false
【身長×遺伝子】最終身長はどこまで決まる?母父の影響・振れ幅を医師が解説
2025.09.27

「うちの子、将来の身長はどれくらいになるんだろう?」
「両親ともに背が低いから、遺伝的に仕方ないのかな…」
お子さんの成長を見守る中で、このような不安や疑問を感じたことはありませんか?
多くの研究で「最終身長の約8割は遺伝で決まる」と言われており、この数字を聞いてがっかりしてしまう方もいるかもしれません。遺伝が大きな要因であることは事実ですが、それで全てが決まってしまうわけではないのです。
この記事では、身長と遺伝の科学的な関係性を解説するとともに、遺伝という設計図を最大限に活かす「残りの2割」の可能性に焦点を当てます。ご家庭で実践できる具体的な方法を知り、お子さんの健やかな成長をサポートしましょう。
遺伝で身長はどこまで決まる?予測計算と影響する4つのポイント

「先生、うちの子の身長、遺伝だとすると、もう伸びないんでしょうか?」
「父親と母親、どちらの遺伝が強いんですか?」
診察室では、お子さんの身長に関するご相談を親御さんから受けることが非常に多いです。私自身、学生時代は柔道やラグビーに打ち込んでおり、体格がパフォーマンスに直結することを身をもって経験してきました。だからこそ、身長に関する悩みや期待は痛いほどよく分かります。
遺伝が身長に大きく関わるのは事実ですが、すべてが決まってしまうわけではありません。正しい知識を持つことで、漠然とした不安を解消し、今できることに目を向けるきっかけになります。
最終身長の約8割は遺伝的要因で決まる

多くの研究から、最終的な身長の約8割は遺伝的な要因によって決まると考えられています。「8割も遺伝なら、努力しても無駄なのでは?」と感じるかもしれませんが、私はそうは思いません。
整形外科医として多くのお子さんの成長を見てきた経験から言えるのは、残りの2割の環境要因が、遺伝というポテンシャルを最大限に引き出す鍵になるということです。ご両親の身長はそれほど高くないのに、スポーツに打ち込み、食事や睡眠に気を配ることで予測身長を大きく超えて伸びたお子さんも見てきました。
遺伝はあくまで「身長の伸びやすさ」という設計図のようなものです。その設計図を元に、どれだけ立派な建物が建つかは、成長期という大切な時期の生活習慣にかかっているのです。
父親と母親どちらの影響が強い?隔世遺伝の可能性

「身長は父親に似る」「いや母親の方だ」といった会話は、よく耳にします。科学的には、お子さんの身長に対する遺伝的な影響は、父親と母親からほぼ半分ずつ受け継がれると考えられています。
身長に関わる遺伝子は数百個以上も見つかっており、それらが複雑に組み合わさって最終的な身長が決まります。これを多因子遺伝と呼びます。そのため、どちらか一方の影響が特に強いということはありません。
また、「隔世遺伝」といって、ご両親ではなく祖父母からの遺伝的な影響が現れることもあります。
ご両親は平均的な身長でも、おじい様やおばあ様が非常に背の高い方で、お子さんの身長がぐんと伸びるというケースは実際にあります。
これは、ご両親が持っているものの表には現れなかった「身長を高くする遺伝子」が、お子さんに受け継がれて発現した結果です。このように、身長の遺伝は単純な足し算ではなく、様々な世代の遺伝情報が影響し合っているのです。
両親の身長から最終身長を予測する計算式
お子さんの将来の身長がどのくらいになるのか、一つの目安として用いられる予測計算式があります。これはあくまで統計的な予測値であり、必ずこの身長になるというわけではありません。
【最終身長の予測計算式】
男の子の場合 (父親の身長 + 母親の身長 + 13) ÷ 2
女の子の場合 (父親の身長 + 母親の身長 - 13) ÷ 2
この計算式で「13」という数字が使われるのは、成人男女の平均身長差に基づいています。ただし、この計算結果には個人差があり、一般的に±5cmから10cm程度の幅があると考えてください。
私が診察でこの式をお伝えするのは、結果に一喜一憂してほしいからではありません。現在の成長ペースとの比較や、目標設定の参考にし、日々の生活習慣を見直すきっかけにしていただくためです。この予測身長と、母子手帳などに記録されている成長曲線を照らし合わせ、伸びが順調かどうかを確認することが大切です。
低身長や高身長の原因となる遺伝子疾患(骨形成不全症など)
ほとんどの場合、身長が低いことは個性や体質の範囲内です。しかし、中には病気が原因となっているケースも考えられます。成長曲線から大きく外れていたり、伸び率が極端に悪かったりする場合には、一度医師に相談することをお勧めします。
例えば、遺伝性疾患である骨形成不全症(OI)は、骨が非常にもろくなる病気です。整形外科医として勤務していた頃、軽い転倒で骨折を繰り返すお子さんを診察し、この病気の可能性を考えて専門医へ紹介した経験があります。
この病気による低身長は、骨折や骨の変形、背骨が曲がる脊柱側弯といった二次的な影響だけが原因ではありません。最近の研究では、遺伝子の影響が骨の端にある成長板(骨が伸びる部分)へ直接的に及ぶことも原因とされています。
幸いにも、近年では骨形成不全症の種類に応じた成長曲線も開発されています。これにより、お子さんの成長が病気の影響を考慮した上で順調であるかを、より正確に判断できるようになりました。
また、FAM111A関連骨異形成症といった、さらに稀な遺伝子疾患も存在します。この中の一つであるケニー・カフェイ症候群(KCS)では、出生後に身長の伸びが悪くなる「比例した短身」という特徴が見られます。
これは、手足だけが短いのではなく、体全体がバランスを保ったまま小さい状態を指します。これらの疾患は非常に稀ですが、早期に診断がつくことで、骨折予防などの適切な医学的管理に繋がります。
遺伝以外の要因で身長を伸ばすためにできる3つのこと

「先生、遺伝が8割と聞くと、もうできることはないんじゃないかと不安になります」
診察室では、親御さんからこのような切実な声をよく伺います。確かにある程度は遺伝的な影響を受けますが、すべてが決まってしまうわけではありません。
残された可能性を最大限に引き出すために、生活習慣を見直すことは非常に大切です。私が整形外科医として多くの成長期のお子さんを診てきた経験からも、栄養、睡眠、そして適切な運動が、最終身長に影響を与えることを実感しています。
ここでは、ご家庭で取り組める具体的な3つのポイントについて、私の視点からお話しします。
骨の成長を促す栄養素とバランスの取れた食事
身長を伸ばすということは、骨を伸ばすということです。骨の材料となる栄養素が不足していては、伸びるものも伸びません。私も学生時代にラグビーに打ち込んでいた頃、体を大きく、そして強くするために、食事の重要性を徹底的に教え込まれました。
骨と言えばカルシウムを思い浮かべる方が多いですが、実はそれだけでは不十分です。建物を建てるのに、セメントだけあっても立派な家が建たないのと同じです。
骨の成長に欠かせない主な栄養素
タンパク質 骨の主成分であるコラーゲンの材料です。いわば骨のしなやかな「鉄筋」部分にあたります。肉、魚、卵、大豆製品からしっかり摂取しましょう。
カルシウム 骨を硬く、強くする「セメント」の役割です。牛乳や小魚、緑黄色野菜に豊富に含まれています。
ビタミンD カルシウムの吸収を助ける重要なパートナーです。きのこ類や魚類に含まれるほか、日光を浴びることでも体内で作られます。
マグネシウム カルシウムの働きを調整する重要なミネラルです。これが不足すると、骨の成長に影響が出るだけでなく、腎臓にカルシウムが沈着して石灰化を起こすといった深刻な病気に繋がることもあります。非常に稀なケースですが、乳児期の重度なマグネシウム不足を調べていく中で、遺伝性の病気が見つかったという医学報告もあるほど、体にとって不可欠な栄養素なのです。ナッツや海藻類に多く含まれています。
これらの栄養素をバランス良く、毎日の食事から摂ることが骨を育てるための基本です。特に朝食を抜かずに、一日を始めるエネルギーと栄養をしっかり補給することが大切になります。
成長ホルモンの分泌を促す質の高い睡眠習慣
「寝る子は育つ」という言葉は、医学的に見ても真実です。身長を伸ばすために欠かせない「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。
特に、眠り始めてから最初の深いノンレム睡眠の間に最も多く分泌されることがわかっています。ですから、単に長く寝るだけでなく、「睡眠の質」を高めることが極めて重要です。
診察室で「夜は何時までスマートフォンを見てるかな?」とお子さんに尋ねると、少し気まずそうな顔をすることがよくあります。その気持ちも理解できますが、寝る直前までスマートフォンやゲーム機の画面を見ていると、ブルーライトの刺激で脳が覚醒してしまい、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりする原因になります。
質の高い睡眠のための習慣
就寝1時間前からはデジタルデバイスを避ける
毎日なるべく同じ時間に就寝・起床し、生活リズムを整える
寝室は暗く、静かで快適な温度・湿度に保つ
日中に適度な運動をする
こうした少しの心がけが、成長ホルモンの分泌を助け、身長の伸びをサポートすることに繋がります。
病院で受けられる検査(骨年齢・血液検査)と成長ホルモン治療
「うちの子、平均よりかなり小さい気がする…」と強いご心配がある場合は、一度専門の医療機関に相談することをお勧めします。小児科、特に内分泌を専門とする医師が窓口になります。
病院では、身長の伸びしろや、成長を妨げる病気がないかを調べるための検査が受けられます。
骨年齢検査 左手のレントゲン写真を撮影し、骨の成熟度合いを評価します。これにより、あとどれくらい身長が伸びる期間が残されているか(伸びしろ)を予測できます。
血液検査 成長ホルモンや甲状腺ホルモンなど、成長に関わるホルモンの値を調べます。
検査の結果、成長ホルモンの分泌が著しく少ない「成長ホルモン分泌不全性低身長症」などの病気が見つかった場合には、成長ホルモンを補充する治療が保険適用で行われます。
また、稀なケースですが、「非古典的先天性副腎過形成(NCCAH)」のように特定のホルモンバランスの異常により、思春期が早く来てしまうことがあります。一時的に身長が伸びても、骨の成熟が早く進むため、結果的に最終身長が低くなることがあるのです。こうした病気を見逃さないためにも、専門家による診断は非常に重要です。
よくある質問
診察室でよくいただく質問について、3つお答えします。
Q. 市販の身長サプリメントは効果がありますか?
A. サプリメントはあくまで「栄養補助食品」であり、医薬品ではありません。食事だけでは不足しがちな栄養素を補う、という目的で利用するのは一つの方法です。しかし、サプリメントを飲むだけで身長が魔法のように伸びることはありません。基本はあくまでバランスの取れた食事です。高価な製品も多いので、まずは日々の食生活を見直すことから始めてみてください。
Q. 低身長の治療は何歳までに始めるべきですか?
A. 身長の伸びにはタイムリミットがあり、骨端線が閉じてしまうと、それ以上骨は伸びません。一般的に男子で17歳頃、女子で15歳頃に骨端線は閉じるとされています。もし治療が必要な場合、このタイムリミットが来る前に開始しなければなりません。成長率が急に鈍化した場合や、周りとの差が気になる場合は、できるだけ早く医師に相談することが重要です。
まとめ
今回は、身長と遺伝の関係について詳しく解説しました。 最終身長の約8割が遺伝で決まるという事実は、親御さんにとって不安に感じるかもしれません。しかし、決して悲観する必要はありません。残りの2割を占める「環境要因」、つまり日々の生活習慣こそが、お子さんが持つ可能性を最大限に引き出すための大切な鍵となります。
遺伝はあくまで「設計図」です。バランスの取れた食事、質の高い睡眠、そして適度な運動を心がけることで、その設計図を元に、よりたくましい成長をサポートすることができます。もしお子さんの成長について気になることや不安な点があれば、一人で悩まず、ぜひ専門の医療機関に相談してみてくださいね。
参考文献
Adam MP, Feldman J, Mirzaa GM, Pagon RA, Wallace SE, Amemiya A, Cheng S, Lo IFM, Luk HM. "FAM111A-Related Skeletal Dysplasias."
Cui H, Zhang W, Zhang L, Qu Y, Xu Z, Tan Z, Yan P, Tang M, Yang C, Wang Y, Chen L, Xiao C, Zou Y, Liu Y, Zhang L, Yang Y, Yao Y, Li J, Liu Z, Yang C, Jiang X, Zhang B. "Risk factors for prostate cancer: An umbrella review of prospective observational studies and mendelian randomization analyses."
Kayal D, Vedrine E, Goursaud C, Sellier-Leclerc AL, Acquaviva-Bourdain C, Bertholet-Thomas A, Bacchetta J. "Unveiling atypical diagnoses: when whole-genome analysis performed for refractory infantile hypomagnesemia reveals primary hyperoxaluria."
Marulanda J, Retrouvey JM, Rauch F. "Skeletal and Non-skeletal Phenotypes in Children with Osteogenesis Imperfecta."
Loli P, Menotti S, di Filippo L, Giustina A. "Non-classical congenital adrenal hyperplasia: current insights into clinical implications, diagnosis and treatment."
院長監修記事

武内 晋司郎
(たけうち しんじろう)
シンセルクリニック総院長
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
同カテゴリの最新記事
Access
アクセス
大阪院
所在地
〒542-0086
大阪府大阪市中央区西心斎橋1-9-15
大京心斎橋ビル3F
Googleマップ
電車でお越しの方
大阪メトロ御堂筋線
心斎橋駅から徒歩3分
大阪メトロ御堂筋線
四つ橋駅から徒歩3分
名古屋(ドクターフォースクリニック)
所在地
〒460-0003
愛知県名古屋市中区錦1-15-8
アミティエ錦第一ビル3階
Googleマップ
電車でお越しの方
名古屋市営地下鉄桜通線
国際センター駅 徒歩8分
名古屋市営地下鉄東山線
伏見駅 徒歩7分
所在地
〒542-0086
大阪府大阪市中央区
西心斎橋1-9-15
大京心斎橋ビル3F
Googleマップ
電車でお越しの方
大阪メトロ御堂筋線
心斎橋駅から徒歩3分
大阪メトロ四つ橋線
四つ橋駅から徒歩3分
大阪
名古屋
まずは、ご相談ください
再生医療の可能性を、一人でも多くの方に知って頂きたいと思っています。
新しい選択肢を「知る」ために、まずはお気軽にお問い合わせください。
診療時間
9:00〜18:00
月
火
水
木
金
土
日
※木曜、日曜、祝日は休診日となります。










