179cm、ヨーロッパのトップリーグのディフェンダーたちの多くが185cmを超える中で、彼は明らかに「小柄な選手」に分類されます。

しかし、彼が幼少期に抱えていた問題は「ただ小柄である」というレベルのものではありませんでした。

10歳で下された「成長ホルモン分泌不全性低身長症」の診断

メッシ選手は、10歳〜11歳の頃に「成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)」という病気であると診断されました。

人間の身長が伸びるためには、脳の奥深くにある「下垂体(かすいたい)」という部分から「成長ホルモン」が十分に分泌される必要があります。このホルモンが、骨の両端にある「骨端線(こったんせん)」という軟骨に働きかけ、骨を縦に長く成長させます。

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「成長ホルモン分泌不全性低身長症」とは、何らかの原因でこの成長ホルモンが十分に分泌されず、同年代の子どもたちと比べて著しく身長の伸びが遅れてしまう病気です。当時、担当した医師からは「もしこのまま何も治療をしなければ、メッシの最終的な大人の身長は140cm程度で止まってしまうだろう」と宣告されたと言われています。

もし身長が140cmであれば、どれだけ卓越した技術を持っていても、現代のプロサッカー界で生き残ることは極めて困難だったでしょう。彼のキャリアは、病気によって閉ざされる寸前だったのです。

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2. メッシを救ったFCバルセロナと「成長ホルモン治療」

才能豊かなメッシ選手でしたが、母国アルゼンチンのクラブチームは、高額な成長ホルモン治療の費用を負担し続けることができませんでした。そんな彼に救いの手を差し伸べたのが、スペインの名門クラブ「FCバルセロナ」です。

13歳のメッシ選手の圧倒的な才能を見抜いたバルセロナは、彼を下部組織(カンテラ)に引き入れるとともに、毎月の成長ホルモン治療費を全額負担するという異例の契約を結びました。

成長ホルモン補充療法(注射)のメカニズム

メッシ選手が受けたのは、不足している成長ホルモンを体外から補充する治療法です。現在、日本でも多くの低身長のお子様が受けている治療と基本的には同じもので、「ソマトロピン(遺伝子組換えヒト成長ホルモン)」という薬を、毎日または週に数回、ご自宅で皮下注射します。

「子どもに毎日注射を打つなんて可哀想…」と思われるかもしれませんが、使用される注射針は髪の毛よりも細く、痛みはほとんど感じないように設計されています。

メッシ選手はこの自己注射を数年間にわたって根気よく続けました。その結果、彼の骨は再び成長を始め、予測されていた140cmを大きく上回り、プロサッカー選手として戦える「170cm」という体格を手に入れることができたのです。

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👨‍⚕️【武内院長の臨床メモ:治療には「タイムリミット」がある】

メッシ選手が170cmまで伸びたのは、10代前半という「骨端線が開いている時期(成長スパート期)」に、適切な成長ホルモン治療を開始できたからです。診察室で、「高校生になってから周りとの体格差に悩み、今から注射をして伸ばしたい」とご相談に来られるアスリートのお子様がいます。しかし、思春期が終わり、骨の端にある軟骨(骨端線)が硬い骨に変わって閉じてしまうと、どれだけ成長ホルモンを投与しても身長は1mmも伸びません。もしお子様の成長曲線が極端に下回っている場合は、様子を見すぎず、骨端線が閉じる前に専門医の診断を受けることが、スポーツの可能性を広げる上で非常に重要です。

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3. なぜメッシは「低身長」を最強の武器にできたのか?

成長ホルモン治療のおかげで170cmまで成長したメッシ選手ですが、それでもピッチの上では小柄です。クリスティアーノ・ロナウド選手(185cm)や、アーリング・ハーランド選手(195cm)のような、恵まれた体格を持つライバルたちと比べると、フィジカル面では不利に見えます。

しかし、彼はこの「体格差」をハンディキャップとするのではなく、独自のプレースタイルに昇華させ、最強の「武器」に変えました。スポーツ医学の観点から見ても、彼の身体の使い方は非常に理にかなっています。

① 低い重心が生み出す「異次元のアジリティ(敏捷性)」

身長が低いということは、「身体の重心が地面に近い」ということです。重心が低いとバランスが崩れにくく、急激なストップ&ダッシュや、鋭い方向転換(切り返し)を極めてスムーズに行うことができます。大柄なディフェンダーが1歩を踏み出す間に、メッシ選手は細かなステップを2歩、3歩と踏むことができるため、相手は彼の動きを予測してついていくことができません。

② 相手の懐に潜り込む「ボディバランス」

大柄な選手と接触した際、通常であれば弾き飛ばされてしまいますが、メッシ選手は相手の重心の下(懐)にスッと入り込みます。低い位置から相手をブロックし、自分のバランスを保ったままボールを運ぶため、ファウルをしなければ止められないほどの突破力を生み出しています。

③「見えない」という利点と視野の確保

大柄な選手たちの間を縫って走る際、メッシ選手はディフェンダーの死角に入りやすくなります。また、自身の目線が低いことで足元のボールと相手の足の動きを同時に捉えやすく、狭いスペースでも正確なボールコントロールと創造的なパスを出すことができます。

このように、サッカーにおいては「身長が高ければ絶対に有利」というわけではありません。自分の体格の特性を深く理解し、それに合った技術を磨き上げることこそが、トップアスリートになるための絶対条件なのです。

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4. プロを目指す子どものために、家庭でできる「身長を伸ばす3大習慣」

メッシ選手のような特別な病気(成長ホルモン分泌不全症)でなくても、「スポーツで有利になるように、1cmでも多く身長を伸ばしてあげたい」と願うのは当然の親心です。

身長の伸びは「遺伝」が7〜8割を占めると言われていますが、残りの2〜3割は「栄養・睡眠・運動」という後天的な生活環境で決まります。この2〜3割のポテンシャルをいかに引き出すかが、将来の体格を左右します。

黄金習慣①:骨の材料を揃える「高タンパク&ミネラル食」

「牛乳を飲めば背が伸びる」は半分正解で半分間違いです。骨を伸ばすには、土台となる「タンパク質(肉、魚、卵、大豆)」、硬くする「カルシウム(乳製品、小魚)」、そして細胞分裂を促進する「亜鉛(牡蠣、レバー、赤身肉)」の3つが揃う必要があります。特にスポーツをしているお子様は、エネルギーを大量に消費するため、食事量が足りないと「骨を伸ばすためのエネルギー」が枯渇してしまいます。

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黄金習慣②:成長ホルモンをドバドバ出す「質の高い睡眠」

成長ホルモンは、深い睡眠に入ってからの最初の90分間に最も多く分泌されます。スポーツの練習や塾で帰りが遅くなっても、小学生は9〜10時間、中学生は8〜9時間の睡眠を死守してください。また、寝る直前までのスマートフォンの操作(ブルーライト)は、睡眠の質を著しく低下させ、成長ホルモンの分泌を阻害するため絶対にNGです。

黄金習慣③:骨端線を刺激する「縦方向の運動」と「休息」

ジャンプを伴う運動(バスケットボール、バレーボール、縄跳びなど)は、骨の成長プレートである骨端線に心地よい刺激を与え、骨の成長を促します。しかし、過度な筋力トレーニング(重いバーベルを上げるなど)やオーバーワークは逆効果です。筋肉の修復にエネルギーが奪われ、成長が止まってしまうことがあります。運動後はしっかりと休息を取り、体を回復させることが成長への近道です。

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👨‍⚕️【武内院長の臨床メモ:スポーツ少年の「疲労骨折」と伸び悩み】

スポーツを熱心に頑張るお子様の中で、「最近身長がピタッと止まって、足のすねや足の甲が痛い」と訴えて来院されるケースがよくあります。診察すると、激しい練習のしすぎによる「疲労骨折」や、慢性的なエネルギー不足(スポーツ障害)を起こしていることがあります。あるいは、膝の下がポッコリ腫れて痛む「オスグッド病」を抱えている子も非常に多いです。身体が悲鳴を上げている状態では、身長を伸ばす余裕はありません。「休むことも練習のうち」という言葉は、身長を伸ばす上でも医学的な大原則です。痛みがある時は無理をさせず、必ず専門医に診せてあげてください。

5. 伸び悩みが不安な時は?病院での「低身長」の検査と治療

「食事や睡眠には気をつけているのに、同級生と比べて極端に背が低い」
「メッシ選手のように、もしかしてうちの子も病気なのでは?」

そう不安に感じた時は、自己判断で様子を見ず、専門の医療機関(小児科、小児内分泌科、整形外科など)を受診してください。

受診の目安となる「-2.0SD」という基準

母子健康手帳の「成長曲線」に、お子様の身長を記録してみてください。同年齢・同性別の子どもの平均身長から、標準偏差(SD)を用いて計算した際、「-2.0SD」のラインを下回っている場合、医学的に「低身長」とみなされ、精密検査の対象となります。また、年間で4cm未満しか伸びていない場合(成長スパート期を除く)も注意が必要です。

病院で行われる検査

  • 骨年齢の評価:左手のレントゲン写真を撮影し、骨端線の開き具合から「あとどれくらい身長が伸びる余地があるか」を予測します。

  • 血液検査:成長ホルモンや甲状腺ホルモンが正常に分泌されているか、また亜鉛などの栄養素が欠乏していないかを調べます。

検査の結果、「成長ホルモン分泌不全性低身長症」などの基準を満たした場合、メッシ選手も受けた「成長ホルモン治療」が日本の健康保険の適用(公的助成の対象)で受けられる場合があります。

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「うちの子も治療できる?」と思われた方へ

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6. まとめ:身長は変えられる。そして、体格は「武器」になる。

リオネル・メッシ選手の軌跡は、私たちに多くの重要な事実を教えてくれます。

  • メッシ選手は「成長ホルモン分泌不全症」という病気を、成長ホルモン治療(注射)によって克服し、170cmまで身長を伸ばした。

  • 治療の成功には「骨端線が閉じている前(10代前半)」に開始したことが大きく影響している。

  • 高身長が有利なスポーツでも、彼は低身長による「低い重心」と「敏捷性」を最強の武器に変え、世界一になった。

  • プロを目指すなら、日々の「食事・睡眠・運動」で遺伝のポテンシャルを最大限に引き出すことが不可欠。

もしお子様が周りとの体格差に悩んでいたとしても、それを悲観する必要はありません。メッシ選手のように、その体格だからこそできるプレーが必ずあります。同時に、保護者の皆様が「正しい知識」を持ち、適切なタイミングで医療機関に相談することが、お子様の未来の選択肢を大きく広げることになります。

お子様の身長やスポーツ中の痛みで気になることがあれば、一人で抱え込まず、ぜひ私たち専門医にご相談ください。「思うままに動ける人生」、そして「夢に向かって全力でプレーできる身体」を作るため、私たちが全力でサポートいたします。

参考文献

  1. 日本小児内分泌学会「成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断と治療のガイドライン」
    低身長の医学的な診断基準(-2.0SD以下の定義など)および成長ホルモン治療の適応と安全性に関する国内の専門学会ガイドライン。
    http://jspe.umin.jp/medical/files/guide20191216.pdf

  2. Soliman A, De Sanctis V, Elalaily R. "Advances in pubertal growth and factors influencing it." Pediatric Endocrinology Reviews (2014)
    思春期における成長スパートのメカニズムと、それに影響を与える環境要因に関する研究論文。
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25565770/

  3. 文部科学省「令和4年度 学校保健統計調査」
    日本全国の児童生徒の発育状態(年齢別の平均身長・体重など)の公的な基準データ。
    https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/1268826.htm

医師監修記事

シンセルクリニック低身長治療センター医師 長田の顔写真

長田 直祥

(おさだ なおき)

シンセルクリニック 低身長治療センター医師

大阪医科薬科大学卒業。豊田厚生病院、中東遠総合医療センター、国立長寿医療研究センター、名古屋大学整形外科などで整形外科医としての経験を積み、現在はシンセルクリニック低身長治療センターで、お子さまの成長・低身長治療に携わる。日本整形外科学会所属。

医師プロフィールはこちら

大阪医科薬科大学卒業。豊田厚生病院、中東遠総合医療センター、国立長寿医療研究センター、名古屋大学整形外科などで整形外科医としての経験を積み、現在はシンセルクリニック低身長治療センターで、お子さまの成長・低身長治療に携わる。日本整形外科学会所属。

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