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【医師監修】股関節の痛みを放置(ほっとく)とどうなる?進行リスクと見逃されやすい原因疾患

2026.03.04

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「歩き始めに股関節がズキッとするけれど、少し休めば治るから大丈夫」

「階段の上り下りや靴下を履くのが大変になってきたけれど、歳のせいだから仕方ない」

このように股関節の痛みを「放置」していませんか? 整形外科医として多くの患者様を診てきましたが、股関節の痛みは「放置して自然に治る」ことはほとんどありません。むしろ、初期のわずかな違和感を見逃した結果、気づいた時には軟骨が完全に消失し、「人工関節手術しかない」と宣告されるケースが非常に多いのが実情です。

【このコラムでわかること】

  • 股関節痛を放置した先に待っている「3つの末期症状」

  • 日本人に多い痛みの原因(変形性股関節症・大腿骨頭壊死)

  • レントゲンでは「異常なし」と見逃されやすい隠れた原因疾患(FAI・関節唇損傷)

  • いつ病院に行くべきか?手遅れを防ぐ「危険なサイン」

  • 手術を回避するための最新の選択肢

本記事では、これまで数多くの関節疾患を診てきた専門医が、股関節痛の正体と放置するリスクを徹底解説します。一生自分の足で歩き続けるために、今のあなたの体が発しているサインを見逃さないでください。

1. 股関節の痛みを放置(ほっとく)とどうなる?3つの末期症状

股関節は、歩行時や立ち上がる際に、体重の数倍もの負荷を支える「人体のかなめ」となる関節です。痛みを我慢して放置すると、以下のような段階を経て急速に悪化していきます。

① 軟骨の完全な消失と「激痛」

最初は「動き始めだけ」だった痛みが、放置することで軟骨のすり減りが進行し、「歩いている最中ずっと」や「じっとしていても(安静時)」常に激しく痛むようになります。軟骨がなくなると骨同士が直接ぶつかり合い、骨がトゲのように変形する「骨棘(こつきょく)」が形成され、一歩踏み出すことすら困難になります。

② 関節が固まる「可動域制限」(靴下が履けない)

炎症が長引くと、関節を包む袋(関節包)が分厚く硬くなり、股関節が動かなくなってしまいます。これを医学用語で「拘縮(こうしゅく)」と呼びます。 足が開かなくなるため、あぐらがかけない、足の爪が切れない、靴下やズボンを立って履けないといった、日常生活の基本的な動作が一人でできなくなります。

③ 反対側の足や腰への連鎖(全身のバランス崩壊)

痛む側の足をかばって歩く(跛行:はこう)ため、健康だったはずの反対側の股関節や、膝、腰にまで過剰な負担がかかります。「片側だけの股関節痛」を放置した結果、腰部脊柱管狭窄症や変形性膝関節症などを併発し、寝たきりに近い状態へと繋がる恐れがあります。

【関連記事】 股関節の動き(屈曲・伸展・内旋・外旋)と硬くなる理由はこちら

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2. 股関節が痛くなる代表的な「2つの病気」

股関節の痛みを引き起こす代表的な疾患を知っておくことが、早期発見の第一歩です。

① 変形性股関節症

股関節痛の原因として圧倒的に多いのがこの病気です。長年の負荷によって関節の軟骨がすり減り、炎症や変形を起こします。 特に日本人女性に多く見られるのが「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」が原因となるケースです。これは生まれつき骨盤側の「受け皿」が浅い状態で、若い頃から関節の特定の狭い部分に負荷が集中しやすいため、40代〜50代という比較的若い年齢から変形性股関節症へと進行してしまう方が少なくありません。

【関連記事】
変形性股関節症とは?症状から治し方まで整形外科医が徹底解説

② 特発性大腿骨頭壊死症

太ももの骨の先端にあるボール状の部分(大腿骨頭)への血流が悪くなり、骨の組織が死んでしまう(壊死する)難病です。ステロイドの大量投与や、過度なアルコール摂取が関係しているとされていますが、原因不明で突然発症することもあります。壊死した骨が体重に耐えきれずに「圧潰(あっかい:潰れること)」した瞬間に、強烈な痛みに襲われます。

【関連記事】
【医師解説】股関節の痛みは特発性大腿骨頭壊死症かも?原因・初期症状と治療方法とは


3. レントゲンで「異常なし」と言われたら?見逃されやすい隠れた原因

「病院でレントゲンを撮ったけれど、骨には異常がないと言われた。でも痛い…」 当院の診察室でも、こうした不安を抱えて来院される患者様が非常に多いです。実は、初期の股関節痛には「レントゲンには写らない病態」が隠れていることがよくあります。

関節唇損傷(かんせつしんそんしょう)

股関節の受け皿のフチには、「関節唇」というタコの吸盤のような軟骨組織がついており、関節を安定させる役割を担っています。この関節唇が、スポーツなどの激しい動きや加齢によって裂けたり傷ついたりするのが「関節唇損傷」です。 関節唇には知覚神経が豊富に通っているため、損傷すると股関節を深く曲げた時に鋭い痛みや「コキッ」という引っかかり感が生じます。

FAI(股関節インピンジメント)

FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)とは、股関節の骨の形がわずかに「出っ張っている」ために、股関節を曲げたりひねったりする際に骨同士が異常な衝突(インピンジメント)を繰り返す状態です。 この衝突が繰り返されることで、先述の「関節唇」がボロボロに傷つき、最終的に変形性股関節症へと進行する引き金になります。FAIは近年になって概念が広まったため、一般の整形外科のレントゲン検査だけでは見逃されてしまうケースが少なくありません。

👨‍⚕️【武内院長の臨床メモ:アスリートの痛みと見逃されるサイン】 私自身、学生時代から柔道やラグビーといったコンタクトスポーツに打ち込み、関節の怪我に悩まされてきました。股関節は人体で最も力強い動きを生み出す反面、その構造は非常に繊細です。 スポーツ選手に限らず、日常生活で股関節に「引っかかり」や「特定の角度での鋭い痛み」を感じる場合、骨の変形が始まる前の「関節唇損傷」や「FAI」のサインである可能性が高いです。この段階でMRI等の精密検査を行い、正しい対処をすることが、将来の手術を防ぐ最大の分岐点になります。「レントゲンで異常がない=健康」ではないことを、ぜひ知っておいてください。


4. 手遅れになる前に!病院を受診すべき「危険なサイン」

「いつか治るだろう」と痛みを放置して、手遅れ(人工関節手術しかない状態)になるのを防ぐため、以下の症状が一つでも当てはまる場合は、早急に股関節に詳しい整形外科を受診してください。

  • 痛みが2週間以上続いており、よくなる気配がない

  • 歩き始めだけでなく、歩行中もずっと痛い

  • 足の爪が切れない、靴下を履く姿勢が辛くなってきた

  • 痛みをかばって歩くため、左右の足の長さが違うように感じる

  • 夜、布団で寝ている時や、じっとしている時にもズキズキ痛む

これらのサインが出ている場合、関節内での破壊が確実に進行しています。自己判断での無理なストレッチやマッサージは症状を悪化させるため絶対に避けてください。

【関連記事】 股関節の痛みを和らげる「杖」の正しい選び方と使い方はこちら


5. 薬や手術に頼らない「再生医療」という新しい選択肢

病院で「変形性股関節症」と診断された場合、通常は痛み止めやリハビリなどの保存療法からスタートし、痛みが限界に達した末期には「人工関節置換術(骨を切って金属に入れ替える大手術)」が行われます。

「一生痛み止めを飲み続けるのは嫌だ」 「でも、大がかりな手術で体にメスを入れるのはどうしても避けたい」

そんなお悩みを持つ方に、近年注目されているのが「再生医療」という新しい治療法です。 患者様ご自身の血液や脂肪から抽出した細胞成分を利用し、傷ついた関節組織の修復を促す治療です。入院やメスを入れる手術が不要で、関節内への注射で完了するため、お体への負担(侵襲)が非常に少ないというメリットがあります。

まとめ:股関節の痛みは「早期発見」が未来を救う

股関節の痛みは、決して「歳のせい」だけで片付けて良いものではありません。 「歩き始めが辛い」「違和感がある」といった初期のサインを放置すると、軟骨がすり減り、最悪の場合は歩行困難となって人工関節手術を余儀なくされます。

また、レントゲンだけでは見つからないFAIや関節唇損傷といった原因が隠れていることも多く、専門医による正確な診断が不可欠です。痛みを我慢し続けることは、あなたから「趣味」や「旅行」、「お孫さんと遊ぶ時間」といった、人生の楽しみを奪ってしまいます。

もし今、股関節の痛みや違和感でお悩みなら、一人で抱え込まず、症状が進行してしまう前に一度専門医にご相談ください。あなたの「思うままに動ける人生」を取り戻すための解決の糸口が、きっと見つかるはずです。

記事監修医師

シンセルクリニック 院長 武内晋司郎

参考文献

  1. Bravo D, Aliste J, Layera S, Fernández D, Erpel H, Aguilera G, Arancibia H, Barrientos C, Wulf R, León S, Brañes J, Finlayson RJ, Tran Q. "Randomized clinical trial comparing pericapsular nerve group (PENG) block and periarticular local anesthetic infiltration for total hip arthroplasty." Regional anesthesia and pain medicine 48, no. 10 (2023): 489-494.

  2. Rosa Mohana-Borges ÁV, Cheng KY, Chung CB. "MR Imaging Diagnosis of Greater Trochanteric Syndrome." Magnetic resonance imaging clinics of North America 33, no. 1 (2025): 83-94.

  3. Macheras GA, Tzefronis D, Argyrou C, Nikolakopoulou E, Gálvez Miravete A, Karachalios TS. "Pain management after total hip arthroplasty: comparative study of analgesic efficacy and tolerability between oral tramadol/dexketoprofen and injectable paracetamol + tramadol." Hip international: the journal of clinical and experimental research on hip pathology and therapy 34, no. 3 (2024): 304-310.

  4. Zhang L, Wang XD, Qiu Y, Ding YM, Li XY, Ding LJ, Zhang ZF, Wang CX. "Ultrasound-guided fascia iliaca compartment block for pain control in total hip arthroplasty: A systematic review and meta-analysis." Medicine 102, no. 47 (2023): e36145.

  5. Abrishami R, Aghili SH, Afshar C, Farhang Ranjbar M, Nasrollahizadeh A, Poursalehian M. "Long-term outcomes of converting fused hips to total hip arthroplasty are satisfactory: a systematic review and meta-analysis." Annals of medicine and surgery (2012) 86, no. 6 (2024): 3391-3399.

院長監修記事

シンセルクリニック総院長 武内の顔写真

武内 晋司郎

(たけうち しんじろう)

シンセルクリニック総院長

三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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