Column
false
閉じる
2025.12.01
院長監修記事

武内 晋司郎
(たけうち しんじろう)
シンセルクリニック総院長
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

「もう二度と動けないのではないか」
――首のケガと聞いて、そんな強い不安に襲われたことはありませんか?
首のケガ、特に頸椎損傷や頚髄損傷は、時にあなたの人生を大きく変えてしまう可能性があります。
しかし、適切な知識と最新の治療法、そして予防策を知ることで、不安を乗り越え、自分らしい生活を取り戻す道は必ず開けます。
この記事では、原因から麻痺のメカニズム、幹細胞治療といった最先端の再生医療について医師が詳しく解説します。




「首の骨が折れた」「首の神経を痛めた」と聞くと、多くの患者さんは「自分はもう動けなくなるのではないか」という強い不安を感じられるものです。
首のケガは、時に人生を大きく変えてしまう可能性があります。しかし、適切な知識と治療、そして予防策を知ることで、不安を乗り越え、自分らしい生活を取り戻す道は必ず開けます。
私たちの体は、脳という司令塔からの指令を全身に伝えるために、電気信号のような「神経」の束が張り巡らされています。

この重要な神経の束を守っているのが「背骨」です。
特に、頭を支える首の骨を「頸椎(けいつい)」、その中を通る最も重要な神経の束を「頚髄(けいずい)」と呼んでいます。頚髄は、脳から伸びる脊髄(せきずい)の一部であり、まさに「体の情報高速道路」の玄関口のような存在です。
診察で患者さんが「首の骨がずれていると言われた」と心配そうな顔をされる時、私はいつも「骨と神経、どちらを損傷したかで、症状の出方が大きく変わりますよ」と丁寧にご説明しています。
頸椎損傷(けいついそんしょう)

首の骨、つまり頸椎そのものが骨折したり、ひびが入ったり、ずれたりすることです。骨そのものの損傷が主なため、強い痛みや首の動きの制限が出ることが多いです。
骨折が軽度で頚髄への圧迫がなければ、麻痺は起こらない場合があります。
「転んで首を打った後、首が回らなくなって、痛くて眠れない」という患者さんの場合、頸椎損傷の可能性が高いです。
頚髄損傷(けいずいそんしょう)

頸椎の中を通る、脳からの指令を伝える大事な神経の束である頚髄そのものが傷ついてしまうことです。
「神経の束」が傷つくと、脳からの指令が手足に届かなくなったり、手足からの感覚が脳に伝わらなくなったりします。その結果、手足の麻痺、呼吸がしづらい、排泄がうまくいかないなど、広範囲にわたる深刻な症状が出ることがあります。
「首をぶつけてから、手の指先が動かしにくくなった」という患者さんの場合は、頚髄損傷を強く疑います。
私たち医師が最も注意を払うのは、頸椎損傷が原因で頚髄にまで影響が及んでいないか、ということです。
Padwalらの研究(2026年発表予定)が示す通り、頸椎の解剖は非常に複雑であり、外傷時には病状と誤認される可能性のある解剖学的変異が複数存在すると指摘されています。そのため、正確な診断のためには、骨だけでなく神経の状態を詳しく見極めることが非常に大切なのです。

脊髄は、首の部分の頚髄(C)、胸の部分の胸髄(T)、腰の部分の腰髄(L)、お尻の部分の仙髄(S)に分かれており、それぞれがさらに細かく区分されています。
どこを損傷したかによって、体に現れる症状は大きく異なりますが、特に首の頚髄を損傷すると、手足の麻痺だけでなく、呼吸がしづらくなったり、排泄機能の障害など、広範囲にわたる深刻な症状が出ることがあります。
例えば、頚髄の最も高い位置にあるC1からC3という部分を損傷すると、手足の麻痺だけでなく、呼吸に欠かせない横隔膜(おうかくまく)という筋肉も麻痺してしまうため、自力で呼吸をすることが非常に難しくなり、人工呼吸器が必要となる場合も少なくありません。
私が病院で勤務していた頃、C1損傷の患者さんを診たことがありますが、ご本人もご家族も、突然の出来事に大きな衝撃を受け、深い悲しみと不安に包まれていました。その時の悔しさが、今でも私の心に深く残っています。
手足のしびれ、麻痺の再生医療を実施中!
シンセルクリニックは「しびれ、麻痺」に特化したクリニックであり手術を回避する再生医療という新しい治療を提供しております。




脊髄が損傷すると、脳から手足へ「動け」という指令が届かなくなったり、逆に手足からの「熱い」「痛い」「触られている」といった感覚が脳へ伝わらなくなったりします。例えるなら、電話線が途中で切れてしまい、情報が伝わらなくなるようなものです。この情報伝達のトラブルが、いわゆる「麻痺」という状態を引き起こすのです。

診察室で患者さんから「先生、指先が痺れてペンが持てないんです」「足が重くて、思うように動かせません」といった具体的なお困りごとを聞くたびに、この情報伝達の遮断がいかに患者さんの日常生活に大きな影響を与えるかを痛感します。
ある70代の男性患者さんは、転倒で頚髄を損傷され、「朝、自分で顔を洗うことがこんなにも大変だとは思いませんでした」と涙ながらにお話しくださいました。
麻痺の症状は、脊髄のどのレベルが、どの程度損傷したかによって大きく変わります。脊髄は、まるで何本もの電線が集まったケーブルのようで、損傷した部分から下の電線に影響が出ます。
例えば、頚髄でもC4以下の損傷であれば、横隔膜の機能が残っている場合が多く、自力で呼吸ができることもあります。
私が柔道やラグビーといったコンタクトスポーツを経験してきた中で、首への衝撃がどれほど危険か、身をもって知っています。
もし脊髄が完全に断裂してしまったら、その下にある神経は完全に機能停止してしまいます。しかし、部分的な損傷であれば、回復の可能性も残されています。

麻痺には大きく分けて「完全麻痺」と「不全麻痺」の2種類があります。
完全麻痺
損傷した部位より下の運動機能と感覚が完全に失われてしまう状態を指します。
例えば、下肢(かし:脚のこと)の完全麻痺の場合、肛門(こうもん)を締める筋肉を意識的に動かすことや、肛門周辺の感覚を感じることもできなくなります。
「触られている感覚が全くない」という患者さんの言葉は、私たち医療者にとっても非常に重く響きます。
不全麻痺
運動機能や感覚が完全には失われず、一部が残っている状態です。
下肢の不全麻痺であれば、肛門の感覚が残っていたり、わずかに脚の筋肉を動かせたりすることもあります。
この違いは、回復の見込みやリハビリテーションの計画を立てる上で非常に重要なポイントとなります。
「少しでも指が動くなら、希望が見える」と、患者さんの表情が明るくなる瞬間を、私は何度も見てきました。



体に麻痺が残るほどの頸椎・頚髄損傷は、外部からの強い衝撃が原因となることがほとんどです。主な原因としては、交通事故(特にむちうちのような強い衝撃)、高所からの落下、スポーツ中の衝突などが挙げられます。
しかし、原因はこれらだけではありません。

私が整形外科医として診てきた中で、特に高齢の患者さんに多いのが、ご自宅内でのちょっとした転倒で頸椎を損傷してしまうケースです。
加齢とともに骨がもろくなる骨粗しょう症の影響で、若い方なら何でもないような軽い転倒でも、骨折や頚髄損傷につながることがあります。
さらに、高齢の方に増加傾向にあるのが「非骨傷性(ひこつしょうせい)頚髄損傷」というタイプです。
これは、交通事故や転倒などのはっきりとした外傷がなくても、加齢によって頸椎の骨の形が徐々に変化し、中の頚髄が慢性的に圧迫されて損傷してしまうものです。骨折がないため、初期には見過ごされやすい危険があります。私が整形外科医として勤務していた時、「なぜか最近、手足が痺れるようになった」と訴える高齢の患者さんが増えていることに気づき、深い懸念を抱いたものです。
精密検査で骨の変形が判明した時には、「もっと早く気づいてあげられれば」という思いに駆られました。
このような頸椎・頚髄損傷を予防するためには、日常生活における注意が欠かせません。
日常生活での工夫

スマートフォンの長時間使用で首を前に傾けすぎないように注意し、定期的に首や肩のストレッチを行いましょう。ご自宅では、段差をなくしたり、浴室や階段に手すりを設置したり、滑り止めマットを敷いたりするなど、転倒しにくい環境を整えることが大切です。
「ちょっとした段差につまづいてから、首の調子が悪くなった」という患者さんの経験から、私も日頃から注意を呼びかけています。
スポーツでの安全対策
特に接触の多いスポーツや高リスクのスポーツを行う際は、適切な保護具(ヘルメットや首のサポーターなど)を正しく着用することが不可欠です。
最新の研究(2025年発表)では、頸椎の筋力強化がラグビー選手のスポーツ関連脳震盪の発生率を約45%減少させる可能性が示唆されています。
これは直接的な頚髄損傷の予防ではありませんが、首の筋肉を強く保つことが外からの衝撃に対する抵抗力を高めるという点で、高齢者の方にとっても転倒時のリスク軽減につながると私は考えています。
職場での安全対策
重量物を持ち上げたり運んだりする際の正しい姿勢や技術を身につけ、作業環境を人間工学的に改善することも、首への負担を軽減するために重要です。
従来の治療法としては、まず損傷の拡大を防ぐために、安静を保ち、首をコルセットなどで固定することが一般的です。

脊髄が骨折した骨片や椎間板(ついかんばん)によって強く圧迫されている場合には、手術によってその圧迫を取り除き、骨折した部分を固定する処置が行われます。
そして、麻痺によって失われた機能の回復を目指し、理学療法士や作業療法士による専門的なリハビリテーションが欠かせません。
私は長年整形外科医として、手術やリハビリテーションで症状が改善する患者さんを多く診てきましたが、同時に「もっと根本的な治療法はないものか」「一度傷ついた神経は本当に元に戻らないのだろうか」という葛藤も抱えていました。その思いが、再生医療への道を開くきっかけとなったのです。済生会中津病院や淀川キリスト教病院での勤務を経て、シンセルクリニックを開設して以来、多くの患者さんの「もう一度歩きたい」「自分の手で食事をしたい」という願いと向き合ってきました。
手のしびれの治療の選択肢のひとつに、「再生医療」という最新の治療法もあります。今までの治療では、薬で痛みが抑えられなくなった場合には手術をするしかないと言われていました。
そのため、日常生活においても首に負担がかからないように気をつけ、痛みが出たら痛み止めを服用し、緩和しながら進行を遅らせるなど、精神面や痛みのコントロールが重要でした。しかし、最近では再生医療が注目されています。
再生医療はまだ新しい治療法ですが、手のしびれに対して、多くの患者さんで痛みの軽減、しびれの改善の効果が報告されています。
再生医療では、修復が不可能と言われている神経を新たに再生させていく画期的な治療法です。この再生医療では手術を行いませんので、身体への侵襲が少ない治療となります。手術を実施した場合には、侵襲するため以前のお体の状態に戻るのに長い期間がかかりますが、 再生医療は侵襲が少ない治療法のため、 すぐに体の状態を回復させることができます。



Q1. 受傷から数年が経過していますが、治療による回復の可能性はありますか?
A. 決して「手遅れ」と諦める必要はありません。
一般的に、神経の回復は受傷後6ヶ月〜1年程度でプラトー(停滞期)に入ると言われてきました。しかし、近年の再生医療の研究・臨床においては、数年経過した「慢性期」の患者様であっても、機能改善が見られるケースが報告されています。 幹細胞には、傷ついた神経細胞の修復を促したり、炎症を抑えたりする働きがあります。時間が経っていても、適切なリハビリテーションと再生医療を組み合わせることで、今まで動かなかった指が動くようになったり、感覚が戻ってきたりといった「新たな可能性」を引き出せるケースが増えています。
Q2. 再生医療を受ければ、辛いリハビリはしなくても良くなりますか?
A. いいえ、再生医療とリハビリは「二人三脚」で行うことが不可欠です。
これは誤解されやすい点ですが、幹細胞を投与するだけですぐに手足が元通り動くわけではありません。再生医療は、あくまで「神経が繋がりやすい土台(環境)」を整える治療です。 整った土台の上で、脳から手足へ指令を送る回路を再構築するためには、リハビリテーションによって繰り返し「動かす練習」をすることが絶対に必要です。 「再生医療 × リハビリテーション」。この掛け合わせこそが、回復の限界を突破する鍵となると、私は考えています。
Padwal J, Hashmi S. "Normal and Variant Anatomy of the Cervical Spine." Oral and maxillofacial surgery clinics of North America 38, no. 1 (2026): 133-147.
Alvacite Cardenas D, Preston N. "Does strengthening the cervical spine musculature enhance neck strength and reduce sports-related concussions in rugby and football players? A systematic literature review." Journal of bodywork and movement therapies 45, no. (2025): 332-358.
Access
〒542-0086
大阪府大阪市中央区西心斎橋1-9-15
大京心斎橋ビル3F
Googleマップ
大阪メトロ御堂筋線
心斎橋駅から徒歩3分
大阪メトロ御堂筋線
四つ橋駅から徒歩3分
〒460-0003
愛知県名古屋市中区錦1-15-8
アミティエ錦第一ビル3階
Googleマップ
名古屋市営地下鉄桜通線
国際センター駅 徒歩8分
名古屋市営地下鉄東山線
伏見駅 徒歩7分
〒542-0086
大阪府大阪市中央区
西心斎橋1-9-15
大京心斎橋ビル3F
Googleマップ
大阪メトロ御堂筋線
心斎橋駅から徒歩3分
大阪メトロ四つ橋線
四つ橋駅から徒歩3分
大阪
名古屋
再生医療の可能性を、一人でも多くの方に知って頂きたいと思っています。
新しい選択肢を「知る」ために、まずはお気軽にお問い合わせください。
診療時間
9:00〜18:00
月
火
水
木
金
土
日
※木曜、日曜、祝日は休診日となります。