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【整形外科医が解説】整骨院に通っても治らない腰痛の正体|整形外科との違い・受診すべき腰痛の見分け方
「整骨院に何ヶ月も通っているのに腰痛が治らない」「施術後は少し楽になるが、また翌日には戻ってしまう」——整形外科外来でこうした方を多く診ています。
整骨院は筋肉・骨格のコンディショニングを専門とする施術所ですが、腰痛には整骨院の手技では対処できない医学的な原因が隠れているケースがあります。「何ヶ月通っても治らない」という状況は、治療先の選択を見直すサインかもしれません。整形外科医として、整骨院では対処できない腰痛の正体を解説します。
- 整骨院と整形外科:役割の根本的な違い
- 整骨院では治らない腰痛の正体4つ
- ①腰椎椎間板ヘルニア
- ②脊柱管狭窄症
- ③梨状筋症候群(坐骨神経の絞扼)
- ④内臓疾患・骨折・腫瘍による腰痛(要注意)
- 整骨院から整形外科へ移るべきタイミング
- 整形外科受診で何ができるか
- 整骨院で改善しなかった腰痛への整形外科的アプローチ
- 整骨院との上手な使い分け方
- なぜ「整骨院で治らない腰痛」が生まれるのか
- 腰痛のセルフケア:整骨院・整形外科にかかわらず今日からできること
- 整骨院でも整形外科でも治らない腰痛に再生医療は有効か
- よくある質問(FAQ)
- 整骨院での保険適用は腰痛に使えますか?
- 整骨院に通いながら整形外科にも受診できますか?
- 腰痛でMRIを撮るには整形外科の受診が必要ですか?
- まとめ
- 参考文献
整骨院と整形外科:役割の根本的な違い
まず整骨院と整形外科の違いを正確に理解することが重要です。
項目 | 整骨院(接骨院) | 整形外科 |
|---|---|---|
資格 | 柔道整復師(国家資格) | 医師(医師免許) |
できること | 骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷(筋肉損傷)への手技・物理療法 | 診断・処方・手術・注射・画像検査(X線・MRI) |
できないこと | 病気の診断・薬の処方・X線・MRI・注射・手術 | 手技マッサージ(一部クリニックはリハビリ室あり) |
保険の適用 | 骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷のみ(慢性腰痛は原則自費) | 保険診療・一部は自費 |
強み | 筋肉・骨格の調整・手技が得意 | 診断・薬物療法・画像検査・手術が可能 |
整骨院が得意なのは「筋肉・骨格のコンディショニング」であり、これは「腰の筋肉疲労・姿勢不良・軽度の筋膜性疼痛」には効果的です。しかし腰痛の原因が「器質的な疾患(椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症など)」「神経障害」「内臓疾患」にある場合、整骨院の手技では根本的に対処できません。
整骨院では治らない腰痛の正体4つ

①腰椎椎間板ヘルニア
椎間板の髄核が突出して神経を圧迫する状態です。腰痛だけでなく、坐骨神経痛(お尻から足にかけての痛み・しびれ)を伴うことが特徴です。神経への圧迫は手技で解除できません。MRIで診断し、神経ブロック・薬物療法・リハビリ・手術のいずれかを選択します。坐骨神経痛の症状については坐骨神経痛の原因・やってはいけないこと8選をご覧ください。
②脊柱管狭窄症
加齢による椎骨・靭帯の変性で脊柱管が狭まり、神経が圧迫される状態です。歩行すると痛みやしびれが強くなり、休むと楽になる「間欠性跛行」が特徴的です。整骨院でいくら施術しても、脊柱管の形態は変わりません。X線・MRIで診断し、神経ブロック・薬物療法・再生医療・手術を選択します。脊柱管狭窄症については脊柱管狭窄症の手術で後悔する前に知るべきこともご覧ください。
③梨状筋症候群(坐骨神経の絞扼)
お尻の深部にある梨状筋が坐骨神経を圧迫する状態です。腰椎に異常がなくても坐骨神経痛が生じます。整骨院の施術で一時的に筋肉がほぐれても、梨状筋の過緊張の原因(股関節のアライメント異常・姿勢)に対処しなければ再発します。梨状筋症候群とは?原因と治し方、やってはいけないこともご参照ください。
④内臓疾患・骨折・腫瘍による腰痛(要注意)
以下の「レッドフラグ(危険信号)」がある腰痛は、整骨院ではなく整形外科(または内科)に至急受診してください。
安静にしていても痛みが続く・夜間に悪化する
原因不明の体重減少が伴う
がんの既往がある
発熱を伴う腰痛
排尿・排便障害を伴う(馬尾症候群の疑い)
外傷後に急に腰が痛くなった(圧迫骨折の疑い)
これらは骨転移・感染性脊椎炎・圧迫骨折などの重篤な疾患のサインです。整骨院では診断も対処も不可能です。
整骨院から整形外科へ移るべきタイミング
こんな場合は整形外科へ | 理由 |
|---|---|
3ヶ月以上整骨院に通っても改善しない | 器質的な原因(ヘルニア・狭窄症)が隠れている可能性 |
足・お尻のしびれ・痛みを伴う | 神経の圧迫→MRIでの精査が必要 |
歩くと痛みが強くなり・休むと楽になる | 脊柱管狭窄症の間欠性跛行のサイン |
施術後は楽だが翌日には元に戻る繰り返しが数ヶ月続く | 根本原因への対処ができていない |
レッドフラグ(夜間痛・体重減少・発熱・排尿障害)がある | 重篤な疾患の可能性→至急受診 |
一方、以下のような腰痛は整骨院が有効なことが多いです。
急性の筋肉疲労・ぎっくり腰の回復期(炎症が落ち着いた後)
デスクワークや姿勢不良による筋肉疲労・コリ
整形外科での治療と並行してのコンディショニング
整形外科での診断を先に受けたうえで、骨格の調整・筋力維持を目的に整骨院を活用するという組み合わせが、多くの慢性腰痛に対して合理的なアプローチです。
整形外科受診で何ができるか

整形外科で初めて受診すると、以下の評価が行われます。
問診:痛みの性質・発症時期・悪化する動作・しびれの有無
身体診察:神経学的評価(腱反射・筋力・感覚検査)
画像検査:X線(骨の評価)・MRI(椎間板・神経・筋肉の評価)
診断と治療方針の説明:薬物療法・注射・リハビリ・手術・再生医療の選択肢
「MRIを撮ったことがない」という方が整形外科を受診すると、腰痛の本当の原因が初めてわかるケースが非常に多いです。「整骨院で治らない」という状況は、診断なしに治療をしていたことが原因であることが多くあります。
整骨院で改善しなかった腰痛への整形外科的アプローチ
整形外科では画像診断(X線・MRI)で腰痛の原因を特定したうえで、以下のアプローチを提供します。
原因疾患 | 整形外科での治療 |
|---|---|
腰椎椎間板ヘルニア | NSAIDs・神経障害性疼痛薬(タリージェ・リリカ)・硬膜外ブロック・手術 |
脊柱管狭窄症 | NSAIDs・神経ブロック・リハビリ・再生医療・手術 |
変形性腰椎症 | 薬物療法・コルセット・運動療法・再生医療 |
腰椎圧迫骨折 | コルセット固定・骨粗鬆症治療・場合によっては手術 |
内臓疾患由来の腰痛 | 内科・泌尿器科・婦人科への紹介 |
整骨院との上手な使い分け方
整形外科医として、整骨院を「敵」と考えているわけではありません。整形外科での診断・治療と整骨院でのコンディショニングを組み合わせることで、より良い結果が得られるケースがあります。
整形外科:診断・薬物療法・注射・必要なら手術を担当
整骨院:姿勢改善・筋肉のコンディショニング・再発予防の施術を担当
「整形外科でMRIを撮って腰椎椎間板ヘルニアと診断された。薬とリハビリを受けつつ、姿勢改善のために整骨院にも通う」という組み合わせは合理的です。重要なのは「先に整形外科で診断を受ける」という順序です。
なぜ「整骨院で治らない腰痛」が生まれるのか
日本の医療制度上、「腰が痛い」「肩が痛い」という症状を持つ患者さんが最初にどこに行くかは自由です。整骨院は地域に多く、予約なしで気軽に通えるため、医療機関より先に整骨院を選ぶ方が非常に多いです。
整骨院の施術で筋肉疲労・軽度の筋膜性疼痛は改善することがありますが、器質的な疾患(ヘルニア・狭窄症)があっても「施術後の筋肉の緩み」で一時的に症状が軽減されることがあります。このため「少し楽になったから続ける」→「でも根本的には良くならない」というサイクルが繰り返されます。数ヶ月〜年単位でこれが続き、「なぜ治らないのか」という疑問を持ったときに整形外科を受診すると、初めてヘルニアや狭窄症が判明するという経過は非常によくあります。
腰痛のセルフケア:整骨院・整形外科にかかわらず今日からできること
腰痛の改善に整骨院・整形外科の受診と並行して行える生活習慣の改善を整理します。
姿勢の改善:座り仕事が多い方は、骨盤を立てた正しい座り方を意識してください。長時間同じ姿勢を続けることが腰への最大の負荷です。30〜60分ごとに立ち上がって少し歩く習慣が腰痛予防に効果的です。
体幹筋の強化:腰を支える深層の体幹筋(腹横筋・多裂筋)が弱いと腰椎への負荷が増大します。仰向けでの腹式呼吸・ドローイン(お腹を引き込む)・バードドッグなどの体幹トレーニングが有効です。ただし急性腰痛(ぎっくり腰)の直後は安静が優先です。脊柱管狭窄症での手術回避の選択肢もご覧ください。
睡眠時のポジショニング:腰に最も負荷がかかりにくい寝姿勢は「仰向けで膝の下にクッション」です。うつ伏せは腰椎の後弯を増大させ、腰痛を悪化させることが多いため避けることをお勧めします。
整骨院でも整形外科でも治らない腰痛に再生医療は有効か

整骨院でも整形外科の保存療法でも改善しない腰痛の一部には、椎間板内部の炎症・椎間板変性による慢性的な痛みが関与しているケースがあります。この場合、再生医療(PRP療法・幹細胞治療)が根本的な炎症へのアプローチとして有効なことがあります。薬や湿布が届かない椎間板内部の炎症環境に、注射で直接生物学的製剤を届けることが可能です。脊柱管狭窄症での再生医療については脊柱管狭窄症の手術で後悔する前に知るべきことをご覧ください。梨状筋症候群(坐骨神経の絞扼)への対処については梨状筋症候群とは?原因と治し方、やってはいけないこともご参照ください。
「整骨院に何ヶ月も通ったのに治らない」という経験は、決して時間やお金の無駄ではありません。施術を受けることで一時的な楽さを得たり、体の状態への意識が高まったりすることはあります。ただし「治っていない」という事実は、今の治療アプローチが原因に対してミスマッチしているサインです。整骨院では診断できない疾患(椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・圧迫骨折など)が隠れている可能性があります。特に足のしびれ・夜間痛・歩くと痛くなる間欠性跛行がある場合は、早めに整形外科でMRIによる精査を受けることをお勧めします。原因が明確になれば、その原因に合った治療を選択できます。診断なしに治療を続けることが「治らない腰痛」の最大の原因です。
最後に強調したいのは、整骨院と整形外科は対立するものではなく、うまく使い分けることで相乗効果が得られるという点です。整形外科での正確な診断・薬物療法・注射療法と、整骨院での筋肉コンディショニング・姿勢指導を組み合わせることが、慢性腰痛の最善の管理になります。「整骨院か整形外科か」ではなく「まず整形外科で診断を受け、そのうえで整骨院を活用する」という順序が重要です。腰痛の薬物療法についてはロキソニンの効果・効果時間・副作用もあわせてご参照ください。
腰痛は日本人の生涯有病率が85%を超えるとも言われ、最も多い整形外科疾患の一つです。そのうち器質的な原因(ヘルニア・狭窄症・圧迫骨折など)が明確なものは15〜20%程度とされており、残りの80%は非特異的腰痛(明確な原因が特定できない腰痛)と分類されます。非特異的腰痛に対しては、整骨院・整形外科どちらでも「様子を見ながら」というアプローチになることが多いです。しかし「足のしびれを伴う」「排尿困難がある」「夜間痛がある」などのサインがある腰痛は器質的な原因が強く疑われ、MRIによる精査が不可欠です。これらのサインを見逃すことが「整骨院でも整形外科でも治らない腰痛」の慢性化につながります。
痛みはQOL(生活の質)に直結する重要な症状です。「我慢していればそのうち治る」「薬を飲み続ければいつか効く」という消極的な姿勢では、慢性疼痛・神経の不可逆的な変化・関節の変形進行という悪循環に陥るリスクがあります。痛みの原因を正確に把握し、その原因に対して最も適切な治療を選択することが、最短で改善する方法です。シンセルクリニックでは整形外科医が痛みの種類・原因・重症度を評価し、NSAIDs・神経障害性疼痛薬・注射療法・再生医療の中から最適な選択肢をご提案します。まずはご相談ください。
よくある質問(FAQ)
整骨院での保険適用は腰痛に使えますか?
柔道整復師が保険請求できるのは「骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷」の5疾患のみです。慢性腰痛・肩こりなどは保険適用外です。慢性腰痛で整骨院に長期通院している方は、保険を使っているように見えても実態は曖昧な場合があります。整形外科では多くの場合、慢性腰痛の治療も保険診療として受けられます。
整骨院に通いながら整形外科にも受診できますか?
問題ありません。むしろ「整形外科での診断あり」の状態で整骨院を利用することをお勧めします。整骨院の先生に「整形外科でこういう診断を受けた」と伝えることで、施術の内容も的確になります。
腰痛でMRIを撮るには整形外科の受診が必要ですか?
はい、MRIの撮影には医師の処方が必要です。整骨院ではMRIを撮れません。「整骨院で何ヶ月も通って改善しない」という方が整形外科を受診してMRIを撮ると、ヘルニアや狭窄症が初めて判明するケースは非常に多いです。
脊柱管狭窄症の具体的な手術回避については脊柱管狭窄症でやってはいけないこと8選もご覧ください。
まとめ
整骨院は筋肉・骨格のコンディショニングが専門。診断・薬・注射・手術はできない
整骨院では治らない腰痛:椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・梨状筋症候群・内臓疾患・腫瘍・骨折
3ヶ月以上通っても改善しない・足のしびれを伴う・夜間痛があれば整形外科へ
レッドフラグ(夜間痛・体重減少・発熱・排尿障害)がある場合は至急受診
整形外科での診断後に整骨院を並行活用する組み合わせが合理的
参考文献
Deyo RA, et al. "Red flags to screen for malignancy and fracture in patients with low back pain." Cochrane Database of Systematic Reviews. 2014;(1):CD008686.
日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン 2019年版」https://www.joa.or.jp/
van Tulder MW, et al. "Exercise therapy for low back pain." Cochrane Database of Systematic Reviews. 2000;(2):CD000335.
Chou R, et al. "Diagnosis and treatment of low back pain." Annals of Internal Medicine. 2007;147(7):478-491.
厚生労働省「柔道整復師の施術の保険請求の適正化について」https://www.mhlw.go.jp/
院長監修記事

武内 晋司郎
(たけうち しんじろう)
シンセルクリニック総院長
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
医師プロフィールはこちら
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
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