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膝の軟骨がすり減るとどうなる?痛みの正体と最新治療法
「先生、本当に手術しなくても大丈夫ですか?」
膝の痛みで来院される多くの患者さんから、この切実な言葉を耳にします。
膝の軟骨は、関節をスムーズに動かすクッションでありながら、加齢と共に水分量を失い、摩耗が進みます。
特に歩行時には体重の2~3倍もの負担がかかり、そのすり減りが痛みの正体となり、時には骨の変形まで引き起こします。
長年の痛みから解放されたいと願う一方、手術には抵抗があるという方も少なくないでしょう。この記事では、膝軟骨がすり減るメカニズムから痛みの原因、そして「手術しかない」と諦める前に知っておきたい最新の再生医療まで、詳しくご紹介します。
膝の軟骨がすり減る原因と症状から痛みを和らげる治療法と最新医療

私も整形外科医として働き始めた頃は、進行した変形性膝関節症に対しては手術が唯一の選択肢だと考えていました。しかし、勤務医の時に出会った一人の70代の女性患者さんが、私に再生医療の道を教えてくれました。手術は怖いと涙ながらに訴えるその方に、「手術しかありません」としか言えなかった苦い経験が、私をこの道へと導いたのです。
シンセルクリニックを開設してからは、多くの患者さんが手術をせずに痛みを改善し、再び活動的な生活を取り戻す姿を目の当たりにしています。この医師としての葛藤と成長こそが、今の私の原動力です。
膝の軟骨がすり減る主な原因とメカニズム

膝の軟骨は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ部分にあります。
関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割と、歩くときの衝撃を吸収するクッションの役割を果たしているのです。
この軟骨は、およそ70~80%が水分で構成されています[2]。残りはプロテオグリカンやコラーゲン線維といったスポンジのような構造の基質と、わずか2%の軟骨細胞でできています。
健康な膝関節では、軟骨が約5~7mmの厚みで骨の表面を覆い、氷同士を滑らせるよりも摩擦が少ないと言われるほど滑らかな動きを可能にしているのです[3]。
しかし、残念ながら、誰の軟骨も加齢とともに水分量が少しずつ減少し、しなやかさも失われていきます。さらに、軟骨細胞の新陳代謝も衰えてくるため、多かれ少なかれ軟骨の「すり減り」という経年劣化が見られます。これは、お肌のシワが増えるのと同じような自然な変化と言えるでしょう。ただし、その劣化速度には個人差があります。
特に軟骨がすり減りやすいのは、以下のような方々です。
膝をケガした経験がある方

過去に靭帯損傷や半月板損傷など、膝の安定性や衝撃吸収を担う組織にダメージを受けたことがある方は注意が必要です。
軟骨同士が直接擦れやすくなり、そうでない方に比べて軟骨の磨耗速度が速くなる傾向があります。
私自身も柔道やラグビーをしており、膝の怪我がいかにその後の運動能力や痛みに影響するかを肌で感じてきました。
肥満の方

歩くときに膝には体重の2~3倍もの負担がかかると言われています。
体重が重いほど、膝にかかる物理的な負荷は大きくなり、軟骨のすり減りを加速させる原因となります。
例えば、体重が1kg増えるだけで、歩行時の膝への負担は2~3kg増える計算です。
また、筋肉量が減り体脂肪が増える「サルコペニア肥満」の方は、重度の変形性膝関節症との関連も指摘されています[4]。
女性

変形性膝関節症の患者さんは、統計的に女性に圧倒的に多いことが分かっています。
特に閉経後の女性は、骨や軟骨、筋肉を丈夫に保つ働きがある女性ホルモン(エストロゲン)が激減するため、この影響が大きいと考えられます。
これらの要因が複合的に絡み合い、膝の軟骨のすり減りを進行させてしまうのです。
痛みや動きにくさ、変形など主な症状
軟骨がすり減ってくると、膝に不快な症状

が現れ始めます。初期の段階では我慢できる程度の違和感でも、進行するにつれて日常生活に大きな支障をきたすようになります。診察室では「前は階段の上り下りだけだったのに、最近は平地を歩くのも辛くて…」と訴える患者さんが少なくありません。
主な症状は以下の3つです。
痛みを感じる

実は、軟骨自体には神経が通っていません。そのため、軟骨がすり減ること自体は痛みを感じさせません。
では、なぜ痛いと感じるのでしょうか。
それは、すり減って剥がれ落ちた軟骨の小さな破片が、関節の内側を覆う「滑膜(かつまく)」という組織を刺激し、炎症を起こすためです。
初期の段階では、立ち上がったり、歩き始めたりといった「動き始め」に痛みを感じることが多いです。
しかし、症状が進行し、軟骨がさらに失われて骨同士が直接擦れるようになると、安静にしている時や寝ている間にもズキズキとした痛みが現れるようになります。
この夜間痛は、患者さんにとって非常に辛く、睡眠を妨げる大きな原因となるのです。
「夜中に何度も目が覚めてしまうんです」と訴える患者さんの苦悩を、私は診察を通して何度も見てきました。
膝を動かしにくくなる

軟骨のすり減りが進み、大腿骨と脛骨が直接擦れ合うようになると、膝の関節がスムーズに動かせなくなります。
これは、まるで油が切れた機械のように、ギシギシとした感覚や引っかかりを感じることがあります。
「正座ができない」「膝が最後まで伸びきらない」といった具体的な動きの制限が出てきます。
この動きにくさは、歩行だけでなく、椅子からの立ち上がりや階段の昇り降り、車の乗り降りなど、日常のあらゆる動作に影響を及ぼし、生活の質を大きく低下させてしまいます。
以前、私が担当した患者さんで「孫と公園で遊んであげられないのが一番辛い」と涙ぐんで話された方がいました。痛みが、日々の楽しみまで奪ってしまうのです。
骨が変形する

軟骨が失われ、骨同士が直接ぶつかり合う状態が続くと、骨自体にも変化が現れます。
具体的には、骨の縁に「骨棘(こっきょく)」と呼ばれるトゲのような突起ができたり、骨の中に「骨のう胞」という虫食いのような穴が開いたりします。
さらに、膝の内側や外側への負荷の偏りが進むことで、脚全体が「O脚」や「X脚」に変形していくことも珍しくありません。
このような骨の変形は、外見上もはっきりと分かるようになり、患者さんの精神的な負担にも繋がります。
レントゲンやMRIでこれらの変化を確認することで、変形性膝関節症の進行度を正確に診断することができます。
以前検査を受けられた方も、症状が進んでいないか、定期的な再検査をお勧めしています。当院ではMRIひざ即日診断を行っており、ご自身の膝の状態を正確に把握することができます。
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進行度で変わる変形性膝関節症の治療法(保存療法と手術)
変形性膝関節症の治療は、症状の進行度や患者さんのライフスタイルに合わせて、多角的に検討していきます。私が長年整形外科医として多くの膝の痛みと向き合ってきた経験から言えるのは、早期に適切な治療を開始することが、その後の生活の質を大きく左右するということです。
治療法は大きく分けて、保存療法と手術療法があります。
保存療法:進行を遅らせ、痛みを和らげる
初期の変形性膝関節症や、手術を希望しない方に対しては、まず保存療法が中心となります。
運動療法
筋力トレーニング
膝を支える「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」などを鍛え、膝への負担を軽減します。
ストレッチ
薬物療法
痛みを抑え、炎症を和らげることを目的とします。
注射療法
ヒアルロン酸注射
関節液の主要成分であるヒアルロン酸を補充し、関節の潤滑性を高め、痛みを和らげます。
一時的な効果が多く、変形が進むと効果が出にくくなります。
人工的な油を差すようなイメージで、一時的に症状を和らげますが、根本的な治療にはなりません。
ステロイド注射
炎症を強力に抑え、痛みを軽減します。
しかし、繰り返しの使用は骨や軟骨に悪影響を与える可能性があるため、慎重な判断が必要です。
手術療法:痛みの根本にアプローチ
保存療法で十分な効果が得られず、日常生活に大きな支障をきたしている場合には、手術療法が検討されます。
手術の種類 | 適応 | 目的 | メリット | デメリット | 入院期間 |
|---|---|---|---|---|---|
関節鏡視下手術 | 初期(痛みや変形が軽い方) | 痛みの緩和 | 傷が小さく、体への負担が少ない | 根本的な解決にはならず、効果が一時的 | 1週間程度 |
高位脛骨骨切り術 | 初期〜中期(40代以降) | 関節の変形を整える | 自分の関節が温存され、活動的な生活が可能 | 長期的なリハビリが必要、1年後にプレート除去手術 | 4週間程度 |
人工関節置換術 | 末期(70代以降) | 関節の変形を整える | 痛みが大幅に改善され、安定して歩ける | 体への負担が大きい、合併症のリスク、行動制限あり、15~20年ごとの交換が必要 | 2週間〜2ヶ月程度 |
手術は痛みを劇的に改善する可能性がありますが、体に大きな負担がかかり、合併症のリスクや長期のリハビリが必要になることもあります。だからこそ、多くの患者さんが「手術は避けたい」と願う気持ちは、整形外科医としてよく理解できます。
軟骨再生を促す再生医療とは?
治療の選択肢のひとつに、「再生医療」という最新の治療法もあります。
今までの治療では、薬で痛みが抑えられなくなった場合には手術をするしかないと言われていました。
そのため、日常生活においても膝に負担がかからないように気をつけ、痛みが出たら痛み止めを服用し、痛みのコントロールが重要でした。しかし、最近では再生医療が注目されています。
実際に再生医療を受けた患者様の【体験ドキュメンタリー動画】をご紹介します。
当院の再生医療を受けた方のインタビュー動画はこちらをご覧ください↓↓
手術との違い
再生医療では、修復が不可能と言われている軟骨を新たに再生させていく画期的な治療法です。この再生医療では手術を行いませんので、身体への侵襲が少ない治療となります。人工関節の手術を実施した場合には、侵襲するため以前のお体の状態に戻るのに長い期間がかかりますが、 再生医療は侵襲が少ない治療法のため、 すぐに体の状態を回復させることができます。



Q&A
Q1: 膝の軟骨は、食べ物やサプリメントで増やすことができますか?
A1: 残念ながら、食べ物やサプリメントで一度すり減ってしまった膝の軟骨を増やすことは、現在の医学では難しいと考えられています。軟骨の構成成分であるコンドロイチンやグルコサミンを含むサプリメントもありますが、痛みの改善や軟骨再生に明確な医学的効果が証明されているわけではありません[8]。バランスの取れた食生活は大切ですが、直接的な軟骨再生を期待するのは現実的ではありません。
Q2: 膝の軟骨がすり減っていると言われたら、必ず手術が必要になりますか?
A2: 必ずしも手術が必要になるわけではありません。変形性膝関節症は進行度によって治療法が異なります。初期の段階であれば、運動療法や薬物療法、ヒアルロン酸注射などの保存療法で痛みをコントロールし、進行を遅らせることが可能です。また、近年ではPRP療法や培養幹細胞治療といった再生医療も、手術以外の新たな選択肢として注目されています。患者さんの年齢、活動レベル、症状の程度、ご希望などを総合的に判断し、最適な治療法を一緒に検討していきます。
Q3: 再生医療は、健康保険が適用されますか?
A3: 現在、PRP療法や培養幹細胞治療といった再生医療は、基本的に健康保険の適用外であり、自由診療となります。そのため、治療費用は全額自己負担となります。費用については、治療内容や回数によって異なりますので、詳しくはお問い合わせいただければ、担当スタッフが丁寧にご説明させていただきます。当院では、患者さんが安心して治療を受けられるよう、費用についても透明性を持ってお伝えすることを心がけております。
参考文献
Yoshimura N, et al. Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. J Bone Miner Metab. 2009; 27:620-628.
立花 陽明. 変形性膝関節症の診断と治療. 理学療法科学. 2005; 20(3):235-240.
村上 輝夫. 関節軟骨組織構造・軟骨細胞と関節のトライボロジー特性. 生体医工学. 2006; 44(4).
原口 和史ほか. 変形性膝関節症とサルコペニア肥満. 整形外科と災害外科. 2018; 67(2):350-353.
Pers YM, et al. Adipose Mesenchymal Stromal Cell-Based Therapy for Severe Osteoarthritis of the Knee: A Phase I Dose-Escalation Trial. Stem Cells Transl Med. 2016; 5:847.
Kang-Il Kim, et al. Intra-articular Injection of Autologous Adipose-Derived Stem Cells or Stromal Vascular Fractions: Are They Effective for Patients With Knee Osteoarthritis? A Systematic Review With Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Am J Sports Med. 2022.
Kang-Il Kim et al. Intra-articular Injection of Autologous Adipose-Derived Stem Cells or Stromal Vascular Fractions: Are They Effective for Patients With Knee Osteoarthritis? A Systematic Review With Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Am J Sports Med. 2023; 51(3):837-848.
Clegg DO, et al. Glucosamine, Chondroitin Sulfate, and the Two in Combination for Painful Knee Osteoarthritis. N Engl J Med. 2006; 354:795-808.
院長監修記事

武内 晋司郎
(たけうち しんじろう)
シンセルクリニック総院長
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
医師プロフィールはこちら
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
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