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【医師解説】アナストロゾールで男の子の身長は伸びる?抗がん剤なの?使われ方・副作用・親が知っておきたいこと
「小児科の先生から『アナストロゾール』という薬の名前を聞いた。調べたら抗がん剤と書いてあって、怖くなってしまった」
「男の子の背を伸ばす薬としてネットに出ていた。うちの子にも使えるのでしょうか。副作用は大丈夫でしょうか」
お子さんの身長のことで調べているうちに、聞きなれない薬の名前に行き当たり、不安になる。それはとても自然なことです。しかも、その薬の説明書きには「乳がん」「抗がん剤」といった重い言葉が並んでいます。どう受け止めればよいのか、迷われる方は少なくありません。
この記事では、シンセルクリニック低身長治療センターで診療にあたる整形外科の医師・長田が、アナストロゾールとはどんな薬か、なぜ男の子の身長の話に出てくるのか、わかっていることとわかっていないこと、副作用や注意点を、確認できる資料の範囲で一般情報として解説します。特定の治療をおすすめする記事ではありません。
この記事の結論
アナストロゾールは、日本では閉経後の乳がんの治療薬として承認されている薬。お子さんの低身長に使うことは、承認された使い方ではなく(適応外)、確立した標準的な治療でもない
「抗がん剤」と呼ばれることがあるが、細胞を直接たたく従来の抗がん剤とは違い、女性ホルモンのもとをつくる酵素の働きを抑える薬。ただし、お子さんに使うかどうかは別の話で、専門の医師の判断が欠かせない
男の子でも、骨が成熟して身長が止まる流れには、男性ホルモンから変わる女性ホルモンが関わっている。その働きを抑えて伸びる期間を長くすることを狙うという考え方がある。ただし効果の大きさには個人差があり、すべての子に当てはまるわけではない
骨の強さやホルモンのバランスなど、お子さん特有の注意点がある。乳がんの方向けの説明をそのままあてはめない。個人輸入など、親御さんの判断で飲ませることは決してしないでください
迷ったときは、まず骨年齢で「今の伸びしろ」を確認するところから。それがわからないまま薬の話だけが先に進むのは、順番が逆になる
- この記事の結論
- アナストロゾールとは?男の子の背を伸ばす薬と聞いて、最初に知っておきたいこと
- アナストロゾールは「抗がん剤」なの?従来の抗がん剤との違い
- どう違うのか
- 安心しきってはいけない点もあります
- なぜ男の子の身長に関係するの?骨が成熟する仕組みと、薬の考え方
- 身長が伸びるのは「骨端線」が開いている間だけ
- 男の子でも、骨の成熟には女性ホルモンが関わる
- 薬の考え方は「砂の落ちる速さをゆるめる」
- どんな子が対象になりうる?効果の考え方と、まだわかっていないこと
- これまでの報告から言えること
- 対象になりうる子の目安
- 副作用と注意点|乳がんの方向けの説明を、そのままお子さんにあてはめない
- 添付文書に書かれている主な副作用(成人)
- 成長期のお子さんで、とくに注意される点
- 「錠」は割ってよい?個人輸入は?成長ホルモン・プリモボランとの違い
- 1mgの錠剤を、自己判断で割ったり飲ませたりしない
- 個人輸入は、とても危険です
- ほかの方法との違い
- 迷っているときは|受診してほしい危険なサインと、相談先の選び方
- すでに使っている・使うことになった場合の危険なサイン
- まず確認したいこと
- 専門の外来に相談したほうがよいとき
- アナストロゾールについてよくある質問
- Q. 抗がん剤を子どもに飲ませるのは、危なくないですか?
- Q. 何歳から、何歳までに使えますか?
- Q. 飲めば身長は確実に伸びますか?
- Q. 飲んでいる間に思春期は進みますか?声変わりなどに影響しますか?
- Q. 将来、子どもをもつことに影響しますか?
- Q. 女の子にも使えますか?
- Q. ネットで買った薬を、家で使ってもよいですか?
- 「うちの子も治療できる?」と思われた方へ
- まとめ|名前に驚かず、でも自己判断はせず、まず「今の伸びしろ」を
- 関連コラム
- 参考文献
アナストロゾールとは?男の子の背を伸ばす薬と聞いて、最初に知っておきたいこと

アナストロゾールは、アロマターゼ阻害薬というグループに入る飲み薬です。商品名は「アリミデックス」などで、ジェネリック医薬品もあります。1錠に有効成分が1mg入った錠剤で、処方箋が必要な劇薬に分類されています。
日本で承認されている効能は、閉経後の乳がんです。添付文書にも、効能として書かれているのは閉経後乳がんだけで、成人に1日1回1mgを飲むと説明されています。さらに、閉経前の方への使用は避けるよう注意書きがあります。つまり、もともとは大人の女性のための薬として作られ、確かめられてきた薬だということです。
では、なぜ男の子の身長の話に出てくるのでしょうか。それは、一部の小児内分泌の専門の医師のあいだで、思春期の男の子の骨の成熟をゆるやかにする目的で、海外を中心に承認された効能とは別の目的で使われる(適応外使用)ことがあるからです。
「適応外」は危険という意味ではなく、国が承認した範囲の外で、医師が責任をもって判断して使う場合を指します。ただ、承認の範囲内の使い方に比べると、安全性や効果が確かめられている量や期間が少ないことは、正直にお伝えしておく必要があります。
【長田医師のコメント】「『抗がん剤の名前が出てきて驚いた』『でも先生がすすめるなら』と、気持ちが揺れて来られる親御さんが多いです。まず『この薬は、お子さんの身長のために作られた薬ではありません』という点を、いちばん最初にお伝えするようにしています。そこを知ったうえで、どう考えるかを一緒に整理していきます。」
アナストロゾールは「抗がん剤」なの?従来の抗がん剤との違い

親御さんがいちばん驚かれるのが、「抗がん剤」という言葉でしょう。結論からいうと、アナストロゾールはがん細胞を直接こわす、いわゆる従来の抗がん剤とは仕組みが別の薬です。
どう違うのか
従来の抗がん剤は、細胞が増えるしくみそのものを邪魔して、がん細胞をたたきます。その分、髪の毛や胃腸など、ふつうに増えている細胞にも影響が出やすく、吐き気や脱毛などが起こりやすい薬です。
一方、アナストロゾールは、女性ホルモンをつくるときに必要な「アロマターゼ」という酵素の働きを抑える薬です。乳がんのなかには、女性ホルモンを栄養にして育つタイプがあります。そのタイプでは、ホルモンのもとを減らすことでがんの育ちを抑えられます。このため、ホルモン療法薬と呼ばれます。
従来の抗がん剤 | アナストロゾール(ホルモン療法薬) | |
|---|---|---|
主な働き | がん細胞を直接たたく | 女性ホルモンをつくる酵素の働きを抑える |
飲み方・使い方 | 点滴や飲み薬。決まった周期で使うことが多い | 飲み薬。1日1回 |
目立つ副作用の傾向 | 吐き気、脱毛、白血球の減少など | ほてり、関節の痛み、骨がもろくなることなど(成人の添付文書による) |
「抗がん剤」と書かれているのは、がん治療の薬を広くそう呼ぶことがあるためです。男の子の身長に使うときに、がんの治療をしているわけではありません。
安心しきってはいけない点もあります
ただし、「抗がん剤ではないから安心」と言い切ることもできません。ホルモンの働きに作用する薬ですので、成長期の体に使うときには、骨やホルモンのバランスへの影響を慎重に見る必要があります。この点は、のちの章で詳しくお話しします。
【長田医師のコメント】「『抗がん剤を子どもに?』と心配されるのは、親として当然の反応です。説明のときは、『がんをたたく薬ではなく、ホルモンの流れを調整する薬です』と、まずお伝えします。そのうえで、だからといって何でも安全という意味ではない、ということも正直にお話しします。」
なぜ男の子の身長に関係するの?骨が成熟する仕組みと、薬の考え方

身長が伸びるのは「骨端線」が開いている間だけ
身長は、骨の両端にある軟骨の部分、骨端線(こったんせん)で骨が少しずつつくられ、縦に伸びていきます。思春期の終わりごろに、この軟骨が硬い骨に置きかわって閉じると、それ以上は伸びなくなります。
男の子でも、骨の成熟には女性ホルモンが関わる
骨端線が閉じていく流れには、男の子でも女性ホルモン(エストロゲン)が関わっていると考えられています。男の子のからだでは、男性ホルモンの一部が、アロマターゼという酵素によって女性ホルモンに変わります。この少量の女性ホルモンが、骨の成熟を進める役割を担っています。
たとえるなら砂時計です。砂が全部落ちきると成長は終わり、思春期に入ると砂の落ちる速さが増します。
薬の考え方は「砂の落ちる速さをゆるめる」
アナストロゾールのようなアロマターゼ阻害薬は、男性ホルモンが女性ホルモンに変わるのを抑えます。すると、骨の成熟のペースがゆるやかになり、骨端線が閉じるまでの時間を長くできるかもしれない、というのがこの薬の考え方です。砂が落ちる速さをゆるめて、伸びる時間を稼ぐイメージです。
ただし、これは期待されて試されている考え方で、実際に何cm伸びるかを約束できるものではありません。また、女性ホルモンは骨を丈夫に保つ役割も持っています。そのため、減らしすぎた場合の影響は別に考える必要があります。
骨の成熟の進み具合は、手のレントゲンで調べる骨年齢で確認します。骨年齢が実際の年齢より進んでいれば、伸びる時間が短くなっている可能性があり、遅れていれば、時間が比較的残っている可能性があります。
▶ 骨年齢の検査はどこで受ける?費用の目安
▶ 第二次成長期はいつ?男女別の年齢の目安
【長田医師のコメント】「骨端線の話は、砂時計のたとえで説明すると、お母さんにもお子さん本人にも伝わりやすいです。大切なのは『薬で砂時計を止める』のではなく、『落ちる速さに影響を与えるかもしれない』という程度の話だということ。この距離感を持っていただくだけで、期待しすぎも、怖がりすぎも防げます。」
どんな子が対象になりうる?効果の考え方と、まだわかっていないこと

この章は、最も慎重にお話しすべきところです。結論を先にいえば、効果の大きさは個人差が大きく、わかっていない部分もまだ多い、というのが現状です。
これまでの報告から言えること
思春期に入った男の子を対象にした海外の報告では、次のようなことが言われています。
骨年齢の進みがゆるやかになり、「予測身長」が上向いたとする報告がある。とくに成長ホルモンの治療と一緒に使った場合に、その傾向を示すものがある
一方で、アナストロゾールだけで使った場合は、予測身長の上がり方がわずかで、時間がたつと差が小さくなったとする報告もある
思春期に入る前の男の子では、大人になったときの身長が変わらなかったとする報告がある(同じ系統の別の薬での報告)
「予測身長」は、あくまで計算上の予測です。実際に大人になったときの身長とは、一致しないことがある
つまり、「身長が伸びる薬」とは言い切れず、「条件が合えば、伸びる時間を延ばす可能性がある薬」と受け止めるのが、今のところ現実的です。専門家の間でも、日常の診療で広く使うことには慎重な意見があります。
対象になりうる子の目安
報告で対象にされているのは、主に次のようなお子さんです。ただし、これは「使ってよい基準」ではなく、研究や診療で見られる傾向です。実際に使えるかどうかは、専門の医師が一人ひとりを診て決めます。
見るポイント | どう考えられているか |
|---|---|
思春期の段階 | 主に、思春期に入っている男の子が対象。思春期前では、効果が見られなかったとする報告がある |
骨年齢 | 骨端線がまだ十分に残っていることが前提。閉じた後では、薬で伸びる時間を延ばすことはできない |
予測身長 | 目標との差が大きいかどうかを、骨年齢を使って見積もる。ただし誤差がある |
ほかの病気の有無 | 成長ホルモンの分泌や、甲状腺、肝臓などに問題がないかを、先に確認する |
本人の状態 | 骨の強さ、ホルモンの検査値、生活の様子などをふまえて判断する |
なお、先天性の副腎の病気など、ほかの病気があるお子さんで、治療の一部として使われる場合もあります。これは病気の治療の一環で、体質的に背が低めのお子さんの場合とは状況が異なります。
▶ 低身長は何cmから?診断の目安
▶ 身長予測計算ツール
▶ 成長ホルモン分泌不全性低身長症とは?
【長田医師のコメント】「『この薬で何cm伸びますか』とよく聞かれますが、正直に『お約束はできません』とお答えするしかありません。わかっていないことが多い薬だからです。数字の約束をしてくれる話には、むしろ慎重になっていただきたいと思います。確かなことは、骨端線が閉じてしまうと、どんな方法でも伸びる時間は戻らない、ということです。」
副作用と注意点|乳がんの方向けの説明を、そのままお子さんにあてはめない

インターネットで「アナストロゾール 副作用」と調べると、乳がんの治療を受けている大人の女性向けの情報が多く出てきます。それは成人女性での経験にもとづく説明で、お子さんにそのまま当てはまるとは限りません。ここでは、添付文書で確認できる内容と、成長期のお子さんで特に注意される点を分けてお話しします。
添付文書に書かれている主な副作用(成人)
種類 | 内容 |
|---|---|
比較的見られるもの | ほてり、頭痛、だるさ、吐き気、関節の痛み、肝臓の検査値の異常など |
まれなもの | 骨の痛み、骨がもろくなる、コレステロールが高くなる、気分の落ち込み、指のこわばりなど |
重い副作用(ごくまれ) | 重い皮膚の症状、アレルギー反応、肝臓の障害や黄疸、間質性肺炎、血栓症 |
添付文書には、「骨粗鬆症や骨折が起こりやすくなるため、骨密度などを定期的に調べることが望ましい」という注意も書かれています。成長期の骨を考えるうえで、見過ごせない点です。
成長期のお子さんで、とくに注意される点
背骨や骨の強さ:男の子の治療に関する報告では、背骨の形の変化(椎体の変形)や骨密度の低下が見られた例があり、骨折の報告もあります。時間とともにもとに戻ったとする報告もありますが、まだ十分にはわかっていません
男性ホルモンの増加:薬の作用で男性ホルモンの値が高くなることがあり、にきびや気分の変化、体毛の変化などにつながることがあります
肝臓や脂質の検査値:採血で定期的に確認する必要があります
将来への影響:生殖機能への長期的な影響は、これまでの小規模な報告では問題が見られなかったとされていますが、大規模な確認はまだ十分ではありません
専門家のなかには、この薬を日常的に広く使うことに慎重な意見もあります。一方で、成長ホルモンと併用した場合の安全性は比較的良好だったとする報告もあります。よい面も悪い面も、まだ結論が出ていないというのが、いちばん正確な言い方です。
【長田医師のコメント】「副作用のお話は、怖がらせるためではなく、きちんと見張るためにお伝えしています。お子さんの骨は成長の真っただ中ですから、強さを見るために、レントゲンや採血で経過を追うことが欠かせません。『何も起きないだろう』と考えて飲ませるのと、『起きたらすぐ気づける体制で使う』のでは、まったく別のことです。」
「錠」は割ってよい?個人輸入は?成長ホルモン・プリモボランとの違い

1mgの錠剤を、自己判断で割ったり飲ませたりしない
アナストロゾールの錠剤は、1錠に1mgが入っています。「お子さんなら半分でいいのでは」「少なめにすれば安全では」と考える方もいらっしゃいますが、お子さんにどのくらいの量をどのくらいの期間使うかは、医師が検査の結果を見ながら決めることです。添付文書にも、お子さんの量は書かれていません。自己判断で割ったり、家族の薬を飲ませたりすることは、決してしないでください。
個人輸入は、とても危険です
インターネットには、海外から薬を個人輸入できるサイトがあり、「男の子の身長に」と紹介されていることもあります。しかし、ネットで個人輸入した薬を、親御さんの判断で使うことは、決してしないでください。
量や飲み方が合わず、骨端線をかえって早く閉じさせてしまう危険がある。お子さんの身長を一生縮めてしまうおそれがある
骨の強さやホルモンの値を、誰も見張っていない状態になる
本物かどうか、中身が正しいかどうかを確かめる手段がない
ほかの方法との違い
身長のために使われる方法は、ほかにもあります。それぞれ、狙いも根拠の強さも違います。
成長ホルモン治療:骨を伸ばす力そのものを補う。長く世界で使われてきた治療で、病気と診断された場合は保険診療、そうでない場合は自費になる
アナストロゾール:骨の成熟のペースをゆるめて、伸びる時間を延ばすことを狙う。日本では適応外で、わかっていないことが多い
プリモボラン:男性ホルモンに似た働きをもつ薬。骨端線を早く閉じる可能性があり、慎重な扱いが必要
思春期を遅らせる注射など:思春期の進みにブレーキをかける。思春期が早い場合などに検討される。目的と対象が違う
▶ 成長ホルモン治療の完全ガイド
▶ 思春期早発症の治療
▶ プリモボランは低身長に効く?効果と副作用
【長田医師のコメント】「個人輸入のご相談は、実は少なくありません。『ネットで買えるから』というお気持ちはわかります。ただ、外来でお伝えしているのは、『お子さんの骨の状態を見ずに飲ませるのは、地図なしで山に入るようなものです』ということ。ご自宅で使ってしまう前に、まず一度、ご相談ください。」
迷っているときは|受診してほしい危険なサインと、相談先の選び方

すでに使っている・使うことになった場合の危険なサイン
他院で処方された場合や、すでに飲んでいる場合に、次のような様子が見られたときは、処方した医師にすぐ連絡してください。自己判断で急にやめる前に、まず相談することが大切です。
サイン | 考えられること |
|---|---|
背中や腰の強い痛みが続く | 背骨への影響の可能性 |
軽い転倒やスポーツ中に、骨が折れたように痛む(脚の付け根、すね、膝のあたりなど) | 骨の強さの低下、成長期の骨のけが |
白目や皮膚が黄色い、強いだるさ、食欲の低下 | 肝臓の障害の可能性 |
全身に広がる発疹、唇や口の中のただれ、顔や喉のはれ、息苦しさ | 重いアレルギーなどの可能性。すぐに受診 |
咳や息切れ、発熱が続く | 肺への影響の可能性 |
脚の片方だけがはれて痛む、突然の胸の痛みや息苦しさ | 血栓症の可能性。すぐに受診 |
気分の落ち込みが強い、これまでと様子が大きく違う | ホルモンの変化の影響の可能性 |
すべてのお子さんに起こるわけではありません。ただ、「いつもと違う」と感じたときに遠慮せず連絡できる体制があるかは、とても大切です。
まず確認したいこと
アナストロゾールの名前を聞いて迷っているときは、薬の話に進む前に、確認しておきたいことがあります。
お子さんの骨年齢は今どのくらいか(伸びる時間はどれだけ残っているか)
成長ホルモンの分泌や、甲状腺など、ほかの原因は除かれているか
提案した医師は、骨や肝臓の経過をどう見る予定か
ほかの選択肢(成長ホルモン治療や、経過を見ること)と比べて、どう考えているか
▶ 低身長の検査とは?流れと入院の要否
▶ 子どもの身長が気になるとき、何科に行けばよい?
専門の外来に相談したほうがよいとき
当院は、病気の診断をつける施設ではなく、骨端線の状態をもとに、お子さんの「残りの伸びしろ」を確認して方針をご相談する外来です。「アナストロゾールという名前を聞いて不安になった」「他院で提案された」「使うべきか迷っている」という方は、まず精密身長検査(手のレントゲンと採血の2つだけ)で骨年齢と伸びしろを確認し、結果を当院のオンライン診察でご説明したうえで、今後の方針をご相談いただけます。検査は全国の提携クリニックで受けられ、約30分、痛いのは採血の1回です。結果が出るまで1〜2週間かかり、結果は郵送されません。検査の費用は20,000〜27,000円(提携先により差があります)で、自費診療です。効果には個人差があり、すべての方が対象となるわけではありません。他院の提案を否定するものでもありません。動画では、背が伸びるとうたわれる薬との向き合い方をお話ししています。
保険の対象になりうる病気(成長ホルモン分泌不全性低身長症など)の診断は、小児内分泌の専門外来の領域です。
【長田医師のコメント】「他院で薬の提案を受けて、セカンドオピニオンのつもりで来られる方もいます。そのとき私たちが大切にしているのは、薬の良し悪しをすぐ決めることではなく、『今、骨がどこまで来ているのか』を一緒に確認することです。それがわかると、薬を使う場合も、使わない場合も、判断がずっと落ち着いてできるようになります。」
アナストロゾールについてよくある質問

Q. 抗がん剤を子どもに飲ませるのは、危なくないですか?
アナストロゾールは、細胞をたたく従来の抗がん剤とは別の、ホルモン療法薬です。ただし、ホルモンに作用する薬ですので、成長期の骨やホルモンのバランスへの影響を見ながら慎重に使うことが必要で、危なくないと言い切れる薬ではありません。使うかどうかは、専門の医師の判断が欠かせません。
Q. 何歳から、何歳までに使えますか?
「何歳から何歳まで」という決まった基準はありません。年齢そのものよりも、思春期の進み方や骨年齢、骨端線の残り具合で判断されます。15歳を過ぎていても骨端線が残っていることはありますし、逆に年齢が若くても骨の成熟が進んでいることもあります。
Q. 飲めば身長は確実に伸びますか?
いいえ。効果には個人差があり、すべてのお子さんに期待できるわけではありません。単独では効果が限られるとする報告もあり、「確実に伸びる」とは言えません。
Q. 飲んでいる間に思春期は進みますか?声変わりなどに影響しますか?
アナストロゾールは男性ホルモンを減らす薬ではないため、声変わりなどの変化は、報告では通常どおり進んだとされています。むしろ男性ホルモンの値が高くなることがあります。
Q. 将来、子どもをもつことに影響しますか?
これまでの小規模な報告では、大人になってからの精液の検査などで問題は見られなかったとされています。ただし、調べられた人数は少なく、大規模な確認はまだ十分ではありません。気になる場合は、担当の医師に確認してください。
Q. 女の子にも使えますか?
この記事は男の子を想定しています。女の子は、女性ホルモンと成長の関わり方が異なり、同じ考え方があてはまるとは限りません。気になる場合は、主治医にご相談ください。
Q. ネットで買った薬を、家で使ってもよいですか?
決してしないでください。量や飲み方を誤ると、かえって骨端線を早く閉じさせ、お子さんの身長に取り返しのつかない影響が出るおそれがあります。必ず医師の管理のもとで検討してください。
「うちの子も治療できる?」と思われた方へ
子どもの身長について、ほかの記事もお探しの方は 子どもの身長コラム テーマ別インデックス(134本) からどうぞ。
まとめ|名前に驚かず、でも自己判断はせず、まず「今の伸びしろ」を

アナストロゾールは、日本では閉経後乳がんの薬。お子さんの低身長への使用は適応外で、確立した標準治療ではない
「抗がん剤」と呼ばれることがあるが、従来の抗がん剤とは別の、ホルモン療法薬。がんの治療をするわけではない
男の子でも骨の成熟には女性ホルモンが関わっていて、その働きを抑えて伸びる時間を延ばすことを狙う考え方がある。ただし効果は個人差が大きく、わかっていないことも多い
骨の強さやホルモンの変化など、お子さん特有の注意点がある。痛みや黄疸など、気になるサインがあれば医師に連絡する
個人輸入や、錠剤を割って飲ませるなど、親御さんの判断での使用は決してしない
迷ったときは、薬の話の前に、骨年齢で今の伸びしろを確認することから始める
焦って決める必要はありません。最初の一歩は、薬を選ぶことではなく、「今の骨の状態を知ること」で十分です。もし迷われたときは、LINEまたはお問い合わせフォームから、お気軽にご相談ください。
関連コラム
参考文献
アナストロゾール錠1mg「DSEP」添付文書(第一三共エスファ). 効能・効果、用法・用量、使用上の注意. https://med.daiichisankyo-ep.co.jp/products/files/1239/430773_4291010F1228_1_03.pdf
Mauras N, et al. Anastrozole increases predicted adult height of short adolescent males treated with growth hormone: a randomized, placebo-controlled, multicenter trial for one to three years. J Clin Endocrinol Metab. 2008. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18165285/
Mauras N, et al. Randomized Trial of Aromatase Inhibitors, Growth Hormone, or Combination in Pubertal Boys with Idiopathic, Short Stature. J Clin Endocrinol Metab. 2016. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27710241/
Zegarra W, et al. Anastrozole vs Letrozole to Augment Height in Pubertal Males With Idiopathic Short Stature: A 3-Year Randomized Trial. J Endocr Soc. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39262574/
Geffner ME. Aromatase Inhibitor Monotherapy to Augment Height in Boys: Does It Work and Is It Safe? J Endocr Soc. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39564578/
Varimo T, et al. Letrozole Monotherapy in Pre- and Early-Pubertal Boys Does Not Increase Adult Height. Front Endocrinol. 2019. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31024444/
Hero M, et al. Impact of aromatase inhibitor therapy on bone turnover, cortical bone growth and vertebral morphology in pre- and peripubertal boys with idiopathic short stature. Horm Res. 2009. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19339794/
Godoy IRB, et al. Atypical "opened-bottle" proximal tibial fractures in young male patients with growth hormone and aromatase inhibitor treatment: case series. Skeletal Radiol. 2026. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40928549/
Dai C, et al. Evaluation of male reproductive function after aromatase inhibitor treatment during adolescence: case series with literature review. J Pediatr Endocrinol Metab. 2026. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41979040/
Miller BS, et al. Height outcomes in children with growth hormone deficiency and idiopathic short stature treated concomitantly with growth hormone and aromatase inhibitor therapy: data from the ANSWER program. Int J Pediatr Endocrinol. 2020. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33042202/
医師監修記事

長田 直祥
(おさだ なおき)
シンセルクリニック 低身長治療センター医師
大阪医科薬科大学卒業。豊田厚生病院、中東遠総合医療センター、国立長寿医療研究センター、名古屋大学整形外科などで整形外科医としての経験を積み、現在はシンセルクリニック低身長治療センターで、お子さまの成長・低身長治療に携わる。日本整形外科学会所属。
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大阪医科薬科大学卒業。豊田厚生病院、中東遠総合医療センター、国立長寿医療研究センター、名古屋大学整形外科などで整形外科医としての経験を積み、現在はシンセルクリニック低身長治療センターで、お子さまの成長・低身長治療に携わる。日本整形外科学会所属。
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