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【医師解説】臼蓋形成不全とは?股関節の痛みの原因と「手術を避ける」ための治療法

2026.02.10

「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」は、骨盤側の受け皿(臼蓋)が生まれつき浅く、太ももの骨の丸い先端(大腿骨頭)を十分に覆えていない状態です。「寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)」「股関節形成不全」と呼ばれることもあり、すべて同じ状態を指します。

受け皿が浅いと、体重を支える面積が小さくなり、関節の軟骨の一部にだけ負担が集中します。そのため、痛みがなくても、年齢を重ねるにつれて変形性股関節症へ進みやすいことが知られています。日本人の変形性股関節症の多くは、この臼蓋形成不全が背景にあるとされています。

この記事の結論

  • 受け皿の形は、大人になってからは自然には変わりません。ただし、痛みは治療や生活の工夫で軽くできます

  • 痛みがなければ、すぐに治療が必要なわけではありません。定期的に診てもらいましょう

  • 臼蓋形成不全は、国の指定難病には含まれていません。

臼蓋形成不全とは?股関節の仕組みと特徴

股関節の構造と臼蓋形成不全の図解

股関節の「屋根」が浅い状態

股関節は、骨盤側の受け皿である「臼蓋(きゅうがい)」と、太ももの骨の先端である「大腿骨頭(だいたいこっとう)」というボールが組み合わさってできています。
正常な股関節は、このボールが受け皿にしっかりと収まり、スムーズに動く構造になっています。

臼蓋形成不全とは、生まれつきこの受け皿(屋根)が浅く、ボール(大腿骨頭)を十分に覆いきれていない状態を指します。「寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)」とも呼ばれます。

屋根が浅いため、体重を支える面積が狭くなり、一部分に過剰な負担がかかりやすくなってしまいます。

発症しやすい人の特徴

私が診察室で多くの患者さんと接する中で、以下のような特徴を持つ方に多く見られます。

  • 女性(患者さんの約8割)

  • ご家族に股関節が悪い方がいる(遺伝的要因)

  • 乳児期に股関節の脱臼や、おむつの巻き方について指摘されたことがある

  • 学生時代から、運動後などに股関節に違和感があった


遺伝しますか?

臼蓋形成不全には、遺伝性の場合や、原因がはっきりしない場合もあるとされています。お子さんが心配な場合は、乳児期の股関節の健診(股関節の開き・脚の長さ)を受けることが大切です。

女性に多いですか?

臼蓋形成不全は、男性より女性に多い傾向があります。日本人の成人では、男性の0〜2%、女性の2〜7%にみられるとされています。

臼蓋形成不全は難病(指定難病)ですか?

臼蓋形成不全そのものは、国の「指定難病」ではありません。同じ股関節の病気で指定難病になっているのは「特発性大腿骨頭壊死症」で、別の病気です(特発性大腿骨頭壊死症とは)。

ただし、臼蓋形成不全が進行して変形性股関節症となり、人工関節の手術を受けた場合は、術後の関節の動きや筋力などの状態によって、身体障害者手帳(肢体不自由)の対象になることがあります。また、手術や入院で医療費が高額になった場合は、高額療養費制度が利用できます。具体的な条件は、お住まいの市区町村の窓口や主治医に確認してください。

放置するとどうなる?初期症状とリスク

初期は、痛みなどの症状がまったくないことも少なくありません。健康診断のレントゲンで偶然見つかる方もいます。症状が出る場合は、次のような順で現れやすくなります。

  1. 長く歩いたり立ったりしたあとの、足の付け根の重だるさ

  2. 歩き始め・立ち上がり時の足の付け根の痛み

  3. 靴下を履く・足の爪を切る・正座やあぐらがつらい

  4. 安静にしていても痛い(夜間痛)、足を引きずる、脚の長さに左右差が出る

痛みが出るのは片側だけの方も、両側の方もいます。片側だけの場合、かばう側の腰や反対側の股関節・膝に負担が移ることがあります。右か左かで病気の重さが変わるわけではありません。

放置すると、軟骨のすり減りが進み、初期→進行期→末期の変形性股関節症へと段階的に進みます。ただし、進み方は個人差が大きく、生涯症状が出ない方もいます。

股関節の痛みのイメージ

30代〜40代から痛み出すことが多い

初期の段階では、自覚症状がほとんどないことも珍しくありません。
しかし、年齢を重ねて筋力が低下したり、体重が増加したりすると、不安定な股関節を支えきれなくなり、以下のようなサインが現れます。

  • 立ち上がりや歩き始めに、足の付け根が痛む

  • 階段の上り下りで違和感がある

  • 長時間歩くと、股関節周りがだるくなる

  • あぐらがかきにくい

変形性股関節症への進行

最も注意すべきリスクは、放置することで軟骨がすり減り、「変形性股関節症」へと進行してしまうことです。

一度すり減った軟骨や変形した骨は、自然には元に戻りません。末期になると、骨同士が直接ぶつかり合い、激しい痛みで歩行が困難になる恐れがあります。

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早期発見の鍵は「MRI検査」による精密診断

臼蓋形成不全は、まず股関節の正面のレントゲンで診断します。受け皿の端と骨頭の中心を結んだ角度(CE角)を測り、正常はおよそ30度前後で、20度以下だと臼蓋形成不全と診断されます。

レントゲンとMRI検査のイメージ

診断の基本はレントゲン検査ですが、それだけでは不十分な場合があります。
レントゲンは骨の形を見るには適していますが、痛みや違和感の原因となる「軟骨」や「関節唇(かんせつしん:股関節のパッキンの役割をする組織)」の状態までは詳しく映らないからです。

隠れた原因を見逃さないために

「レントゲンでは異常なしと言われたけれど、やっぱり痛い」

そんな時は、より詳細なMRI検査が有効です。
MRIであれば、レントゲンには映らない初期の炎症や、関節唇の損傷などを鮮明に捉えることができ、適切な早期治療につながります。

▼あわせて読みたい

関節のMRI検査とは?MRIとレントゲンの違いを医師が解説!


臼蓋形成不全の治療法:保存療法から手術まで

臼蓋形成不全は治りますか?

大人になってからは、受け皿の形そのものを自然に元に戻すことはできません。ただし、痛みを軽くし、進行をゆるやかにすることは可能です。治療は、痛みの強さと進行の段階によって選びます。

痛みを和らげる方法

  • 体重を適正に保つ(体重が1kg増えると、歩くときの股関節への負担はそれ以上に増えます)

  • お尻の横の筋肉(中殿筋)を、体重をかけずに鍛える

  • 痛い日は杖を使い、長距離や階段を減らす

  • 炎症が強いときは、痛み止め(内服・湿布)を医師の指示で使う

やってはいけないこと

深くしゃがむ・あぐら・横座り・痛みを我慢して長く歩く、といった動作は避けてください。運動の詳細は臼蓋形成不全の運動・ストレッチ解説をご覧ください。

治療法は、症状の進行度や年齢、ライフスタイルに合わせて選択します。

1. 保存療法(手術をしない治療)

初期段階や痛みが軽い場合は、まずは手術を行わない治療を選択します。

体重コントロール

股関節にかかる負担を減らします。

運動療法(リハビリ)

股関節周りの筋肉を鍛え、関節を安定させます。

薬物療法

痛み止めや湿布で炎症を抑えます。

▼自宅でできるストレッチ

高齢の方でも無理なくできる、股関節周りの筋肉(腸腰筋)をほぐすストレッチが有効です。

▼あわせて読みたい
【腸腰筋ストレッチ】高齢者でも簡単!ほぐして姿勢改善する方法を医師が実践!

2. 手術療法

保存療法で改善が見られず、日常生活に支障が出る場合は手術が検討されます。

  • 骨切り術 (こつきりじゅつ)

  • 比較的若い方向け

自分の骨を切って関節の形を整える手術。自分の関節を温存できるのが特徴です。

  • 人工股関節置換術

  • 変形が進んだ方向け

傷んだ関節を取り除き、人工関節に入れ替える手術。痛みが劇的に改善するのが特徴です。


当院では手術は行わず、必要に応じて連携先の医療機関をご紹介します。

手術を回避する「第3の選択肢」再生医療

🗣️ 「まだ若いから人工関節にはしたくない」

🗣️ 「仕事を長く休むわけにはいかない」

そう悩む方のために、当院では「再生医療」という新しい治療法を提供しています。

自分の細胞で修復を促す

再生医療は、患者様ご自身の脂肪から採取した「幹細胞」を培養し、股関節に注射する治療法です。
幹細胞には、炎症を強力に抑えたり、傷ついた組織の修復を促したりする働きがあります。

すり減った軟骨の修復を促すことが期待される治療です。適応は、MRIなどで軟骨の状態を確認したうえで判断します。

【再生医療のメリット】

手術不要

メスを使わず、注射のみで治療が完了します。

入院不要

日帰りで治療が可能です。

副作用のリスクが低い

自分の細胞を使うため、拒絶反応の心配がほとんどありません。

これまでは「痛み止めで我慢」か「手術」かの二択でしたが、再生医療はその間を埋める、体に優しい選択肢として注目されています。

実際の患者様の声

再生医療を受けたことで、痛みが軽減し、日常生活を取り戻された患者様のインタビュー動画です。

「手術しかない」と言われた股関節の痛みにお悩みの方へ
手術を回避する、新しい選択肢としての「再生医療」

再生医療の症例実績を見る

記事監修 シンセルクリニック 院長 武内 晋司郎

参考文献 Zhang S, Doudoulakis KJ, Khurwal A, Sarraf KM. "Developmental dysplasia of the hip." British journal of hospital medicine (London, England : 2005) 81, no. 7 (2020): 1-8

よくある質問(FAQ)

Q. 臼蓋形成不全の読み方は?

「きゅうがいけいせいふぜん」と読みます。「寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)」とも呼ばれ、同じ状態を指します。

Q. 臼蓋形成不全は指定難病ですか?

いいえ、指定難病ではありません。ただし、進行して人工関節の手術を受けた場合は、術後の状態によって身体障害者手帳の対象になることがあります。

Q. 臼蓋形成不全は遺伝しますか?

遺伝性の場合や、原因がはっきりしない場合もあるとされています。お子さんには乳児期の股関節健診を受けることが大切です。

Q. 臼蓋形成不全は片側だけでもなりますか?

なります。片側だけのこともあれば、両側のこともあります。右か左かで重症度は決まりません。

院長監修記事

シンセルクリニック総院長 武内の顔写真

武内 晋司郎

(たけうち しんじろう)

シンセルクリニック総院長

三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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