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【整形外科医がわかりやすく解説】幹細胞とiPS細胞の違い|今クリニックで受けられるのはどちらか
まずは動画でチェック!【幹細胞とiPS細胞の違い】
▶ 11分07秒・字幕付き|幹細胞とiPS細胞の違いをわかりやすく解説
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「再生医療を調べていたら、幹細胞とiPS細胞という2種類の言葉が出てきた。テレビではiPS細胞がノーベル賞を取ったと聞いたが、クリニックのサイトには幹細胞治療と書いてある。同じものなの?違うの?」
——こうした疑問を持つ方が非常に多いです。
調べると難しい言葉ばかりで、結局よくわからないまま——という方のために、医療の知識がない方でも理解できるよう、できるだけ平易な言葉で解説します。
この記事でわかること:①幹細胞とは何か、②iPS細胞とは何か、③2つの違い、④今クリニックで受けられるのはどちらか、の4点です。
- まずは動画でチェック!【幹細胞とiPS細胞の違い】
- 幹細胞とは何か:工場の「万能社員」のような細胞
- 幹細胞の2つの重要な働き
- 幹細胞はどこにあるか
- iPS細胞とは何か:「時間を巻き戻した細胞」
- iPS細胞の仕組み:時計の針を逆回しにするイメージ
- iPS細胞が今クリニックで受けられない2つの理由
- 幹細胞とiPS細胞の違いを一目でわかる表で整理
- 「iPS細胞がすごいなら、幹細胞治療は古いの?」という疑問への答え
- 今実際に受けられる再生医療:幹細胞治療とPRP療法
- シンセルクリニックの幹細胞治療の流れ
- 幹細胞治療を受ける前に正直に伝えておくべきこと
- 「必ず効く」とは言えない
- 幹細胞治療は「対症療法」ではなく「修復促進」
- 法的な安全性の確認
- iPS細胞の未来:整形外科領域への応用可能性
- よくある質問(FAQ)
- iPS細胞治療はいつごろ受けられるようになりますか?
- 幹細胞治療は自分の細胞でなくてもできますか?
- 幹細胞とiPS細胞の間に「ES細胞」というものも聞きますが何ですか?
- 「再生医療」と「幹細胞治療」は同じ意味ですか?
- まとめ
- 関連コラム
- 参考文献
幹細胞とは何か:工場の「万能社員」のような細胞

私たちの体には、ものすごく多くの種類の細胞があります。骨を作る細胞・軟骨を作る細胞・筋肉を作る細胞・血管を作る細胞——それぞれ担当が決まっています。
幹細胞は、そうしたさまざまな細胞に「変身できる」特別な細胞のことです。
工場にたとえると、通常の社員は「自分は経理担当」「自分は製造担当」と役割が固定されています。しかし幹細胞は「どの部署でも働けます」という万能な社員のイメージです。体のどこかが傷ついたとき、幹細胞がやってきて「ここは軟骨が必要だな」「ここは血管を作ろう」という形で、必要な細胞に変身して修復を助けます。
幹細胞の2つの重要な働き
変身して直接修復する:傷ついた部位で必要な細胞(軟骨・骨・血管など)に変身し、修復を担う
周囲に信号を送る(パラクライン効果):「炎症を抑えてください」「修復を始めてください」という信号を周囲の細胞に送り、体全体の修復工事を指揮する「現場監督」のような役割を果たす
この2つ目の「信号を送る働き」が近年特に注目されており、幹細胞治療の鎮痛・修復効果の大部分はここから来ると考えられています(※1)。
幹細胞はどこにあるか
幹細胞は特別なものではなく、私たちの体の中にもともと存在しています。
場所 | 特徴 |
|---|---|
脂肪(皮下脂肪) | 量が多く採取しやすい。当院が使用するのはこちら |
骨髄(骨の中) | 昔から研究されてきた。骨に針を刺す必要があり体への負担が大きい |
臍帯(へその緒) | 出産時にのみ採取できる。他者のものを使う場合は拒絶反応リスクあり |
血液(末梢血) | 採取しやすいが量が少ない |
当院ではお腹まわりの皮下脂肪から幹細胞を採取し、専門の培養施設で数を大幅に増殖させてから関節に注射する治療を行っています。自分の細胞を使うため、体が「異物だ」と攻撃する拒絶反応のリスクがほぼありません。脂肪由来と骨髄由来の詳しい比較は脂肪由来幹細胞とは?骨髄由来との違いについて徹底解説をご覧ください。
iPS細胞とは何か:「時間を巻き戻した細胞」

iPS細胞(人工多能性幹細胞:induced Pluripotent Stem cells)は、2012年にノーベル賞を受賞した山中伸弥先生が発見したことで広く知られるようになりました。
一言で言うと「普通の細胞を、赤ちゃんのころの万能な状態に戻した細胞」です。
iPS細胞の仕組み:時計の針を逆回しにするイメージ
私たちの細胞は、生まれてから成長するにつれて役割が決まっていきます。皮膚の細胞は皮膚として、筋肉の細胞は筋肉として、それぞれ特化していきます。これは一方通行で、一度役割が決まった細胞は元には戻らない——長い間そう考えられていました。
ところが山中先生は、特殊な遺伝子(山中因子)を細胞に導入することで、すでに役割が固定された細胞を「何にでもなれる万能な状態」に戻すことに成功しました。時計の針を逆回しにするように、細胞の時間を巻き戻したのです(※2)。
理論的には、このiPS細胞からほぼどんな細胞でも作れます。心臓の細胞も、神経の細胞も、軟骨の細胞も——難病の治療や新薬の開発に大きな可能性を持っており、世界中で研究が進んでいます。
iPS細胞が今クリニックで受けられない2つの理由
「iPS細胞はすごいのに、なぜ今すぐ受けられないの?」と思う方も多いでしょう。理由は主に2つです。
課題 | 具体的な問題 | 現状 |
|---|---|---|
安全性の問題 | iPS細胞は万能な反面、コントロールが崩れるとがん様細胞に変化するリスクがある。「万能すぎる」ことの問題 | 安全に使えるようにするための研究が世界中で継続中 |
技術・コストの問題 | 作製工程が非常に複雑で費用が高い。実験室レベルの技術を多くの患者に届けるまでの距離がまだある | 一部の研究機関での臨床試験が開始されている段階 |
ただし研究は着実に進んでいます。日本では2026年3月に、iPS細胞を使った「心筋シート(リハート)」が世界で初めて承認されました。目の難病・神経疾患などでも研究が進んでおり、今後10〜20年でより多くの疾患への応用が期待されています。iPS細胞の最新動向については2026年3月6日、世界で初めて日本で承認されたiPS細胞による「心筋シート(リハート)」もご覧ください。
幹細胞とiPS細胞の違いを一目でわかる表で整理
比較項目 | 幹細胞 | iPS細胞 |
|---|---|---|
どこから来るか | 体の中にもともとある(脂肪・骨髄など) | 普通の細胞を特殊処理して作る(皮膚細胞など) |
一言で言うと | もともと体にある「万能社員」 | 時間を巻き戻して作った「万能社員」 |
今すぐ受けられるか | ✅ 受けられる(認可クリニックで治療として提供中) | ❌ まだ一般クリニックでは受けられない(一部研究機関での試験段階) |
安全性 | 自分の細胞を使うため拒絶反応リスクがほぼない。多くの治療実績がある | がん化のリスク管理・拒絶反応の問題が研究中 |
変身できる幅 | 決まった種類の細胞に変身できる(多分化能) | 理論上ほぼすべての細胞に変身できる(多能性・万能) |
主な用途 | 今ある痛み・損傷の改善(変形性関節症・腱板断裂など) | 難病・心臓病・神経疾患など幅広い分野の将来的な治療 |
法的な位置づけ | 再生医療等安全確保法に基づく届出制度で提供可能 | 一部の研究機関での臨床研究の段階 |
「iPS細胞がすごいなら、幹細胞治療は古いの?」という疑問への答え

iPS細胞の話を聞いて「今クリニックでやっている幹細胞治療は、もう古い治療なのか」と感じる方がいるかもしれません。整形外科医として正直にお答えします。
そうではありません。幹細胞治療とiPS細胞は比較するものではなく、それぞれ異なる役割・フェーズの技術です。
料理にたとえると、幹細胞治療は「今日の夕食を美味しく作るための料理技術」で、iPS細胞は「10〜20年後に料理の常識を変えるかもしれない新調理技術の研究」です。今お腹が空いているなら、まず今日の夕食が大事です。
幹細胞治療はすでに多くの患者さんの痛みを改善してきた実績のある治療です。「最新だからすごい」「古いから劣る」という軸で考えるのではなく、「今の自分の状態に対して何が適切か」という視点で判断することが重要です。
今実際に受けられる再生医療:幹細胞治療とPRP療法
「難しい話はわかった。では自分は今何を受けられるの?」という方のために整理します。
現時点で膝・股関節・肩などの痛みに対して実際に受けられる再生医療の選択肢は以下の2つです。
治療法 | 使うもの | 特徴 |
|---|---|---|
幹細胞治療 | 自分の脂肪から取り出した幹細胞(培養・増殖) | 中等度〜重度の損傷にも対応。効果の持続が長い傾向。費用が高め |
PRP療法 | 自分の血液から濃縮した血小板成分 | 当日注射可能。費用が抑えられる。軽度〜中等度の損傷に向いている |
どちらが自分の状態に向いているかについてはPRP療法と幹細胞治療の違い|どちらを選ぶべきか・費用・向いている状態の判断基準で詳しく解説しています。PRP療法の詳細は注目されているPRP-FD注射で絶対知っておきたいこととは?もご参照ください。
幹細胞治療の適応については状態によって異なります。変形性膝関節症に対する幹細胞治療については変形性膝関節症の再生医療:手術を避ける「切らない」治療法も参考にしてください。
シンセルクリニックの幹細胞治療の流れ
「幹細胞治療は実際にどのような流れで行われるのか」を簡単にお伝えします。
ステップ | 内容 | 時間の目安 |
|---|---|---|
①初回カウンセリング | 症状・画像(MRI・X線)をもとに現在の状態を確認。適応・費用・期待できる効果を説明 | 30〜60分(無料) |
②脂肪採取 | お腹まわりから局所麻酔で少量の脂肪を採取(日帰り・傷は小さい) | 30分程度 |
③培養・増殖 | 採取した幹細胞を専門の培養施設で大幅に増殖させる | 約4〜6週間 |
④投与 | 膝・股関節・肩などに幹細胞を注射(日帰り・10〜30分) | 当日 |
⑤経過観察 | 投与後1・3・6ヶ月で効果を確認。必要に応じて追加投与 | 定期通院 |
MRIをお持ちでない方でも初回カウンセリングはご相談いただけます。「自分の状態で受けられるか確認したい」という段階でのご相談を歓迎しています。シンセルクリニックの再生医療について詳しくはシンセルクリニックの再生医療とは?をご覧ください。
幹細胞治療を受ける前に正直に伝えておくべきこと

整形外科医として、幹細胞治療に興味を持つ方に事前に伝えておきたいことがあります。
「必ず効く」とは言えない
幹細胞治療は多くの患者さんの痛みを改善してきた実績があります。しかしすべての方に同じ効果が出るわけではありません。特に変形性関節症が末期(グレードIV)まで進行し関節の隙間がほぼなくなった状態では、効果が限定的で手術が優先されるケースもあります。「必ず治る」という保証はなく、状態によっては「手術が適切」と正直にお伝えします。
幹細胞治療は「対症療法」ではなく「修復促進」
幹細胞治療は炎症の抑制と組織の修復促進に働きます。ただし「すでにすり減った軟骨を元通りに再生する」という意味での完全な根本治療ではなく、「修復環境を整え症状を改善し進行を遅らせることを目指す治療」と理解するのが正確です。治療前に現実的な効果の範囲について医師から十分な説明を受けることを推奨します。
法的な安全性の確認
日本では「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全確保法)」に基づき、幹細胞治療を行うクリニックは厚生労働省への届出が義務付けられています。受診前にクリニックが届出をしているかを確認することを推奨します(※3)。届出のないクリニックでの幹細胞治療は法律違反であり、安全性も担保されません。
iPS細胞の未来:整形外科領域への応用可能性
iPS細胞は整形外科の分野でも将来的な応用が研究されています。
現在最も進んでいる研究のひとつが「iPS細胞由来の軟骨」の作製です。変形性関節症ですり減った軟骨をiPS細胞から作った軟骨で補填するという治療は、理論上は非常に魅力的です。しかし軟骨は血管が少なく修復が難しい組織であり、iPS細胞から均一で安全な軟骨細胞を作製する技術の確立にはまだ時間がかかると考えられています。
また、iPS細胞を使った治療が実現した場合も「手術が不要になる」わけではなく、関節鏡手術などと組み合わせた複合的な治療になる可能性が高いです。
整形外科医として、iPS細胞の研究の進展を注視しながら、現時点では実績のある幹細胞治療とPRP療法を最善の形で活用することが患者さんにとって最も合理的な選択だと考えています。
よくある質問(FAQ)
iPS細胞治療はいつごろ受けられるようになりますか?
分野によって異なります。心筋(心臓)については2026年3月に日本で世界初の承認が下りました。眼科・神経疾患の分野でも研究が進んでいます。整形外科領域(関節の軟骨・骨)への応用は研究段階であり、一般クリニックで受けられるようになるまでにはまだ相当な時間が必要と考えられています。ただし研究の進歩は著しく、10〜20年後に状況が大きく変わる可能性は十分あります。
幹細胞治療は自分の細胞でなくてもできますか?
他者の細胞(他家細胞)を使う幹細胞治療も研究されています。あらかじめ培養した細胞をストックしておくことで「当日すぐ使える」というメリットがあります。しかし自分の細胞でない場合は拒絶反応のリスクがあり、免疫抑制剤が必要になる可能性があります。現時点では安全性の観点から「自分の細胞(自家細胞)」を使う治療が主流です。
幹細胞とiPS細胞の間に「ES細胞」というものも聞きますが何ですか?
ES細胞(胚性幹細胞)はiPS細胞が登場する前から研究されてきた万能幹細胞で、受精卵から作ります。iPS細胞と同様に高い多能性を持ちますが、「受精卵を壊して作る」という倫理的な問題が大きく、日本では使用に厳しい制限があります。iPS細胞はその倫理問題を解決するために生まれた技術でもあります。
「再生医療」と「幹細胞治療」は同じ意味ですか?
再生医療は幹細胞治療を含む広い概念です。細胞・組織・器官を再生・修復する医療全般を指します。幹細胞治療はその中の一つの手法で、PRP療法も「再生医療」の一種です。「再生医療=幹細胞治療」と思われがちですが、PRP(血小板療法)も再生医療の定義に含まれます。
まとめ
幹細胞:体の中にもともとある万能な細胞。脂肪・骨髄などに存在し、変身して修復する力と、周囲に修復の信号を送る力を持つ。今すでにクリニックで治療として受けられる
iPS細胞:普通の細胞を特殊処理で「赤ちゃんのころの万能な状態」に戻した細胞。理論上はほぼどんな細胞にも変身できる。安全性・コストの課題から、現在は一般クリニックでは受けられない(一部研究機関での試験段階)
「どちらが古い・新しい・すごい」ではなく、役割が異なる。幹細胞治療は「今の痛みを改善する現実的な治療」、iPS細胞は「未来の医療を作る研究」
今膝・股関節・肩の痛みで悩んでいる方が実際に選べる選択肢は幹細胞治療とPRP療法。「自分の状態で受けられるか確認したい」という段階でのご相談を歓迎している
「幹細胞治療が自分に向いているか確認したい」という方は、シンセルクリニックにお気軽にご相談ください。MRIをお持ちでない方でも初回カウンセリングを承っています。
関連コラム
参考文献
Pers YM, et al. "Mesenchymal stem cells for the management of inflammation in osteoarthritis." Stem Cells Translational Medicine. 2016;5(3):337-345.
Takahashi K & Yamanaka S. "Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures." Cell. 2006;126(4):663-676.
厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/
日本再生医療学会「幹細胞治療の現状と課題」https://www.jsrm.jp/
山中伸弥「iPS細胞の創製とその応用」日本学術会議. 2013.
院長監修記事

武内 晋司郎
(たけうち しんじろう)
シンセルクリニック総院長
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
医師プロフィールはこちら
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
医師プロフィールはこちら
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