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【整形外科医が解説】腰椎固定術のボルトは抜く必要がある?抜釘の判断基準いついて

2026.05.11

「腰椎固定術を受けたが、背中のボルトが気になって痛い」「ボルトを抜けば楽になりますか?」「手術をしたのに痛みが残っている」

——腰椎固定術を受けた患者さんから整形外科外来で最も多く聞く悩みです。

腰椎固定術のボルト(スクリュー・インプラント)を「抜くべきか・抜かなくていいか」の判断は、実は非常に難しい問題です。整形外科医として、抜釘の判断基準・リスク・術後に痛みが残る本当の理由・そして手術以外の選択肢を正直に解説します。

腰椎固定術とボルトの役割:なぜ金属を入れるのか

腰椎固定術とボルトの役割:なぜ金属を入れるのか

腰椎固定術(脊椎固定術)とは、腰椎すべり症・脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニアなどで不安定になった背骨を、チタン製のスクリュー(ボルト)とロッド(棒)で固定し、骨を癒合(くっつく)させる手術です。

固定術で使われるボルト・スクリューはチタン合金製で、体内への親和性が高く腐食しにくい素材です。骨が完全に癒合するまでの間、背骨を「仮の骨格」として支え続ける役割を担います。

固定術が必要になる主な疾患

  • 腰椎すべり症(背骨がずれている)

  • 腰部脊柱管狭窄症(除圧術と同時に行う場合)

  • 腰椎椎間板ヘルニア(再発・重症例)

  • 腰椎圧迫骨折(偽関節化した場合)

  • 脊椎腫瘍・感染性脊椎炎の術後安定化

脊柱管狭窄症との関係については脊柱管狭窄症の手術で後悔する前に知るべきこともご覧ください。

腰椎固定術のボルトは「抜く」べきか:整形外科医の判断基準

結論から言えば、日本では腰椎固定術のボルトは原則として抜かない(体内に置いたまま)のが一般的です。ただし例外的に抜釘(ばってい:ボルトを抜く手術)を行う場合があります。

通常「抜かない」理由

  • 骨が癒合(くっつく)した後は、ボルトはすでに役目を終えているが害もない

  • 抜釘手術そのものが「再手術」であり、出血・感染・神経損傷のリスクがある

  • 癒合した骨にしっかり食い込んでいるボルトを抜くには力が必要で、周囲の組織へのダメージが生じる

  • 「抜いても必ずよくなるわけではない」

例外的に「抜釘を検討する」ケース

整形外科医として抜釘を検討するのは以下のような状況です。

状況

理由

医師の判断

ボルトが皮膚に近く痛い・当たる

痩せ型の方でボルトが皮下に浮き上がり、皮膚を刺激する

QOLの低下が著明なら抜釘を検討

インプラントの感染(術後感染)

ボルト周囲に細菌感染が起きた場合

感染巣の除去のために抜釘が必要

ボルトの緩み・折損(インプラント破損)

骨癒合前にボルトが緩んだり折れた場合

再固定のために抜釘+再挿入が必要

骨癒合が得られず偽関節になった

予定された癒合が起きず不安定性が続く

再手術(抜釘+再固定)を検討

若年者の圧迫骨折後固定

若年者の場合は長期間の体内留置を避けるため抜釘を行う施設もある

施設の方針による

整形外科医として正直に伝えることがあります。「ボルトを抜いたら痛みがなくなる」と期待して来院される方がいますが、ボルトが痛みの原因のひとつである可能性はあっても、あくまで可能性のひとつです。抜釘しても術後の痛みが改善しないケースも少なくありません。

抜釘手術(ボルトを抜く手術)の実際

手術の流れ

抜釘手術は全身麻酔または腰椎麻酔で行われます。最初の固定術の傷跡に沿って皮膚を切開し、ボルト・ロッドを取り除きます。

  • 手術時間:1〜3時間(固定範囲・癒合の程度による)

  • 入院期間:数日〜1週間程度

  • 出血量:初回手術より少ないことが多いが、癒合した骨からボルトを外す操作は難渋することがある

抜釘のリスク

  • 感染:再手術であるため、感染リスクは初回手術と同等以上

  • 神経損傷:周囲の神経や血管を損傷するリスク

  • 骨折:癒合した骨からボルトを外す際に骨が割れることがある

  • 「抜いたのに改善しない」:ボルト以外の原因(神経の変性・瘢痕組織・中枢感作)が残存する場合、抜釘後も痛みが続く

腰椎固定術後に痛みが残る理由:ボルトだけが原因ではない

腰椎固定術後に痛みが残る理由:ボルトだけが原因ではない

「手術をしたのに痛みが取れない」——整形外科外来で最も多い相談のひとつです。整形外科医として、術後に痛みが残る複数の原因をお伝えします。

① 神経障害性疼痛(最も多い)

固定術を受けるに至った段階では、すでに神経が長期間圧迫を受けて変性していることがあります。手術で物理的な圧迫を取り除いても、変性した神経自体の「痛みを発生させる性質」は残ることがあります。これを神経障害性疼痛と呼び、坐骨神経痛様の電気が走る痛み・灼熱感・しびれとして現れます。

タリージェ・リリカなどの神経障害性疼痛治療薬についてはタリージェとリリカの違いと使い分けをご覧ください。坐骨神経痛の改善については坐骨神経痛の原因・やってはいけないこと8選もあわせてご参照ください。

② 中枢感作(慢性疼痛化)

痛みが長期間続くと脳・脊髄の痛み処理システム自体が変化し、実際の組織の問題が解決した後も「痛みを感じやすい状態」が続くことがあります(中枢感作)。この状態ではNSAIDsが効かなくなることが多く、セロトニン系・ノルアドレナリン系に作用する薬やリハビリが必要になります。NSAIDsが効かない痛みについては痛み止め(NSAIDs)が効きにくい痛みの種類をご覧ください。

③ 隣接椎間障害

固定した椎体の隣の椎間板に余分な負荷がかかり、新たな椎間板変性・狭窄症が発生することがあります(隣接椎間障害・ASD)。固定術後数年〜10年以上経過してから発症することがあり、「また背中が痛くなってきた」という訴えの原因になります。

④ インプラントの問題

ボルトが皮膚に近い部分に突出して違和感・痛みを引き起こす場合(特に痩せ型の方)や、ボルトが緩んだ・折れた(インプラント破損)場合は、インプラント自体が痛みの一因になっています。ただしこれは術後疼痛の原因のひとつに過ぎず、画像検査・神経学的評価で総合的に判断する必要があります。

⑤ 心理社会的な原因

慢性疼痛には不安・抑うつ・睡眠障害・社会的孤立などの心理社会的な原因が大きく関与します。手術が成功しても心理的な要因で痛みが慢性化することがあります。セロトニンと慢性疼痛の関係についてはセロトニンとは?慢性疼痛との深い関係・増やす方法もご覧ください。

腰椎固定術後の痛みに再生医療という選択肢

「腰椎固定術後に痛みが残っている」「ボルトを抜くべきか迷っている」という方に対して、シンセルクリニックでは幹細胞点滴による慢性疼痛の緩和治療を行っています。

なぜ固定術後の残存疼痛に再生医療が有効なのか

固定術後に残る慢性疼痛の多くは、神経の変性・慢性炎症・中枢感作が複合的に関与しています。幹細胞(間葉系幹細胞)には以下の作用があります。

  • 抗炎症作用:術後の慢性炎症を抑制し、神経周囲の炎症環境を改善する

  • 神経再生作用:変性した神経の修復させる

  • 免疫調整作用:過剰な免疫反応を抑制して痛みの悪循環を断つ

整形外科医として、固定術後の慢性的な疼痛で迷っている方、ボルトを抜くかどうか迷っている方には、画像的評価・神経学的評価をしっかり行ったうえで再生医療をお勧めすることが多いです。抜釘という再手術のリスクを取る前に、まず再生医療での緩和を試みることは合理的な選択肢です。

ただし「再生医療をすれば必ずよくなるわけではありません」。ボルトが原因のひとつである可能性はあっても、術後疼痛の原因は複合的です。評価なしに安易に「再生医療で治る」と断言することはできません。

【症例:70代男性・脊柱管狭窄症・腰椎すべり症】 「5分歩くと腰が痛くて座り込んでしまい、仕事やテニスも思い切りできない状態でした。以前、膝の治療で効果を実感していたため、腰も再生医療を選んだところ、痛みやしびれが軽減し、大好きなテニスを再開できました。やりたいことが続けられるようになり、本当に嬉しいです。」

再生医療の症例実績を見る

整形外科医の正直な見解:固定術は本当に必要だったのか

整形外科医の正直な見解:固定術は本当に必要だったのか

整形外科医の中には「固定術の適応はほとんどない・除圧術だけで十分」という意見もあります。整形外科医として中立的にお伝えします。

腰椎固定術が明確に必要な場合(すべり症・不安定性が強い・除圧で不安定になる可能性がある)と、除圧術のみで十分な場合があります。固定術は除圧術より侵襲が大きく、隣接椎間障害・可動域制限・インプラント関連問題というデメリットがあることは事実です。

重要なのは「適応があるかどうかを画像・症状で正確に評価して判断する」ことです。シンセルクリニックでは適応があると判断した場合にのみ手術を勧め、適応がない場合は手術を進めません。

手術を検討する前に知るべきことについては脊柱管狭窄症の手術で後悔する前に知るべきことをご覧ください。「様子を見ましょう」と言われ続けている方の判断基準については「様子を見ましょう」と言われ続けている方へもあわせてご確認ください。

腰椎固定術後のリハビリと日常生活:ボルトがある状態での注意点

腰椎固定術後のリハビリと日常生活:ボルトがある状態での注意点

固定術後、ボルトを体内に留置したまま生活する上での注意点を整理します。

術後3ヶ月以内(骨癒合中)の注意点

骨癒合の確認にはX線撮影が用いられます。術後経過によって3ヶ月・6ヶ月・1年と定期的に撮影し、固定部の骨が正しくくっついているか・ボルトの緩みがないかを評価します。「腰の痛みが続いているが様子を見ましょうと言われた」という状況でも、定期的な画像評価は受けることをお勧めします。骨癒合が不完全な場合(偽関節)や隣接椎間に問題が生じている場合は早期発見・早期対処が重要です。

  • 前屈・腰のひねり動作は避ける:骨癒合中にこれらの動作を行うとボルトに過剰な負荷がかかり、ゆるみ・折損のリスクがある

  • コルセットの着用:術後3ヶ月程度はコルセットで固定部を守る

  • 重い物を持たない:腰への軸方向の荷重を最小限にする

骨癒合確認後(通常術後6ヶ月〜1年以降)

  • 段階的にウォーキングなどの有酸素運動から開始する

  • 体幹筋(腹横筋・多裂筋)の強化で固定部周辺の負担を軽減する

  • 隣接椎間への負荷を減らすために、日常の動作パターン(しゃがみ方・物の持ち方)を見直す

永続的に注意すべきこと

  • 固定部の隣接椎間に新たな障害が起きる可能性があるため、定期的な画像フォローアップが重要

  • 骨粗鬆症がある場合は骨粗鬆症治療薬による治療を並行して行う(ボルトの周囲骨の強度を保つ)

  • 腰の違和感・下肢症状の変化があれば早めに受診する

「ボルトを抜くか迷っている」方へ:整形外科医からのメッセージ

「体内に金属が入っているのが気持ち悪い」「何となく不安」という心理的な理由で抜釘を希望する方がいます。その気持ちは理解できますが、整形外科医として伝えたいことがあります。

抜釘は再手術です。皮膚を切開し、全身麻酔または腰椎麻酔をかけて行います。「ボルトが入っていることによる違和感・不安」というQOLの低下と「再手術のリスク」を天秤にかけて判断する必要があります。ボルトが皮膚に当たって実際に痛い・日常生活に大きな支障がある、という明確な身体的理由がある場合と、心理的な不安が主体の場合とでは、判断が変わります。

まず担当医師に「ボルトを抜くことを検討したい」と正直に相談してください。その上で、画像・神経学的評価を行い、メリットとリスクを具体的に説明してもらうことが重要です。セカンドオピニオンを求めることも有益です。

シンセルクリニックでは術後の残存疼痛の評価・再生医療による緩和治療の相談を行っています。「抜くべきか迷っている」「術後の痛みを何とかしたい」という方のご相談をお待ちしています。

よくある質問(FAQ)

固定術後何年でボルトを抜くことができますか?

一般的に骨癒合が確認されるのは術後6ヶ月〜1年程度です。骨癒合を確認した後であればボルトを抜く技術的条件は整います。ただし日本では通常は抜かないケースがほとんどです。痩せ型でボルトが当たって痛い・感染が起きた・ボルトが緩んだという状況がなければ、抜釘は基本的に行われません。

MRIやCTなどの検査でボルトが邪魔になることはありますか?

チタン製のボルトはMRIに対して安全(非磁性体)ですが、金属アーチファクトによって画像が歪んで見えることがあります。CTでも同様のアーチファクトが生じます。術後のフォローアップで画像が見づらい場合があることは知っておいてください。ただしこれは診断に致命的な問題を起こすことはほとんどありません。

ボルトが体内にあるままでスポーツ・運動はできますか?

骨癒合が確認されれば多くの日常運動・スポーツは可能です。ただし固定術を受けた部位の可動域は制限されるため、激しい前屈・ひねり動作は避けることをお勧めします。主治医の指示に従って段階的に活動範囲を広げてください。

「ボルトのせいで腰が重い」と感じますが、これはボルトが原因ですか?

ボルトが体内にあることによる心理的な違和感・不安から「重い感じ」を感じる方がいます。また術後の筋力低下・瘢痕組織による拘縮・隣接椎間への負荷増大が原因のこともあります。「ボルトが原因のひとつの可能性はあるが、あくまで一つの可能性」として捉えてください。画像・神経学的評価で総合的に判断する必要があります。

腰椎固定術後の残存疼痛で特に辛いのは「手術をしたのに痛みが取れない」「なぜ痛みが続くのかわからない」という状況です。このような場合、痛みの原因を丁寧に評価することが最初のステップになります。メコバラミンによる神経修復についてはメコバラミン(メチコバール)とは?効果・副作用・効果が出るまでの期間を徹底解説もご覧ください。またノイロトロピンによる下行性疼痛抑制系へのアプローチについてはノイロトロピンとは?末梢神経痛への効果・副作用・使い方もあわせてご参照ください。痛みが長期化することで生活への影響が大きくなるため、「手術したから後は様子を見るしかない」と思わず、残存症状があれば積極的に相談することをお勧めします。

まとめ

  • 腰椎固定術のボルトは原則として抜かない(体内に置いたまま)が一般的

  • 抜釘を検討するのは「痩せ型でボルトが皮膚に当たって痛い」「感染」「インプラント破損」「骨癒合不全」など例外的な状況

  • 「ボルトを抜いても必ずよくなるわけではない」。抜釘は再手術であり、感染・神経損傷のリスクがある

  • 術後の痛みが残る主な原因は神経障害性疼痛・中枢感作・隣接椎間障害・インプラント問題・心理社会的因子の複合

  • シンセルでは固定術後の慢性疼痛に幹細胞点滴による緩和治療を実施。抜釘を迷っている方にも画像・神経学的評価をしたうえで再生医療をお勧めすることがある

  • 固定術の適応は画像・症状で正確に評価して判断すべき。適応がなければ手術を進めない

「腰椎固定術後に痛みが残っている」「ボルトを抜くべきか迷っている」「手術なしで何とかならないか相談したい」という方は、シンセルクリニックにお気軽にご相談ください。

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腰椎固定術後の残存症状に対する薬物療法では、メコバラミン・ノイロトロピンなどの神経修復薬が処方されることがあります。これらを使いながら並行して幹細胞治療などの再生医療を検討することが、術後の慢性疼痛に対する包括的なアプローチです。

参考文献

  1. 日本整形外科学会「腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2021年版」https://www.joa.or.jp/

  2. Lurie J, Tomkins-Lane C. "Management of lumbar spinal stenosis." BMJ. 2016;352:h6234.

  3. Ghiselli G, et al. "Adjacent segment degeneration in the lumbar spine." Journal of Bone and Joint Surgery. 2004;86(7):1497-1503.

  4. Yoshihara H. "Removal of spinal implants after fusion surgery." Global Spine Journal. 2015;5(2):160-164.

  5. Woolf CJ. "Central sensitization: Implications for the diagnosis and treatment of pain." Pain. 2011;152(3 Suppl):S2-15.

院長監修記事

シンセルクリニック総院長 武内の顔写真

武内 晋司郎

(たけうち しんじろう)

シンセルクリニック総院長

三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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