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抗がん剤の副作用・後遺症を医師が解説|いつまで続く?手足のしびれが残るときの治療と再生医療という選択肢

2026.09.26

「抗がん剤が終わって半年たつのに、足の裏に一枚紙が貼りついたような感覚が消えない」

「ボタンが留めにくい。箸が落ちる。でも主治医には"そのうち良くなる"と言われた」

「がんの治療はひと段落したのに、しびれのせいで以前の生活に戻れない」

こんにちは。シンセルクリニック総院長の武内晋司郎です。当院は膝・肩・股関節、そして手足のしびれや神経の痛みを専門に診ているクリニックです。整形外科の外来には、腰や首の病気だけでなく、がんの治療を終えた方が「このしびれは何とかならないか」と相談に来られることがあります。

この記事では、まず抗がん剤の副作用の全体像を時期別に整理し、そのうえで治療が終わっても残りやすい「手足のしびれ(化学療法誘発性末梢神経障害)」について、原因・続く期間・いまある治療法・再生医療の位置づけを、わかっていること・まだわかっていないことを分けてお伝えします。

最初にひとつだけ大切なことをお伝えします。いま抗がん剤治療中の方は、副作用のことはまず主治医と、がん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」に相談してください。 副作用の多くは、早めに伝えることで薬の量やスケジュールを調整できます。我慢して黙っていることが、いちばん損をしてしまいます。

【この記事でわかること】

  • 抗がん剤の副作用が「いつ・何が」出やすいか(時期別一覧)

  • 治療後も残りやすい後遺症の種類

  • 手足のしびれ(末梢神経障害)が起こりやすい薬と、続く期間の目安

  • しびれに対して現在ガイドラインで提案されている治療

  • 再生医療(幹細胞治療)について、現時点でわかっていること・わかっていないこと

  • 再生医療を受けられない方の条件と、主治医への相談の仕方


抗がん剤で副作用が出るのはなぜ?

抗がん剤で副作用が出るのはなぜ?

抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)は、細胞分裂が盛んな細胞を狙って攻撃します。がん細胞は分裂が速いので効果が出やすい一方、私たちの体にも分裂が盛んな正常細胞があります。

  • 血液をつくる骨髄 → 白血球・血小板・赤血球の減少

  • 口や腸の粘膜 → 口内炎・下痢・吐き気

  • 髪の毛をつくる毛根 → 脱毛

これらの正常細胞も一緒にダメージを受けることが、副作用の主な理由です。

一方で、神経はほとんど分裂しない細胞です。それでも一部の抗がん剤は、神経の長い突起(軸索)の中の物質の輸送や、細胞のエネルギーをつくるミトコンドリアの働きを傷つけます。神経は分裂して入れ替わることができないため、一度傷つくと回復に時間がかかり、治療が終わっても症状が残りやすいのです。これが「副作用」が「後遺症」に変わってしまう大きな理由です。

なお、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は、殺細胞性抗がん剤とは副作用の出方がまったく異なります(皮膚症状、甲状腺など内分泌の異常、間質性肺炎など)。この記事では主に殺細胞性抗がん剤について解説します。


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【時期別】抗がん剤の副作用一覧

【時期別】抗がん剤の副作用一覧

副作用には「出やすい時期」がある程度決まっています。あらかじめ知っておくと、「これは予想されていた症状だ」と落ち着いて対処しやすくなります。

時期

主な副作用

ポイント

投与当日〜数日

吐き気・嘔吐、アレルギー反応、血管痛、発熱、便秘

吐き気は予防薬(制吐薬)でかなり抑えられるようになっています

1〜2週間後

白血球減少(感染しやすくなる)、口内炎、下痢、食欲不振、だるさ

白血球がいちばん下がる時期。38℃以上の発熱はすぐに病院へ連絡を

2〜3週間後

脱毛、貧血、血小板減少(あざ・出血しやすい)

髪は治療終了後、数か月で生え始めることが多いです

数週間〜数か月(回数を重ねるごと)

手足のしびれ・痛み、爪や皮膚の変化、味覚の変化、むくみ

しびれは投与回数(累積量)が増えるほど出やすくなります

治療終了後も続くことがあるもの

手足のしびれ、倦怠感、集中力・記憶力の低下(ケモブレイン)、聴力低下、心機能・腎機能の低下、不妊 など

長く続くものは「後遺症」として別に向き合う必要があります

※症状の出方は、薬の種類・量・組み合わせ・体質によって大きく異なります。上の表はあくまで一般的な目安です。


治療が終わっても残りやすい「後遺症」

吐き気や脱毛の多くは、治療が終われば時間とともに回復していきます。一方で、次のような症状は治療終了後も長く続くことがあります。

手足のしびれ・痛み(化学療法誘発性末梢神経障害:CIPN)

後遺症のなかで最も多く、生活への影響も大きいのがこの症状です。詳しくは次の章で解説します。

がん関連倦怠感

休んでも取れない、体が鉛のように重いだるさです。貧血・栄養状態・睡眠・気分の落ち込み・甲状腺機能など、複数の原因が重なっていることが多く、原因ごとに対処します。適度な有酸素運動が改善に役立つことが、多くの研究で示されています。

ケモブレイン(認知機能の変化)

「物忘れが増えた」「集中が続かない」「段取りが組めない」といった変化です。多くは時間とともに改善しますが、長く続く方もいます。気のせいではなく、実際に報告されている症状ですので、遠慮なく主治医に伝えてください。

臓器への影響

薬によっては、心臓(アントラサイクリン系など)、腎臓・聴力(シスプラチンなど)、卵巣・精巣(妊よう性)に影響が残ることがあります。治療後も定期的な検査で経過を見ていくことが大切です。


手足のしびれ(末梢神経障害)はなぜ残る?いつまで続く?

手足のしびれ(末梢神経障害)はなぜ残る?いつまで続く?

どんな症状?

  • 手足の指先がジンジン・ピリピリする

  • 足の裏に何か貼りついている、砂利の上を歩いているような感覚

  • 手袋・靴下をはいているような鈍い感覚

  • ボタンが留めにくい、小銭がつまめない、箸が落ちる

  • つまずきやすい、暗い場所でふらつく

  • 冷たいものに触れると痛む(オキサリプラチンに特徴的)

症状は手足の先から左右対称に始まり、手袋・靴下で覆われる範囲に広がっていくのが典型的です。

整形外科の外来で特に気をつけているのが転倒です。足裏の感覚が鈍ると、段差や暗い廊下でバランスを崩しやすくなります。しびれそのものよりも、転倒による骨折で生活が大きく変わってしまう方がいます。

起こりやすい抗がん剤

薬の種類

主な薬剤名

よく使われるがん(例)

タキサン系

パクリタキセル、ドセタキセル、nab-パクリタキセル

乳がん、肺がん、胃がん、卵巣がん、膵がん

プラチナ系

オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン

大腸がん、胃がん、肺がん、卵巣がん

ビンカアルカロイド系

ビンクリスチン

悪性リンパ腫、白血病

その他

ボルテゾミブ、サリドマイド

多発性骨髄腫

どのくらいの人に、どのくらい続く?

複数の研究をまとめた解析では、抗がん剤治療を受けた方のうち、治療終了から1か月の時点で約68%、3か月で約60%、6か月以降でも約30%に末梢神経障害がみられたと報告されています(Seretnyら, 2014)。

つまり、多くの方は時間とともに軽くなっていきますが、およそ3人に1人は半年以上しびれが続くということです。

また、オキサリプラチンなどのプラチナ系では、投与をやめた後もしばらく(数か月)しびれが強くなり続けることがあります(コースティング現象)。「治療が終わったのに悪化している」と不安になる方が多いのですが、この経過自体は知られている現象です。

我慢しないでほしい理由

「がんが治ったんだから、しびれくらいは我慢しないと」とおっしゃる方がとても多いです。けれども、しびれは睡眠・家事・仕事・外出・趣味のすべてに影響します。がんの治療を乗り越えたあとの生活を取り戻すことも、治療の大切な目的のひとつです。我慢する必要はありません。


しびれに対して現在行われている治療

しびれに対して現在行われている治療

治療中:まずは抗がん剤の調整

治療中にしびれが出てきた場合、最も効果的なのは抗がん剤の量を減らす・間隔をあける・休薬する・薬を変更するといった調整です。これはがんの治療効果とのバランスで主治医が判断することなので、しびれは早めに、具体的に伝えてください。

伝え方の例:

  • 「ボタンが留めにくくなってきた」

  • 「つまずくことが増えた」

  • 「しびれが次の投与までに戻らなくなってきた」

「しびれます」だけより、できなくなった動作を伝えるほうが、主治医も重症度を判断しやすくなります。

治療後も残るしびれ・痛みに対して

方法

内容

位置づけ

デュロキセチン

神経の痛みに使われる飲み薬

国内外のガイドラインで、痛みを伴うしびれに対して使用が提案されている唯一に近い薬です。すべての方に効くわけではなく、吐き気・眠気などの副作用があります

プレガバリン・ミロガバリンなど

神経障害性疼痛に使われる飲み薬

抗がん剤によるしびれでは効果の裏づけが十分とはいえず、効果と副作用を見ながら慎重に使われます

漢方薬(牛車腎気丸など)

日本でよく処方される

予防・治療のいずれもはっきりした効果は示されていません

運動療法・リハビリ

バランス訓練、筋力トレーニング、有酸素運動

転倒予防や生活動作の改善に役立つと考えられています

生活の工夫

足元の照明、段差の解消、靴の見直し、やけど・けがの予防

しびれがある方は熱さや傷に気づきにくいため重要です

現状を正直にお伝えすると、抗がん剤によるしびれを確実に治す治療法は、まだ確立されていません。 だからこそ、多くの方が「付き合っていくしかない」と言われ、行き場を失ってしまいます。


再生医療(幹細胞治療)は抗がん剤の後遺症に使える?

再生医療(幹細胞治療)は抗がん剤の後遺症に使える?

こうした背景から、神経の修復や炎症の調整を期待して、間葉系幹細胞を用いた再生医療の研究が進められています。ここでは「わかっていること」と「まだわかっていないこと」を分けてお伝えします。

期待されている仕組み

間葉系幹細胞には、次のような働きがあると考えられています。

  • 炎症を落ち着かせる物質を出す

  • 神経を保護・修復する成長因子を出す(パラクライン効果)

  • 傷ついた細胞のミトコンドリアの働きを助ける可能性

抗がん剤によるしびれには、神経の炎症やミトコンドリアの障害が関わっているとされるため、この仕組みが研究の対象になっています。

わかっていること

研究では、パクリタキセルやシスプラチンなどで神経障害を起こしたマウス・ラットに間葉系幹細胞を投与したところ、痛みに対する過敏さや神経の状態が改善したという報告が複数あります。

再生医療を「受けられない」方

再生医療を「受けられない」方

これはとても大切なことです。

  • 現在がんの治療中の方、がんが体内に残っている(活動性がある)方:幹細胞ががんの増殖に影響する可能性を完全には否定できないため、原則として対象外となります

  • がんの治療を終えた方でも、主治医の了承と、再発の有無などの確認が必要です

  • 感染症がある方、全身状態が安定していない方

「しびれを何とかしたい」というお気持ちがどれほど強くても、がんの治療を最優先にすることは変わりません。 当院でも、主治医の先生の情報をいただいたうえで、適応があるかを慎重に判断しています。【※要確認:当院の受け入れ条件(治療終了後の期間・寛解の確認方法・診療情報提供書の要否)】

当院で行っている治療

当院では、手足のしびれや神経の痛み(神経障害性疼痛)に対して、ご自身の脂肪から採取・培養した幹細胞を点滴で投与する治療を行っています。

  • 入院不要・日帰りで行います

  • 脂肪の採取は局所麻酔で行う小さな処置です

  • 公的医療保険の対象外(自由診療)です。

  • 主なリスク・副作用:脂肪採取部位の痛み・内出血・腫れ、点滴に伴う発熱・倦怠感、まれに感染 など

  • 効果には個人差があり、改善がみられない場合もあります。


主治医に相談するときのポイント

主治医に相談するときのポイント

再生医療に限らず、治療後のしびれについて相談するときは、次の情報をまとめておくとスムーズです。

  1. 受けた抗がん剤の名前と回数(お薬手帳・治療の記録)

  2. 最後の投与日

  3. しびれが出始めた時期と、いまの経過(良くなっている/変わらない/悪くなっている)

  4. できなくなった動作(ボタン、箸、歩行、階段、夜の痛みで眠れない など)

  5. 現在飲んでいる薬

主治医の先生に「再生医療を考えている」と伝えにくいと感じる方もいらっしゃいますが、がんの状態を一番よく知っているのは主治医です。安全に判断するために、ぜひ正直に相談してください。


よくある質問

Q. 抗がん剤のしびれは、いつか必ず治りますか?

多くの方は治療終了後、数か月〜1年ほどかけて軽くなっていきます。ただし、半年以上続く方も約3割いると報告されており、「必ず治る」とは言い切れません。長く続く場合は、痛みの治療やリハビリを含めて相談することをおすすめします。

Q. しびれに効くサプリメントはありますか?

ビタミンE、アセチルL-カルニチン、ビタミンB群などが研究されてきましたが、はっきりした効果は示されていません。アセチルL-カルニチンについては、かえって悪化させる可能性を示した研究もあります。自己判断で始めず、主治医・薬剤師に相談してください。

Q. 冷やす・温めるのはどちらがいいですか?

オキサリプラチンでは冷たさで症状が出やすいため、治療中は冷たいものを避けるよう指導されます。一方、しびれがある方は熱さに気づきにくく、湯たんぽやカイロでやけどをすることがあります。温める場合も低温やけどに注意してください。

Q. 何科に相談すればいいですか?

まずはがん治療の主治医です。痛みが強い場合は緩和ケア・ペインクリニック、転倒やしびれによる動作の困難には整形外科やリハビリテーション科も相談先になります。どこに相談すればよいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」で無料で相談できます(その病院で治療を受けていない方も利用できます)。

Q. 再生医療は抗がん剤治療中に受けられますか?

原則として受けられません。がんの治療中・がんが残っている状態では対象外です。治療を終えた方で、主治医の了承が得られる場合に検討します。


まとめ

  • 抗がん剤の副作用は、時期によって出やすい症状が異なる。多くは治療終了後に回復する

  • 後遺症として最も多いのは手足のしびれ(末梢神経障害)。半年以上続く方も約3割いる

  • 治療中のしびれは早めに・具体的に主治医へ。抗がん剤の調整が最も効果的な対策

  • 治療後のしびれには、デュロキセチンなどの薬・リハビリ・生活の工夫がある。ただし確実に治す方法はまだない

  • 再生医療は動物実験での報告はあるものの、人での根拠はまだ限られた段階。がん治療中・がんが残っている方は対象外

  • 「がんが治ったのだから我慢しないと」と思わずに、生活を取り戻すための相談をしてほしい

がんの治療を乗り越えられたこと自体が、本当に大変なことです。そのうえで残ったしびれに、ひとりで耐え続ける必要はありません。当院でも、治療後のしびれについてのご相談をお受けしています。 再生医療が適しているかどうかも含めて、まずは現在の状態を一緒に整理するところから始めましょう。

【CTA: 手足のしびれ・神経障害性疼痛の相談ブロック(docs/plans/neuropathic-chronic-pain-cta.html を流用。「抗がん剤治療後のしびれ」を1行追加)】

▷ 手足のしびれ・痛みの再生医療について詳しく見る

▷ 神経障害性疼痛とは?原因・薬一覧・チェック・何科を受診すべきか

▷ 慢性疼痛とは?原因~治し方まで医師が解説


参考文献

  • Seretny M, et al. Incidence, prevalence, and predictors of chemotherapy-induced peripheral neuropathy: A systematic review and meta-analysis. Pain. 2014;155(12):2461-2470.

  • Loprinzi CL, et al. Prevention and Management of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy in Survivors of Adult Cancers: ASCO Guideline Update. J Clin Oncol. 2020;38(28):3325-3348.

  • 日本がんサポーティブケア学会 編. がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン 2023年版. 金原出版.

  • Boukelmoune N, et al. Nasal administration of mesenchymal stem cells reverses chemotherapy-induced peripheral neuropathy in mice. Brain Behav Immun. 2021;93:43-54.

  • Al-Massri KF, et al. Mesenchymal stem cells therapy enhances the efficacy of pregabalin and prevents its motor impairment in paclitaxel-induced neuropathy in rats. Behav Brain Res. 2019. 【※巻号・URL要確認】

  • 国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センター」


※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものです。症状や治療の適応には個人差があり、診断・治療方針は医師の診察に基づいて判断します。当院の再生医療は自由診療(公的医療保険適用外)です。費用・リスク・副作用については事前に十分ご説明します。

院長監修記事

シンセルクリニック総院長 武内の顔写真

武内 晋司郎

(たけうち しんじろう)

シンセルクリニック総院長

三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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