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男子・女子で違う?低身長の原因と治療を医師が徹底解説
2025.09.28

「うちの子、クラスでいつも一番前で…」とお子さんの身長に悩んでいませんか。
「遺伝だから仕方ない」と、心のどこかで諦めてしまっている親御さんも少なくないかもしれません。
しかし、医学的に「低身長」とされるのは、同年齢・同性の子ども100人中2〜3人にあたる「SDスコア-2.0SD以下」の場合です。
そして最も重要なのは、その原因が遺伝だけとは限らないという事実。中には、成長ホルモンの不足など、早期の適切な治療で改善が見込める病気が隠れている可能性もあるのです。
この記事では、医師がお子さんの低身長について、ご家庭でできるチェック法から専門的な治療のすべてまで、親御さんの不安に寄り添いながら徹底解説します。
考えられる低身長の主な原因とご家庭でのチェック法
子どもの低身長チェック
「先生、うちの子、クラスでいつも一番前で…」
「周りの子と比べて小さいのが気になります」
診察室では、お子さんの身長について心配される親御さんから、このようなご相談を毎日のように受けます。成長に個人差があると頭では分かっていても、ご自身の身長が低かった経験から「遺伝だから仕方ないのでしょうか」と不安な表情をされる方も少なくありません。
整形外科医として長年、子どもたちの骨の成長を見守ってきた経験からも、そのお気持ちは痛いほどよく分かります。しかし、低身長の原因は遺伝だけではありません。中には治療によって改善できる病気が隠れている可能性もあります。ここでは、まずご家庭で確認できる低身長の医学的な基準や、考えられる原因について具体的にお話ししていきます。
「低身長」の医学的な基準とは?SDスコアと成長曲線

お子さんの身長が低いかどうかを客観的に判断するために、私たちは「SDスコア」という指標を用います。これは、同じ性別・同じ年齢の子どもたちの平均身長から、どのくらい離れているかを「標準偏差(SD)」という単位で数値化したものです。
具体的には、このSDスコアが「-2.0SD以下」の場合に、医学的に「低身長」と判断されます。これは統計上、100人のお子さんがいれば、背の順で低い方から2〜3人程度が該当する計算になります。
ご家庭では、母子健康手帳などに記載されている「成長曲線」を使ってみましょう。このグラフにお子さんの身長を定期的に記録し、標準的な成長の範囲を示す帯状のカーブと比較します。私が診察で最も重視するのは、単に低いことよりも「成長曲線のカーブからの逸脱」です。以下の点に当てはまる場合は、一度専門医に相談することをお勧めします。
【成長曲線で確認したいチェックポイント】
-2.0SDの線を下回っている
現在の身長が、同性・同年齢の子ども100人のうち低い方から2〜3番目以内に入っている状態です。
カーブから離れて横ばいになっている
これまで標準曲線に沿って伸びていたのに、急に伸び率が鈍化し、カーブから離れていくのは注意が必要なサインです。
年間の身長の伸びが極端に少ない
年齢によって異なりますが、思春期前で年間の伸びが4cm未満など、伸び率が著しく低い場合も受診の目安となります。
ただ低いだけでなく、伸び率の変化に注目することが、病気の早期発見につながる最も重要な鍵となります。
両親の身長から予測できる?男子・女子別の身長予測計算式
「親の身長が低いから、この子も伸びないのでは」というご質問も本当によく受けます。身長に遺伝的な要素が関わっているのは事実であり、ご両親の身長からお子さんの最終的な身長をある程度予測する計算式が存在します。
対象 | 予測身長の計算式 |
|---|---|
男子 | (父親の身長 + 母親の身長 + 13) ÷ 2 |
女子 | (父親の身長 + 母親の身長 - 13) ÷ 2 |
ただし、この計算式はあくまで統計的な目安であり、この結果に一喜一憂する必要は全くありません。なぜなら、身長の伸びは遺伝だけで決まるのではなく、後述する食事・睡眠・運動といった生活習慣や、ホルモンの状態など、様々な後天的な要因が複雑に絡み合って決まるからです。
ご両親ともに身長が高くなくてもお子さんが平均以上に伸びることもありますし、その逆のケースも珍しくありません。この計算結果は参考程度にとどめ、お子さんの健やかな成長をサポートすることに目を向けることが何よりも大切です。
成長ホルモン分泌不全症やSGA性低身長症など病気が原因の場合

お子さんの低身長の多くは、病気ではない「家族性低身長」や、成長がゆっくりな「体質性思春期遅発」といった、いわゆる個性や体質によるものです。しかし、中には治療が必要な病気が隠れている可能性もゼロではありません。私がこれまで診てきた患者さんの中にも、検査をして初めて病気が見つかったケースがありました。
低身長の原因となりうる代表的な病気には、以下のようなものがあります。
ホルモンの異常によるもの
成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌が不足している状態です。これらは身長の伸びに不可欠なホルモンです。
SGA性低身長症
お母さんのお腹の中にいる期間(在胎週数)に比べて小さく生まれ、その後3歳になっても身長が標準に追いつかない場合に診断されます。
染色体や骨の病気
ターナー症候群(女子のみ)、ヌーナン症候群、軟骨異栄養症など、特定の遺伝子や骨の成長に問題がある場合です。
心臓や腎臓などの慢性的な病気
体の重要な臓器に慢性的な病気があると、成長に必要なエネルギーや栄養が不足し、身長が伸びにくくなることがあります。
心理社会的な原因
極度のストレスや愛情不足などが原因で、成長が妨げられる「愛情遮断症候群」という状態もあります。
これらの病気は、適切な時期に適切な治療を行うことで身長の伸びを改善できる可能性があります。そのためにも、成長曲線でのチェックを通じて、変化に早く気づいてあげることが非常に重要になります。
身長を伸ばすために重要な3つの生活習慣(食事・睡眠・運動)

整形外科医として骨の成長を考える上で、遺伝的な要因と同じくらい重要だと考えているのが、「食事・睡眠・運動」という3つの生活習慣です。骨は、これらの生活習慣によって作られると言っても過言ではありません。
睡眠:成長ホルモンを分泌させるゴールデンタイム
成長ホルモンは、眠りに入ってから最初の深いノンレム睡眠の時に最も多く分泌されます。質の高い睡眠をとることが、身長を伸ばすための鍵です。寝る直前までスマートフォンやゲームの明るい画面を見ていると、脳が興奮して深い眠りに入りにくくなります。これは、眠りを誘うホルモン「メラトニン」が、ブルーライトによって分泌されにくくなるためです。
食事:丈夫な骨を作るための材料
骨の主成分であるカルシウム(牛乳、小魚、豆腐)はもちろん重要です。しかし、「牛乳をたくさん飲めば背が伸びる」と単純に考えるのは間違いです。牛乳でお腹が膨れてしまい、他の重要な栄養素が摂れなくなるのでは本末転倒です。 カルシウムの吸収を助けるビタミンD(きのこ類、魚類)、骨を丈夫にするビタミンK(納豆、緑黄色野菜)、そして骨や筋肉の材料となるタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)をバランス良く摂ることが大切です。
運動:骨への適度な刺激
縄跳びや軽いジョギングなど、骨に縦方向の刺激が加わる適度な運動は、骨の成長を促す効果が期待できます。私も柔道やラグビーをしてきましたが、体を動かすことで食欲が増し、夜もぐっすり眠れるという好循環が生まれます。ただし、過度な激しい運動は、かえって骨の成長を妨げる可能性も指摘されています。特定のスポーツにこだわる必要はなく、お子さんが楽しく続けられる運動を見つけてあげることが一番です。
低身長の専門的な検査と成長ホルモン治療のすべて

診察室でご両親から、「うちの子の身長が低い原因を詳しく知りたいです」「もし治療が必要なら、どんなことをするのでしょうか?」という切実なご質問をよく受けます。専門的な検査や治療について、具体的な情報を知りたい、でも少し怖い、と感じられるのは当然のことです。
ここでは、整形外科医として長年骨の成長を見守ってきた私の視点から、病院で行う精密検査の内容、成長ホルモン治療の具体的な方法、そして費用や公的な助成制度まで、保護者の方が本当に知りたい情報を一つひとつ丁寧にお話ししていきます。
病院で行う精密検査の内容(血液検査・手のレントゲン検査)
低身長の原因を正確に突き止めるために、病院ではいくつかの精密検査を行います。私が診察で重視するのは、主に「血液検査」と「手のレントゲン検査」の2つです。これらの検査結果をパズルのピースのように組み合わせることで、お子さんの成長の全体像を明らかにし、一人ひとりに合った方針を立てることができます。
血液検査
成長に関わるホルモンの状態を調べるために行います。特に重要なのが、脳の下垂体から分泌される「成長ホルモン」と、その働きを伝える伝令役のような物質「IGF-I(ソマトメジンC)」です。また、全身の代謝を司り、成長に影響を与える甲状腺ホルモンの値も確認します。
手のレントゲン検査
整形外科医として特に重視するのが、この検査です。利き手の影響が少ない左手のレントゲン写真を撮影し、「骨年齢」を評価します。骨年齢とは、骨の成熟度合いを示す指標のことで、暦の上の実年齢とは異なる場合があります。
成長ホルモン治療の対象となる基準と具体的な注射方法

精密検査の結果、特定の病気が原因で低身長になっていると診断された場合に、成長ホルモン治療が検討されます。この治療は、不足している成長ホルモンを医薬品で補い、身長の伸びを促すものです。
ただし、すべての低身長のお子さんが対象となるわけではなく、主に以下のような疾患で、かつ一定の基準を満たす場合に健康保険が適用されます。
【成長ホルモン治療の主な対象疾患】
成長ホルモン分泌不全性低身長症
SGA(Small-for-Gestational Age)性低身長症
ターナー症候群(女子のみ)
ヌーナン症候群
プラダー・ウィリー症候群
軟骨異栄養症(軟骨無形成症、軟骨低形成症)
小児慢性腎不全
治療は、「在宅自己注射」が基本です。診察室では「毎日注射なんて、うちの子にできるでしょうか」と心配される親御さんがほとんどです。しかし、治療はご家庭で、多くの場合、本来の成長ホルモン分泌のピークに合わせ、寝る前に1日1回、皮下注射を行います。
使用する注射器は操作が簡単なペン型のものが主流で、針も髪の毛ほどの非常に細いものが使われており、痛みを感じにくいように工夫されています。クリニックでは、看護師が丁寧に使い方を指導しますので、ほとんどの方が安心してご家庭で治療を続けられています。
治療で期待できる効果と知っておきたい副作用やリスク
成長ホルモン治療を始めるにあたり、どれくらいの効果が期待でき、副作用はどのようなものがあるのかを知っておくことは非常に重要です。
効果には個人差がありますが、一般的に治療開始後の1年目が最も身長の伸びが良く、その後は緩やかになる傾向があります。治療は、骨の成長が終わる(骨端線が閉じる)まで継続するのが基本です。
【期待できる効果】
身長の伸び率の改善
筋肉量の増加や体脂肪量の減少
全体的な健康状態や活力の改善
【知っておきたい副作用・リスク】
成長ホルモンは、もともと体内で作られるホルモンを補充するため、安全性の高い治療法とされています。しかし、まれに副作用が起こる可能性もゼロではありません。
主な副作用
注射した部位の赤み、痛み、かゆみ頭痛、関節痛、むくみ
まれな副作用
血糖値の上昇甲状腺機能の低下
これらの副作用を早期に発見するため、治療中は定期的に通院し、診察と血液検査を受けることが不可欠です。治療はマラソンのようなものです。医師が伴走者として定期的に状態を確認し、安全にゴールを目指せるようサポートしますので、気になる症状があればすぐに主治医に相談してください。
治療にかかる費用と保険適用・医療費助成制度(小児慢性特定疾病)
成長ホルモン治療は長期間にわたるため、費用面を心配される方も少なくありません。しかし、対象となる疾患と診断されれば、公的な制度を利用することで自己負担を大幅に軽減することが可能です。
健康保険の適用
前述の対象疾患の基準を満たす場合、治療には健康保険が適用され、自己負担は通常2割または3割となります。
小児慢性特定疾病医療費助成制度
健康保険が適用されても治療費は高額になりがちです。そこで、お子さんの医療費負担をさらに軽減するために「小児慢性特定疾病医療費助成制度」があります。この制度の認定を受けると、健康保険で3割負担になった医療費が、世帯の所得に応じて設けられた月々の自己負担上限額までで済むようになります。例えば、一般的な所得の世帯であれば、月々の負担は数千円から1万円程度に抑えられるケースが多くなります。
申請手続きは、お住まいの市区町村の担当窓口(保健所など)で行います。申請には医師の診断書が必要となりますので、まずはクリニックでご相談ください。
よくある質問
Q1. 治療は何歳まで続けられますか?
A1. 成長ホルモン治療は、骨の成長が終わる「骨端線が閉じる」までが基本です。整形外科医の視点では、手のレントゲンでこの骨端線の状態を定期的に確認することが重要になります。個人差はありますが、男子で17歳頃、女子で15歳頃が目安です。また、年間の身長の伸びが1.5cm以下になった場合なども、医師と相談の上で治療終了を検討します。
Q2. 注射は痛いですか?子どもが嫌がりませんか?
A2. 注射というと痛いイメージがあるかもしれませんが、治療に使われる針は採血などで使う針よりもずっと細く、痛みは最小限に抑えられています。もちろん、最初は注射を怖がるお子さんもいますが、治療を続けるうちに慣れて、自分で注射できるようになる子も少なくありません。何より大切なのは、ご家族が「毎日頑張っているね」と励ましながらサポートしてあげることです。その一言がお子さんにとって大きな力になります。
Q3. 治療を受ければ、必ず目標の身長まで伸びますか?
A3. これは非常によくいただくご質問ですが、正直に申し上げて「必ず」ではありません。身長は遺伝的な要素や日々の生活習慣も大きく関わるためです。成長ホルモン治療の目的は、病気によって妨げられていた「その子本来が持つ成長のポテンシャルを最大限に引き出すこと」にあります。治療によって、本来たどるはずだった成長曲線に近づけていく、というイメージが最も近いかもしれません。医師と目標を共有しながら、根気強く治療を続けていくことが重要です。
まとめ
今回は、お子さんの低身長について、ご家庭でできるチェック法から専門的な治療まで詳しくお話ししてきました。
お子さんの身長が周りと比べて低いと感じても、その原因は遺伝だけとは限りません。中には治療によって改善できる病気が隠れていることもあります。最も大切なのは、ご家庭で成長曲線を記録し「カーブから外れていないか」という変化に気づいてあげることです。
「うちの子は大丈夫かな?」と少しでも不安に感じたら、一人で悩まず、ぜひ専門のクリニックにご相談ください。専門家と一緒に正しい知識を得ることが、何よりの安心につながり、お子さんの健やかな未来を守るための大切な第一歩となります。
院長監修記事

武内 晋司郎
(たけうち しんじろう)
シンセルクリニック総院長
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
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