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【医師解説】股関節の動き(屈曲・伸展・内旋・外旋)と痛みの原因。硬くなる理由と改善法

2026.03.17

「最近、足の爪を切るのが辛い」

「あぐらをかこうとすると、股関節の奥が痛い」

診察室でこのようなお悩みを伺うと、「年のせいだから体が硬くなるのは仕方ないですよね…」と諦めている方が非常に多いです。しかし、股関節の動きが悪くなるのには必ず原因があり、放置すると歩行そのものが困難になる恐れがあります。

こんにちは。シンセルクリニック総院長の武内晋司郎です。

股関節は、私たちの体を支え、歩く・座る・立つといったすべての基本動作をコントロールする、人体で最も大きく重要な関節です。

この記事では、現役整形外科医の視点から、股関節が硬いかどうかのセルフチェック、基本的な4つの動きのメカニズム、そして「手術しかない」と言われた状態から動きを取り戻すための「再生医療」という選択肢について、詳しく解説します。

1. 【まずはセルフチェック】あなたの股関節、どれくらい硬いですか?

「自分の股関節が硬いのかどうか分からない」という方のために、ご自宅で仰向けに寝たままできる簡単なテストをご紹介します。痛みのない範囲で試してみてください。

トーマステスト(屈曲と伸展のチェック)

仰向けに寝て、片方の膝を両手で抱え込み、胸に近づけます。 この時、「伸ばしている方の足の裏(太ももの裏や膝の裏)」が床から浮き上がってしまいませんか? もし浮き上がってしまう場合、股関節の前側の筋肉(腸腰筋)が硬く縮こまっており、「股関節がまっすぐ伸びない(伸展制限)」状態に陥っています。

パトリックテスト(外旋のチェック)

仰向けに寝て、片方の足首を、もう片方の膝の上に乗せます(数字の「4」のような形を作ります)。 その状態から、曲げている方の膝を外側に倒して床に近づけます。 この時、膝が床につかず、空中に大きく浮いたままになりませんか? あるいは、倒そうとすると股関節の奥や付け根に痛みが出ませんか? この場合、お尻の奥の筋肉が硬くなっていたり、関節自体に変形が起きていたりする可能性が高いです。

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2. 股関節の4つの基本動作とは?制限されるとどうなる?

股関節は「球関節(ボールと受け皿の関節)」であるため、前後・左右・ねじりと、非常に複雑な動きが可能です。ここでは基本的な4つの動きと、それが制限された時の日常生活への影響を解説します。

屈曲(くっきょく):股関節を「前へ曲げる」動き

太ももを胸に近づけるように、前方へ折りたたむ動きです。 日常生活での動作 椅子に座る、階段を上る、靴下を履く、足の爪を切る、和式トイレでしゃがむ。 制限されるとどうなる? 「靴下を履くのに一苦労する」「床に落ちたものを拾えない」など、日常生活に直接的な支障が出ます。

伸展(しんてん):股関節を「後ろへ伸ばす」動き

立っている状態から脚を後ろに引いたり、歩くときに体を前へ進めるために股関節をまっすぐ伸ばしたりする動きです。主にお尻の筋肉や太もも裏の筋肉が使われます。 日常生活での動作 歩く、走る、立ち上がる。 制限されるとどうなる? 股関節が十分に伸びないと、無意識に腰を反らせて歩くようになります。その結果、歩幅が狭くなり「ペンギン歩き」になったり、慢性的な腰痛を引き起こしたりします。

内旋(ないせん):脚を「内側にひねる」動き

両足を揃えて立った状態で、つま先を内側(内股)に向けるような動きです。 役割 歩行時、片足に体重が乗った瞬間に骨盤を安定させ、スムーズな体重移動を助けます。 制限されるとどうなる? 歩くときに体が左右に大きく揺れたり、「ふらつく」ような感覚が出たりします。

外旋(がいせん):脚を「外側にひねる」動き

太もも全体を外側に向かってねじる、いわゆる「がに股」を作る動きです。 日常生活での動作 あぐらをかく、方向転換をする、自転車をまたぐ。 制限されるとどうなる? 「あぐらがかけない」「車や自転車に乗り降りする時に足が上がらない」といった症状が現れます。

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3. なぜ股関節の動きは悪くなるのか?(痛みの原因)

「昔はもっと体が柔らかかったのに、なぜこんなに硬くなってしまったのか?」 股関節の動きを制限する原因は一つではありません。

原因1:変形性股関節症(軟骨のすり減り)

私が診察する中で、圧倒的に多い原因がこれです。 股関節のクッションである軟骨が加齢や負担ですり減り、骨同士が直接ぶつかることで炎症と痛みが起きます。痛みを避けるために無意識に関節を動かさなくなることで、関節を包む袋(関節包)や周囲の筋肉がカチカチに硬くなり、さらに動きが悪くなるという悪循環に陥ります。

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原因2:筋肉や靭帯の硬化(座りっぱなしの弊害)

デスクワークなどで「座りっぱなし」の時間が長いと、股関節が「屈曲(曲がった状態)」のまま何時間も固定されます。すると、股関節の前側の筋肉が縮こまったまま固まってしまい、いざ立ち上がろうとした時に「伸びない(伸展できない)」状態になってしまうのです。

原因3:過去のケガや「臼蓋形成不全」の影響

生まれつき股関節の受け皿が浅い「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」がある方は、関節が不安定なため、それを筋肉の力で無理やり支えようとします。その結果、筋肉が過度に緊張し、若いうちから股関節の動きに制限が出やすくなります。

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4. 【院長の臨床メモ】股関節の硬さが引き起こす「全身のドミノ倒し」

「股関節が硬いだけなら、痛くない範囲で生活すればいい」と放置していると、大変なことになります。

股関節は、体の中で最も大きな可動域を持つ関節です。ここの動き(屈曲や伸展)が制限されると、体は「本来股関節がやるべき仕事」を、無理やり「腰」や「膝」に押し付けます。

股関節が伸びない → 腰を過剰に反らせる → 慢性的な腰痛や脊柱管狭窄症へ

股関節がねじれない → 膝を不自然にねじる → 変形性膝関節症へ

このように、股関節の不調はドミノ倒しのように全身の関節を破壊していきます。「最近、股関節だけでなく膝や腰も痛くなってきた」という方は、股関節が限界を迎えているSOSサインを見逃している可能性があります。

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5. 読者の疑問解決!日常生活の正しいケアとNG行動

「自分で少しでも良くしたい」という患者様からよくいただく疑問にお答えします。

✅股関節を回すと「ポキポキ」鳴るのは大丈夫?

痛みがない「ポキッ」という音であれば、関節内の気泡が弾ける音や、硬くなった腱が骨に引っかかって鳴る音(弾発股:だんぱつこ)であることが多く、過度な心配はいりません。しかし、音と一緒に「ズキッ」とした痛みや「引っかかり感」がある場合は、関節の中で軟骨や関節唇(かんせつしん)が挟み込まれて傷ついているサインです。無理に鳴らそうとせず、すぐに専門医を受診してください。

✅痛い時は温めるべき?冷やすべき?

慢性的に動きが悪く、重だるい痛みがある場合は、「温める」のが正解です。お風呂にゆっくり浸かって血流を良くすることで、筋肉や関節包の緊張が和らぎ、動きやすくなります。ただし、急に激痛が走った場合や、熱を持っている場合は、炎症が強く起きているため冷やしてください。

✅寝る時、どういう姿勢だと痛くない?

股関節が痛む方は、仰向けで足をまっすぐ伸ばして寝ると、股関節の前側が引っ張られて痛みが出やすくなります。 痛む側を上にして「横向き」に寝て、両膝の間にクッションや丸めたバスタオルを挟むと、股関節が自然な角度に保たれ、周囲の筋肉の緊張が解けて眠りやすくなります。

✅やってはいけない「NGなストレッチ」とは?

「体が硬いから」と、痛みを我慢して無理やり股関節を広げるようなストレッチ(反動をつけて無理に開脚するなど)は絶対にやめてください。硬くなった筋肉や靭帯が断裂したり、すり減った軟骨がさらに破壊されたりして、確実に症状を悪化させます。ストレッチは「イタ気持ちいい」手前で止めるのが鉄則です。

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6. 手術を回避して動きを取り戻す「第3の選択肢」:再生医療

「ストレッチをしても痛くて動かせない」

「病院で『軟骨がすり減っているから人工関節の手術しかない』と言われた」

股関節の変形が進行すると、ご自身でのケアや湿布、痛み止めだけでは限界が来ます。これまでは、動きを取り戻すためには「人工股関節置換術」という大掛かりな手術を受けるしか選択肢がありませんでした。

しかし現在、手術をせずにご自身の股関節の動きを取り戻すための新しい選択肢として、当院では「再生医療」をご提案しています。

再生医療(幹細胞治療)のアプローチとは?

ご自身の腹部の脂肪から採取した「幹細胞」を培養して増やし、傷んで動きが悪くなった股関節内に直接注射する最先端の治療です。

再生医療に期待される2つの効果

強力な抗炎症作用で痛みを鎮める 関節内で長年くすぶり続けている激しい炎症を、細胞の力で抑え込みます。痛みが和らぐことで、カチカチに緊張して股関節をロックしていた筋肉や関節包が緩み、制限されていた動き(屈曲や伸展)がスムーズになる効果が期待できます。

組織の修復と環境改善 投与された細胞が傷ついた組織の修復を促し、軟骨がこれ以上すり減るのを防ぐ環境を整えます。「人工関節の手術を遅らせる、あるいは回避する」ための有効な手段として注目されています。

メスを使わない日帰り治療

人工関節の手術のように骨を切ったり金属を入れたりしないため、体への負担が極めて少ないのが特徴です。日帰りで治療が完了するため、「入院して仕事を長く休むわけにはいかない」という現役世代の方や、「手術が怖い」という方にとって、非常に有効な選択肢です。

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7. まとめ:股関節のサインを見逃さず、根本治療を

「靴下が履きにくい」「あぐらがかけない」「歩幅が狭くなった」 これらは決して気のせいではなく、股関節からの切実なSOSサインです。

年のせいだと諦めて放置すれば、いずれ歩行が困難になり、大規模な手術が必要になってしまいます。 「動きが悪くなってきた」「痛みがある」と感じたら、手遅れになる前に、当院の再生医療を含めた根本的な治療を検討してみてはいかがでしょうか。

「自分と同じ症状が改善した人はいる?」 「再生医療の費用はどれくらい?」 「まずは自分の股関節の状態を詳しく知りたい」

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参考文献

  1. Çelik F, Şenol Gökalp B, Demirkiran G, Bek N, Yakut Y, Yağci G. "Hip-related functional limitations in individuals with idiopathic scoliosis: a controlled trial." European spine journal 33, no. 12 (2024): 4693-4701.

  2. Su H, Yu S, Huang H, Lin S, Zhou H, Chen L, Xiang S, Hu X, Gong Y, Li J, Tong P, Xu T. "Importance of hip capsular repair in total hip arthroplasty (THA) via the posterior lateral approach: a five year retrospective cohort study." International orthopaedics 48, no. 10 (2024): 2567-2577.

  3. Cotteret C, Almazán-Polo J, Guérineau F, González de-la-Flor Á. "The effects of gluteal stretching vs. Lightback® on hip rotation range of motion and posterior chain flexibility in healthy subjects: a cross-over clinical trial." PeerJ 13 (2025): e18523.

  4. Poudel B, Pandey S. "Hamstring Injury." (2025).

  5. Albertoni DB, Gianola S, Bargeri S, Hoxhaj I, Munari A, Maffulli N, Castellini G. "Does femoroacetabular impingement syndrome affect range of motion? A systematic review with meta-analysis." British medical bulletin 145, no. 1 (2023): 45-59.


院長監修記事

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武内 晋司郎

(たけうち しんじろう)

シンセルクリニック総院長

三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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