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【整形外科医が解説】変形性肩関節症でやってはいけないこと・ストレッチ・リハビリ・筋トレの正解
「肩が痛いけど、どんな運動をしていいかわからない」
「ストレッチはやった方がいい?それとも安静にすべき?」
「筋トレは悪化させる?」
——変形性肩関節症と診断された患者さんから、こうした質問を外来で毎日のようにいただきます。
整形外科では診断名を告げられても、「日常生活で何をしてはいけないか」「どんな運動が正しいか」について十分な説明を受けられないことが多いのが現状です。
この記事では整形外科医として、変形性肩関節症における「やってはいけないこと」「正しいストレッチ」「リハビリの進め方」「安全な筋トレ」を、段階別に具体的に解説します。

- 変形性肩関節症とは:整形外科医が知っておくべき基礎知識
- 変形性肩関節症でやってはいけないこと10選
- ① 炎症期に無理なストレッチ・可動域訓練をする
- ② 痛みを無視して「慣らす」ことを続ける
- ③ 重いものを片手でつかむ・持ち上げる動作
- ④ 肩を挙げたまま長時間維持する作業
- ⑤ うつ伏せ・手術側を下にした就寝
- ⑥ 痛み止めに頼りすぎて運動をしない
- ⑦ 自己判断でステロイド注射を繰り返す
- ⑧ 高重量・高負荷の筋トレを急に始める
- ⑨ 「五十肩だから放置すれば治る」と思い込む
- ⑩ 痛みが引いたらすぐにスポーツ・重労働を再開する
- 変形性肩関節症に効果的なストレッチ:炎症期と安定期で変える
- 炎症期(安静時痛・夜間痛がある)のストレッチ
- 安定期(動作時のみ痛い)のストレッチ6選
- 変形性肩関節症のリハビリ:3フェーズで回復する
- フェーズ1:炎症管理期(急性期〜亜急性期)
- フェーズ2:可動域改善期(亜急性期〜慢性期)
- フェーズ3:筋力強化・機能回復期(慢性期)
- 変形性肩関節症での筋トレ:やっていい運動・やってはいけない運動
- ✅ 変形性肩関節症でやってもよい筋トレ
- ❌ 変形性肩関節症でやってはいけない筋トレ
- 変形性肩関節症の「手術しない」選択肢
- 保存療法で改善が期待できる条件
- 再生医療(PRP・幹細胞治療)という選択肢
- 日常生活の工夫:変形性肩関節症と上手につきあうために
- 就寝のポジショニング
- 入浴・温熱
- 職場・家事での工夫
- 変形性肩関節症の進行を防ぐための生活習慣改善
- 姿勢の改善が肩関節の負荷を大きく変える
- 体重管理と肩関節の関係
- 睡眠の質と夜間痛の関係
- 変形性肩関節症のセルフチェック:今すぐできる5つの確認
- 変形性肩関節症の重症度別 対応ガイド
- よくある質問(FAQ)
- 変形性肩関節症は五十肩と何が違いますか?
- 温めると楽になりますが、温熱療法は続けていいですか?
- 水泳は変形性肩関節症に良いですか?
- 変形性肩関節症と腱板断裂の関係:見逃してはいけない鑑別点
- まとめ
- 関連コラム
- 参考文献
変形性肩関節症とは:整形外科医が知っておくべき基礎知識

変形性肩関節症は、肩関節の軟骨が摩耗・変性することで骨同士がこすれ合い、痛み・可動域制限・夜間痛が生じる慢性疾患です。
膝・股関節の変形性関節症と比べると発生頻度は低いですが、腱板断裂を長期間放置した後に続発する「腱板断裂性関節症(CTA)」が増加しており、整形外科臨床では決して珍しくない疾患です。
種類 | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
一次性変形性肩関節症 | 加齢・過使用 | 腱板は比較的保たれている |
二次性変形性肩関節症 | 関節リウマチ・上腕骨頭壊死・腱板断裂性関節症 | 基礎疾患の治療が並行して必要 |
変形性肩関節症の詳しい症状・診断については変形性肩関節症とは?整形外科医が徹底解説をご覧ください。この記事では「実際にどう対処するか」の行動ガイドに絞って解説します。
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変形性肩関節症でやってはいけないこと10選

変形性肩関節症では「正しいことをする」と同じくらい「悪化させる行動をやめる」ことが重要です。整形外科医として特に注意が必要な10の行動を解説します。
① 炎症期に無理なストレッチ・可動域訓練をする
安静時痛・夜間痛がある「炎症期」に強引に可動域を広げようとすることは逆効果です。炎症が強い状態で関節を動かすと炎症が悪化し、痛みと浮腫が増加します。炎症期(安静時・夜間にも痛みがある時期)はまず炎症を抑えることを優先し、可動域訓練はその後に行います。
② 痛みを無視して「慣らす」ことを続ける
「少し痛いくらいなら大丈夫」という判断でストレッチや運動を続けることは、変形性肩関節症では特に危険です。痛みは関節への過剰なストレスのシグナルです。「痛みが出る手前」の範囲内で動かすことが基本原則です。
③ 重いものを片手でつかむ・持ち上げる動作
5kg以上の荷物を片手で持ち上げる動作は、上腕骨頭に強い牽引力をかけ、関節面の摩耗を加速させます。特に腱板が弱体化している場合は、残存する腱板に過剰な負荷をかけます。日用品のお買い物は両手に分散、スーパーのカゴは提げず押し、キャリーケースを活用するなどの工夫が有効です。
④ 肩を挙げたまま長時間維持する作業
洗濯物を高い位置に干す・棚の高い場所の掃除・PC作業で肩を前方に突き出した姿勢の維持などは、肩関節への圧力を高めます。腕を挙げたまま1分以上維持するような作業は分割して行い、こまめに下ろす習慣をつけましょう。
⑤ うつ伏せ・手術側を下にした就寝
就寝中に患側の肩を圧迫する姿勢は夜間痛を悪化させます。仰向けで患側の肩の下に薄いタオルを置いて肩甲骨を少し外側に出した姿勢が圧迫を減らします。横向きで眠る場合は健側(痛くない方)を下にします。
⑥ 痛み止めに頼りすぎて運動をしない
NSAIDs(ロキソニン・ボルタレンなど)で痛みをごまかしながら通常の生活を続けることは、関節の変形を進行させるリスクがあります。鎮痛薬は「痛みを和らげてリハビリをしやすくするための補助手段」として使い、適切な運動療法と並行することが重要です。
⑦ 自己判断でステロイド注射を繰り返す
ステロイド(コルチゾン)関節内注射は炎症の強い時期に有効ですが、繰り返しの注射は腱板組織を脆弱化させるリスクがあります。一般的に同一関節への注射は年3〜4回以内が推奨されており、それ以上の頻度での使用は腱板断裂を進行させる可能性があります。
⑧ 高重量・高負荷の筋トレを急に始める
「筋力をつければ良くなる」という考えから、痛みがあるのにジムで高重量のウエイトトレーニングを始めることは逆効果です。炎症期・急性期の高負荷運動は関節内圧を上昇させ、軟骨・腱板への負荷を増大させます。筋トレは炎症が落ち着いた後に低負荷から段階的に行います(詳しくは後述)。
⑨ 「五十肩だから放置すれば治る」と思い込む
変形性肩関節症は五十肩(肩関節周囲炎)と症状が似ているため混同されることがありますが、五十肩と違い変形性肩関節症は放置しても自然治癒しません。適切な治療とセルフケアなしに放置すると、腱板断裂性関節症へと進行するリスクがあります。腱板断裂を放置した場合のリスクについては腱板断裂を放置するとどうなる?もご覧ください。
⑩ 痛みが引いたらすぐにスポーツ・重労働を再開する
鎮痛薬や注射で痛みが引いた後、すぐに以前と同じ強度のスポーツ・仕事を再開することは再燃の原因になります。痛みがなくなった後も、段階的に負荷を上げるリハビリのプロセスを経てから活動を再開することが再発防止の原則です。
変形性肩関節症に効果的なストレッチ:炎症期と安定期で変える

変形性肩関節症のストレッチは「炎症期(安静時・夜間に痛みがある)」と「安定期(動かした時だけ痛い)」で大きく異なります。自分の今の状態を見極めてから行うことが重要です。
炎症期(安静時痛・夜間痛がある)のストレッチ
炎症期は積極的なストレッチは禁忌です。この時期に行うのは以下の最小限の動きのみです。
振り子運動(コッドマン体操):前傾姿勢で患側の腕の力を抜き、重力で自然に揺らす。関節内圧を下げ浮腫を軽減する効果があります。1回30秒を1日2〜3回
手首・肘の他動運動:肩は動かさず、手首・肘の関節を動かして末梢の血流を維持します
安定期(動作時のみ痛い)のストレッチ6選
安静時痛・夜間痛が消えたら、以下のストレッチを痛みが出ない範囲で行います。
ストレッチ名 | 方法 | 回数 | 目的 |
|---|---|---|---|
腕振り子運動 | 前傾姿勢で腕を前後・左右・円を描くように揺らす | 各方向20〜30秒 | 関節内圧を下げる・可動域保持 |
棒体操(棒を使った挙上) | 両手で棒を持ち健側の力で患側を補助しながら挙上 | 10回×2セット | 挙上可動域の改善 |
タオルを使った内旋ストレッチ | 背中でタオルの両端を持ち、健側で患側をゆっくり引き上げる | 30秒×3回 | 内旋・結滞動作の改善 |
壁を使った外旋ストレッチ | 壁に手をつき、体を壁から離す方向に回転させる | 30秒×3回 | 外旋可動域の改善 |
肩甲骨の引き寄せ運動 | 両肩甲骨を背骨に向かって引き寄せ5秒保持→ゆるめる | 10回×2セット | 肩甲骨周囲筋の活性化・姿勢改善 |
胸椎モビリティ(胸椎の回旋) | 横向きで膝を90度に曲げ、上の腕を後ろに回旋させる | 左右各10回 | 胸椎の柔軟性改善・肩関節負荷の軽減 |
重要なのは「痛みが出る手前で止める」ことです。ストレッチ中に7〜8/10の痛みが出たら強度を落としてください。肩のストレッチについては整形外科医が教える肩のストレッチも参考にしてください。

変形性肩関節症のリハビリ:3フェーズで回復する

変形性肩関節症のリハビリテーションは、病期(炎症の程度)に応じた段階的なアプローチが基本です。
フェーズ1:炎症管理期(急性期〜亜急性期)
目標:炎症を抑え、痛みをコントロールする
アイシング:運動後または痛みが強い時に15〜20分(炎症の強い時期)
温熱:慢性期・朝のこわばりに有効(炎症が強い急性期は禁忌)
薬物療法:NSAIDs・アセトアミノフェン・関節内注射(医師の処方に従う)
振り子運動:関節内圧を下げ浮腫を軽減
日常生活動作(ADL)の修正:やってはいけない動作の回避指導
フェーズ2:可動域改善期(亜急性期〜慢性期)
目標:痛みのない範囲で可動域を段階的に拡大する
自動介助運動(健側の手で患側を補助しながら動かす)
棒体操・プーリー運動(滑車を使った運動)
肩甲骨のモビライゼーション(肩甲骨の動きを出す)
胸椎モビリティ改善(胸椎の硬さが肩関節への負荷を増加させるため)
変形性肩関節症では、腱板が弱体化していることが多いため、肩甲骨周囲の筋肉(前鋸筋・僧帽筋下部・菱形筋)を先に機能させることが重要です。上腕骨を直接動かす前に、肩甲骨の動きを確保することで肩関節への負荷を分散できます。
フェーズ3:筋力強化・機能回復期(慢性期)
目標:肩関節の安定性を高め、日常生活・仕事・スポーツへ復帰する
腱板筋(インナーマッスル)の筋力強化
三角筋・僧帽筋・前鋸筋などアウターマッスルの段階的強化
スポーツ・作業に応じた動作訓練
腱板断裂がある場合はリハビリの内容が異なります。腱板断裂のリハビリ完全ガイドもあわせてご確認ください。
変形性肩関節症での筋トレ:やっていい運動・やってはいけない運動
「筋トレは変形性肩関節症に良いか悪いか」という問いに対する答えは「炎症が落ち着いた段階で、正しい方法で行えば有効」です。問題なのは「どの種目を・どの強度で・どのタイミングで行うか」です。
✅ 変形性肩関節症でやってもよい筋トレ
種目 | 方法 | 効果 |
|---|---|---|
外旋運動(チューブ) | 肘を90度に曲げて脇を締め、チューブを使って外に回す | 棘下筋・小円筋(後方腱板)を強化。肩の安定性向上 |
肩甲骨ロウイング(チューブ) | 肘を引きながら肩甲骨を寄せる動き | 菱形筋・僧帽筋中部を強化。姿勢改善 |
サイドレイズ(軽重量) | 1〜2kgのダンベルで肘を軽く曲げて横に挙上。90度未満で止める | 三角筋中部・棘上筋を軽負荷で強化 |
肩甲骨プッシュアップ | 四つん這いで肩甲骨を内側・外側に動かす | 前鋸筋の強化。肩甲骨の安定性向上 |
ウォールスライド | 壁に両肘をつけたまま腕を上下に滑らせる | 僧帽筋下部の強化。猫背改善 |
❌ 変形性肩関節症でやってはいけない筋トレ
種目 | 避ける理由 |
|---|---|
ベンチプレス(高重量) | 肩関節への前方ストレスが大きく、腱板・関節面への負荷が高い |
ショルダープレス(バーベル・高重量) | 頭上で高負荷をかける動作は関節圧を大幅に増加させる |
懸垂(チンアップ) | 体重すべてが肩にかかる牽引力が腱板・関節面を損傷させる |
アップライトロウ | 肘を肩の高さ以上に上げると肩峰下でのインピンジメントが起きやすい |
痛みが出る種目の継続 | 痛みは軟骨・腱板への過剰ストレスのシグナル。中止が原則 |
筋トレ実施の3原則:
①炎症期(安静時痛・夜間痛がある)は筋トレ禁忌
②動作中に痛みが出たら即中止
③翌日に痛みが増していたら負荷を下げる
変形性肩関節症の「手術しない」選択肢
変形性肩関節症は進行すると人工肩関節置換術が必要になることがありますが、保存療法・再生医療で長期にわたって手術を先延ばしにできるケースが多くあります。
保存療法で改善が期待できる条件
グレードI〜II(軽度〜中等度)の変形性肩関節症
安静時痛・夜間痛が主体でなく、動作時の痛みが主
腱板が比較的保たれている
再生医療(PRP・幹細胞治療)という選択肢
ヒアルロン酸注射・ステロイド注射で効果が薄れてきた場合、再生医療(PRP療法・幹細胞治療)が次の選択肢として検討できます。軟骨の修復促進・炎症の抑制により、手術を先延ばしにしながら症状をコントロールできる可能性があります。肩腱板断裂・肩の痛みに対する再生医療(幹細胞治療):手術を避ける「切らない」治療法もご参照ください。
シンセルクリニックで再生医療を受けられた方のインタビュー動画
手術(人工肩関節置換術)の詳細については人工肩関節置換術とは?禁忌肢位・リハビリ・日常生活の注意点を徹底解説もあわせてご覧ください。
「手術を勧められているが決断できない」「再生医療の適応かどうか確認したい」という方は肩腱板断裂の手術で後悔したくない人へ。再断裂のリスクと「切らない」治療の選択肢もご確認ください。

日常生活の工夫:変形性肩関節症と上手につきあうために

就寝のポジショニング
夜間痛を軽減するには、仰向けで患側の肩甲骨の下に折ったタオルを置き、肩を少し外側に出した姿勢が有効です。横向きで寝る場合は健側を下にし、患側の腕を胸の前に置いて肩関節に伸展ストレスをかけないようにします。
入浴・温熱
慢性期(安静時痛がない時期)では入浴による温熱が筋肉の緊張緩和と可動域改善に有効です。入浴後にストレッチを行うと筋組織が温まって可動域が拡大しやすくなります。ただし急性炎症期は温熱禁忌(アイシングが適切)です。
職場・家事での工夫
棚の高さを調整し、腕を挙げなくて済む環境をつくる
重い荷物はキャリーカートや台車を活用
PC作業はモニターの高さを目線に合わせ、肩が上がらない高さに調整
調理は台を利用して腕を挙げる機会を減らす
変形性肩関節症の進行を防ぐための生活習慣改善
ストレッチ・リハビリ・筋トレと並行して、日常生活全体の見直しが変形性肩関節症の進行抑制に重要です。
姿勢の改善が肩関節の負荷を大きく変える
猫背・頭部前方位(スマートフォンやPC作業による「スマホ首」)は、肩関節への負荷分布を変化させ、インピンジメントや腱板への過剰ストレスを引き起こします。背骨が丸まった姿勢では肩甲骨が外転(翼状肩甲)しやすくなり、上腕骨頭が前方にシフトして関節面の接触面積が減少します。
胸椎の伸展(反らす)・肩甲骨の後退(引き寄せ)を意識した姿勢を日常的に保つことが、肩関節への負荷を最小化する基本です。具体的には、座っているとき・立っているときに「頭頂部を天井に向かって引き上げるイメージ」で姿勢を作るだけで、肩甲骨の位置が改善され肩関節への負荷が軽減されます。
体重管理と肩関節の関係
肩関節は体重を直接支える関節ではありませんが、肥満は全身的な炎症状態を高め、関節軟骨の変性を促進することが知られています。また肥満によって腱板の断裂リスクが高まるという報告もあります(※3)。適切な体重管理は肩関節の保護にも間接的に寄与します。
睡眠の質と夜間痛の関係
変形性肩関節症の患者さんの多くが夜間痛を訴えます。夜間痛は睡眠の質を低下させ、睡眠不足は炎症性サイトカインの増加→疼痛感受性の上昇という悪循環を招きます。就寝時のポジショニング(前述)に加え、就寝前のアイシング(慢性炎症がある場合)または温熱(こわばりが主な場合)を状態に応じて使い分けることが夜間痛の管理に有効です。
変形性肩関節症のセルフチェック:今すぐできる5つの確認
以下の項目で自分の状態を確認し、対応を判断してください。
チェック項目 | 当てはまる | 当てはまらない |
|---|---|---|
安静にしていても肩が痛い(安静時痛) | → 炎症期。運動禁忌。医師受診を | → 安定期の可能性。ストレッチ開始可 |
夜間に痛みで目が覚める(夜間痛) | → 炎症が強い状態。ポジショニング改善+受診 | → 日中の活動の工夫で改善可能 |
肩を90度以上挙げると痛い | → インピンジメント・腱板問題の可能性。画像検査が必要 | → 比較的軽度の可動域制限 |
ストレッチ後に痛みが増す | → 炎症期のストレッチになっている可能性。中止して受診 | → ストレッチが適切に行えている |
ヒアルロン酸・ステロイド注射の効果が短くなってきた | → 進行の可能性。再生医療・手術の相談を検討 | → 保存療法継続で様子見 |
「安静時痛・夜間痛があり、上の項目に複数当てはまる」という方は整形外科での画像検査(MRI・X線)による現状把握を優先してください。変形性肩関節症なのか、腱板断裂性関節症まで進行しているのかで、対応が大きく変わります。腱板断裂でやってはいけないことも合わせてご確認ください。
変形性肩関節症の重症度別 対応ガイド
変形性肩関節症の重症度(グレード)によって、最適な対応が変わります。X線・MRIで確認した重症度を把握したうえで、適切な治療・リハビリ・日常生活の管理を選択することが重要です。
グレード | X線所見 | 主な症状 | 推奨される対応 |
|---|---|---|---|
グレードI(軽度) | 骨棘形成・軽度の関節裂隙狭小化 | 動作時の違和感・軽い痛み | 保存療法・リハビリ・生活習慣改善。NSAIDs・ヒアルロン酸注射 |
グレードII(中等度) | 関節裂隙の明確な狭小化・骨棘増大 | 動作時の痛み・可動域制限 | リハビリ強化・PRP療法・ステロイド注射。腱板の状態を確認 |
グレードIII(重度) | 関節裂隙の消失・上腕骨頭の変形 | 安静時痛・夜間痛・著明な可動域制限 | 再生医療(幹細胞治療)・人工肩関節置換術の検討 |
腱板断裂性関節症(CTA) | 上腕骨頭の上方偏位・関節窩の変形 | 腕が挙がらない・著明な機能不全 | リバース型人工肩関節置換術が第一選択 |
グレードI〜IIの段階では、この記事で紹介したストレッチ・リハビリ・筋トレを適切に継続することで、グレードIIIへの進行を遅らせることが可能です。グレードIIIで保存療法の効果が限界になってきた場合は、再生医療または手術のタイミングを整形外科医と相談することをお勧めします。
現在の重症度を把握したい方は、まず整形外科でX線・MRIによる画像検査を受けることが最初のステップです。シンセルクリニックでは画像検査がない方でも初回カウンセリングでご相談いただけます。画像をお持ちの方はぜひお持ちください。

よくある質問(FAQ)
変形性肩関節症は五十肩と何が違いますか?
五十肩(肩関節周囲炎)は炎症が主体で、適切な治療と時間経過(1〜2年)で自然に改善することが多いです。一方、変形性肩関節症は軟骨の摩耗・骨の変形が起きているため、放置すると進行します。「夜間に痛くて眠れない状態が半年以上続いている」「腕が以前より明らかに挙がりにくくなった」という場合は、五十肩ではなく変形性肩関節症・腱板断裂の可能性を整形外科で確認することをお勧めします。
温めると楽になりますが、温熱療法は続けていいですか?
安定期(安静時痛がない時期)の温熱は筋肉の緊張緩和と可動域改善に有効で、続けても問題ありません。ただし急性期(腫れ・熱感が強い)や炎症が強い時期は温熱が炎症を悪化させるためアイシングが適切です。「温めると楽・冷やすと逆につらい」という場合は安定期と判断できます。
水泳は変形性肩関節症に良いですか?
水中では浮力で関節への負荷が減るため、水中ウォーキングは関節にやさしい運動です。ただし水泳(クロール・バタフライなど)は肩を繰り返し挙上する動作であり、変形性肩関節症の状態によっては悪化させる場合があります。痛みが出ない種目・強度の範囲内で行い、クロールより平泳ぎの方が肩への負荷が小さいとされています。
変形性肩関節症と腱板断裂の関係:見逃してはいけない鑑別点
変形性肩関節症の患者さんに腱板断裂が合併しているケースは非常に多く、整形外科臨床では両者を同時に評価することが不可欠です。腱板断裂が隠れている場合、変形性肩関節症として保存療法を続けていても改善が乏しい原因になっていることがあります。
腱板断裂が疑われる場合のセルフチェックとして、①腕を横から90度に挙げたとき(外転)に痛みや力が抜けるような感覚がある、②腕を横から挙げた際に特定の角度(60〜120度)だけ痛みが強くなる(有痛弧サイン)、③肩の前方を押すと痛みがある——これらの症状があればMRIでの評価が必要です。腱板断裂のセルフチェックについては腱板断裂の症状をセルフテストでチェックする!もあわせてご確認ください。腱板断裂が確認された場合、ストレッチ・リハビリ・筋トレの内容が変わります。変形性肩関節症とひとくくりにせず、腱板の状態を画像で確認したうえで個別の治療を組むことが回復への最短ルートです。
変形性肩関節症の治療は「どの段階にあるか」「腱板の状態はどうか」「患者さんの生活スタイル・年齢・活動性はどうか」によって大きく異なります。一般的な情報ではなく、自分の状態に合った個別のアドバイスが最も重要です。シンセルクリニックでは整形外科医が直接診察し、画像所見・症状・生活スタイルを総合評価したうえで、手術・再生医療・保存療法それぞれの選択肢をフラットに提案しています。「手術を先延ばしにしたい」「再生医療の適応か確認したい」「リハビリの方針を整形外科医に相談したい」など、どのようなご相談でも歓迎しています。
まとめ
炎症期(安静時・夜間に痛みがある)は安静が最優先。強いストレッチ・筋トレは禁忌
やってはいけない10の行動:炎症期のストレッチ・重いものの片手持ち・無理な可動域訓練・高重量筋トレ・「放置すれば治る」という思い込みなど
安定期のストレッチ:振り子運動→棒体操→タオルを使った内旋・外旋ストレッチと段階的に
リハビリは3フェーズ(炎症管理→可動域改善→筋力強化)で進める
筋トレは外旋運動・肩甲骨ロウイングなど腱板・肩甲骨周囲筋を低負荷で強化するものがおすすめ。ベンチプレス・懸垂など高負荷種目は禁忌
保存療法で効果が薄れた場合は再生医療、それでも改善しない場合に人工肩関節置換術という段階的な選択が重要
「自分の変形性肩関節症がどの段階か確認したい」「整形外科医に直接相談したい」という方は、シンセルクリニックにお気軽にご相談ください。MRIをお持ちでない方でも初回カウンセリングを承っています。
関連コラム
参考文献
Flurin PH, et al. "A comparison of clinical outcomes of anatomic and reverse total shoulder arthroplasty." Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 2015;24(2):274-281.
Izumi T, et al. "Glenohumeral osteoarthritis in Japan: a cross-sectional study." Journal of Orthopaedic Science. 2020;25(1):84-88. https://doi.org/10.1016/j.jos.2019.05.009
Gartsman GM, et al. "Arthroscopic treatment of multidirectional glenohumeral instability." Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 2000;9(3):238-240.
岩崎倫政「肩関節疾患のリハビリテーション」日本リハビリテーション医学会誌. 2016;53(12):928-935. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/53/12/53_928/_pdf
Badalamente MA, Wang ED. "CORR Insights: Nonoperative treatment of rotator cuff disease with BOTOX." Clinical Orthopaedics and Related Research. 2014;472(8):2516-2518.
院長監修記事

武内 晋司郎
(たけうち しんじろう)
シンセルクリニック総院長
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
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