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【医師監修】低身長症は寿命に影響する?大人になってから困る?心の面・治療の意味まで整形外科の医師が正直に解説
「この子は、大人になってから困るのでしょうか」
「『低身長 寿命』と検索してしまって、余計に不安になりました」
背の順でいつも前のほう、成長曲線の下のほうを通っているお子さんを見ていると、先のことが気になるのは自然なことです。そして調べ始めると、「寿命」「コンプレックス」といった、目を背けたくなる言葉に出会ってしまいます。
「低身長 寿命」と検索された親御さんが本当に知りたいのは、寿命の年数そのものではなく、「この子は大人になって困らないか」ということだと思います。結論から先にお伝えすると、低身長そのものが寿命を縮めると結論づけられているわけではありません。ただし、身長と死亡の関係を調べた大規模な研究はいくつもあり、統計上の関連が報告されているものもあります。「まったく関係がない」と言い切ることも、「短くなる」と決めつけることも、どちらも正確ではありません。
この記事では、シンセルクリニック低身長治療センターで診療にあたる整形外科の医師・長田が、身長と寿命の研究で分かっていることと言えないこと、病気が背景にある低身長の考え方、心の面の研究、大人になってからの暮らし、そして治療の意味を、論文で確認できる範囲だけに絞って解説します。
この記事の結論
身長と寿命の関係は、大規模な観察研究で調べられている。ただし結果は一様ではなく、死因によって向きが逆になるものもある。低身長そのものが寿命を縮めると結論づけられてはいない
研究の数字は集団の平均の話で、一人ひとりのお子さんの寿命を予測するものではない
病気が背景にある低身長(成長ホルモン分泌不全性低身長症、ターナー症候群など)では、大切なのは身長の数字よりその病気の管理
心の面の研究は結果が分かれる。「低身長だから必ず自信を失う」とは言えないし、「まったく影響しない」とも言えない
治療は寿命のためではなく、成長期の伸びしろと本人の納得のためのもの。迷ったら、まず成長曲線に身長を点で打つことから
- この記事の結論
- 「大人になったら困る?」と聞かれたとき、最初にお伝えしていること
- 身長と寿命の研究|大規模な調査で分かっていること
- 「低身長だから寿命が短い」と言い切れない理由
- 1. 「関連」と「原因」は別のもの
- 2. 身長は「遺伝」と「幼いころの環境」が積み重なった結果
- 3. 調べられる範囲で調整しても、関連が残ったという報告もある
- 4. 調べられた世代と、いまの子どもたちは同じではない
- 5. 寿命を左右するものは、身長以外にもたくさんある
- 病気が背景にある低身長では、大切なのは「身長」より「その病気の管理」
- 病気の診断は、小児内分泌の外来で行うもの
- こんな変化があるときは、早めに小児科へ
- 低身長コンプレックスは必ず生じる?|心の面の研究は結果が分かれます
- 大人になったら実際どうなる?仕事・恋愛・体力について言えること、言えないこと
- 治療は「寿命のため」ではありません|成長期の伸びしろと、本人の納得のために
- 成長ホルモン治療は、寿命を延ばすための治療ではありません
- では、何のための治療か
- 心の面への効果も、確かなことは言えません
- 治療の効果は、個人差が非常に大きいものです
- 専門の外来に相談したほうがよいとき
- 低身長と大人・寿命についてよくある質問
- Q. 低身長だと、寿命は短くなりますか?
- Q. 低身長だと、必ず自信をなくしますか?
- Q. 遺伝で背が低いだけなら、心配しなくていいですか?
- Q. 大人になってから、成長ホルモン治療を受けられますか?
- Q. 治療をしなかったら、大人になって困りますか?
- Q. 何歳までに相談すればよいですか?
- Q. ネットで買える成長ホルモンの薬を使ってもよいですか?
- 「うちの子も治療できる?」と思われた方へ
- まとめ|「大人になって困るか」は、身長の数字だけでは決まりません
- 関連コラム
- 参考文献
「大人になったら困る?」と聞かれたとき、最初にお伝えしていること

外来で受ける質問は、大きく3つに分かれます。
身長が低いと、寿命に影響しますか?
子どもが、大人になってから自信をなくしたり、いやな思いをしたりしませんか?
いま何かしておかないと、あとで困りませんか?
1つ目は「健康や寿命」、2つ目は「心と暮らし」、3つ目は「治療の意味」の話です。この記事も、この順番で進めます。
先にお断りしておきます。医学の研究は、「この子はこうなります」と個人の未来を言い当てるものではなく、たくさんの人の平均をとったときの傾向を示すものです。そのため、この記事では「分かっていること」と「分かっていないこと」を分けて書きます。
また、低身長の定義や目安の数字は、こちらで詳しく解説しています。
▶ 低身長は何センチから?
▶ 低身長の子どもの特徴
【長田医師のコメント】「『寿命』で検索してしまったと、少し言いにくそうに話してくださる親御さんがいらっしゃいます。そう検索してしまうほど心配してこられたのは、お子さんをよく見てこられた証拠です。まずはそのことをお伝えしたうえで、分かっていることと、分かっていないことを分けてお話しします。」
身長と寿命の研究|大規模な調査で分かっていること

「身長」と「死亡」の関係は、世界中で大規模に調べられています。ここでは、代表的な3つの研究の要旨を紹介します。なお、いずれも大人の身長とその後の死亡を追跡した観察研究で、子どもの低身長そのものを調べたものではありません。
研究 | 対象 | 報告されていること(要旨) |
|---|---|---|
世界の追跡研究をまとめた解析(2012年) | 121の追跡研究、約109万人 | 身長が6.5cm高いごとの死亡のリスクは、全死亡で0.97倍(約3%低い)、血管の病気による死亡で0.94倍、がんによる死亡では1.04倍(約4%高い)。血管の病気では身長が低いほど死亡が多く、がんでは逆の向きだった |
日本人を対象にした調査(2018年) | 40〜69歳の約10.8万人 | 男性では、身長が高いほど脳血管の病気・呼吸器の病気による死亡が少なく、がんによる死亡は多いという結果。女性では脳血管の病気による死亡で、身長が高いほど少ない傾向 |
冠動脈疾患との関係をまとめた解析(2010年) | 52の研究、約301万人 | 身長の低いグループ(平均して160.5cm未満)は、高いグループ(平均して173.9cm超)と比べて、全死亡が約1.35倍、心血管の病気による死亡が約1.55倍。著者らは、低身長と心血管の病気の関係は「実際にあるように見える」としている |
この3つを並べると、次のことが分かります。
身長が低いことと、血管や心臓の病気による死亡の多さには、統計上の関連が繰り返し報告されています。「まったく関係がない」とは書けません
一方で、がんによる死亡は、身長が高いほうがむしろ多いという結果も、世界規模の解析と日本の調査の両方で出ています。「低いほど不利」と一方向にまとめられる話ではありません
いちばん大規模な解析でも、全死亡での差は身長6.5cmあたり3%ほどと、大きくはありません
日本の調査は、身長を自己申告で答えた成人が対象です。お子さんの身長を、そのまま当てはめて読むことはできません。
【長田医師のコメント】「論文の数字は、集団の平均の話です。診察室に入ってこられるのは、統計ではなく、一人のお子さんです。数字をお伝えするときは、その差がどのくらいの大きさなのかも、あわせてお伝えするようにしています。差が『ある』ことと、差が『大きい』ことは、別のことだからです。」
「低身長だから寿命が短い」と言い切れない理由

統計上の関連があっても、「身長が低いから、寿命が短くなる」とは言い切れません。理由を整理します。
1. 「関連」と「原因」は別のもの
観察研究は、ある特徴を持つ人たちを追跡して比べる方法です。そこで見えるのは「一緒に起こりやすい」という関係で、「身長が原因で起こる」という証明にはなりません。
2. 身長は「遺伝」と「幼いころの環境」が積み重なった結果
大人の身長は、遺伝と、幼いころの栄養や病気などの環境が合わさって決まります。研究者も、身長を「遺伝的な素因と、幼少期の経験が組み合わさった指標」と説明しています。つまり、身長の違いの背景にある何かが、健康に関係している可能性があります。そのため、身長そのものが原因なのか、身長にあらわれている別の要因なのかは、観察研究では区別できません。
3. 調べられる範囲で調整しても、関連が残ったという報告もある
正直にお伝えすると、世界規模の解析では、喫煙、肥満、血圧、コレステロール、糖尿病、飲酒、社会経済的な指標などで調整しても、関連は大きく変わらなかったと報告されています。この点は、「他の要因で説明がつく」とは書けない部分です。ただし、調整できない要因(幼少期の環境など)は残り、原因の特定には至っていません。
4. 調べられた世代と、いまの子どもたちは同じではない
世界規模の解析では、生まれ年が新しい世代ほど、大人の平均身長が高くなっていました。過去の世代で見られた傾向が、いまの子どもたちにそのまま当てはまるとは限りません。
5. 寿命を左右するものは、身長以外にもたくさんある
喫煙、食事、運動、体重、血圧の管理、定期的な健診など、お子さんが大人になってから自分で選べる部分が、健康には大きく関わります。身長は変えにくい特徴ですが、これらは変えていける部分です。
病気が背景にある低身長では、大切なのは「身長」より「その病気の管理」

低身長のなかには、背景に病気があるものがあります。この場合、将来の健康を左右するのは「身長が低いこと」よりも、その病気を、大人になってもきちんと診てもらい続けることだと考えられています。
低身長のタイプ | 将来について分かっていること |
|---|---|
成長ホルモン分泌不全性低身長症 | 子どものころの診断が大人になっても続くことがあり、成人期にあらためて評価します。成人期の成長ホルモンの補充は、体の組成、運動能力、骨の強さ、生活の質の面で利点があるとされ、リスクは低いと整理されています(米国内分泌学会の指針、2011年) |
下垂体の機能が低下している方(成人) | 死亡率が高いという報告が多い一方、その主な要因は、循環器の病気や、下垂体の病気の原因になった腫瘍などの背景の病気だと整理されています。原因となる病気が、死亡の最も重要な予測因子とされます |
ターナー症候群 | 英国の全国規模の調査(3,439人)で、一般より死亡率が高いと報告されています。その要因の中心は、大動脈などの循環器の病気です。国際的な指針では、子どもから成人まで多くの診療科で連携した診療が勧められています |
体質性低身長・家族性低身長など、背景に病気のない低身長 | ここまでの「身長と寿命」の一般的な研究の話が当てはまります。ただし、個人の予測にはなりません |
この内容は、驚かれるかもしれません。ただこれは、低身長そのものの影響ではなく、この病気が体のほかの部分(心臓や大血管など)にも関わることが背景にあります。だからこそ、成人になってからも定期的な診療を続けることが大切とされています。
▶ 成長ホルモン分泌不全性低身長症とは
▶ SGA性低身長症とは
▶ 低身長の原因と治療(男の子・女の子)
病気の診断は、小児内分泌の外来で行うもの
成長ホルモン分泌不全性低身長症などの診断には、成長ホルモンの負荷試験などの検査が必要です。これは、小児内分泌の外来がある病院で行う、保険診療の領域です。当院の精密身長検査は、手のレントゲンと採血のみで、成長ホルモンの負荷試験は行っていません。お子さんの受診先に迷う場合は、こちらもご覧ください。
▶ 子どもの身長は何科に相談する?
▶ 低身長の検査ガイド
こんな変化があるときは、早めに小児科へ
次のような様子があるときは、身長の問題とは別の病気が隠れていることもあるため、早めに小児科でご相談ください。
成長曲線の線が、それまでの傾きから急に寝てきた(伸びが急に鈍くなった)
頭痛が続く、視力や視野に違和感がある
水をたくさん飲み、尿の量も多い
体重も増えにくい、長く続く腹痛や下痢、いつも疲れやすいなど、体調全体がすぐれない
【長田医師のコメント】「お子さんの低身長の背景に病気があるかどうかは、身長の数字だけでは分かりません。成長曲線の形や、ほかの症状、検査の結果を合わせて見ていきます。もし病気が見つかった場合には、その病気に合った診療を、大人になってからも続けていくことが大切です。見つかったこと自体を、悪いことと受け止めなくて大丈夫です。」
低身長コンプレックスは必ず生じる?|心の面の研究は結果が分かれます

「背が低いと、いじめられたり、自信をなくしたりするのでは」という心配も、よく伺います。この点は、研究の結果が分かれています。
研究 | 報告されていること(要旨) |
|---|---|
心理面の研究をまとめたレビュー(2002年、2004年) | 子どもから大人まで、心理的な適応は、他の人とほとんど区別がつかないと報告。「低身長」という特徴だけでは、その人の心理面や生活の質を予測する材料としては弱いとしている |
生活の質を調べた系統的レビュー(2021年、41研究) | 子どもでは、生活の質が低いと示した研究が4つある一方、関連が見られなかった研究も3つ。成人の研究では、約半数で生活の質の低下、残りの約半数では関連なし |
結果が分かれる理由を検討したレビュー(2011年) | 研究ごとに、調べ方や対象者の選び方が異なるため、結果が食い違って見える。うまく適応する人もいれば、苦労する人もいる。心理面のリスクと守りになる要因のかみ合わせで、結果は人によってさまざま |
日本の外来での調査(2013年) | 治療を受けている子も受けていない子も、約9割が「毎日の生活で困っていない」と回答。教室でいじめられた経験は、3割弱。年齢が低い子、より背の低い子は、いじめられやすい傾向 |
「身長による偏見」を扱ったレビュー(2017年) | 背の低い子どもでは、年齢より幼く扱われる、からかい、いじめ、過保護、仲間外れなどが報告されている |
まとめると、次のようになります。
「低身長だと必ず自信を失う」とは言えません。心理面が他の人とほとんど変わらないという研究が、複数あります
一方で、「まったく影響しない」とも言えません。からかいやいじめが報告されており、生活の質が下がるとする研究もあります
結果が分かれるのは、研究の方法の違いに加え、お子さんによって環境や受け止め方がまったく異なるためです
こうした研究が示すのは「集団の傾向」です。お子さん本人が背の低さをどう感じているかは、論文からは分かりません。お子さん自身の言葉が、いちばん確かな手がかりになります。
【長田医師のコメント】「診察室で、お子さんご本人が背の低さをまったく気にしていないことがあります。反対に、親御さんが思っている以上に気にしているお子さんもいます。どちらの場合も、まずはお子さん本人の言葉を聞くことから始めます。」
大人になったら実際どうなる?仕事・恋愛・体力について言えること、言えないこと

「大人になったらどうなるのか」という質問は、ネット上に不確かな情報があふれやすい分野です。ここでは、根拠を示せることと、示せないことを分けて書きます。
テーマ | 言えること | 言えないこと・確認できていないこと |
|---|---|---|
健康・寿命 | 統計上の関連が報告されているが、死因によって向きが逆で、原因は特定されていない | 「低身長だから寿命が短い」という断定 |
心の面・生活の質 | 研究結果は分かれる。成人では約半数で低下、約半数で関連なし | 「低身長なら必ず自信を失う」という断定 |
仕事 | 身長の基準が設けられている職業がある | 就職や収入への影響について、確かな根拠をこの記事では示せない |
結婚・恋愛 | — | 確かな根拠をこの記事では示せない |
体力 | — | 身長そのものが体力を決めるという根拠は示せない |
仕事・恋愛・体力は、根拠が弱いまま「有利」「不利」と書くと不安をあおることになるため、確かな根拠を示せないと正直に書きました。身長の基準がある職業については、別のコラムで整理しています。
▶ 身長制限のある職業
▶ 背が高いことのメリット・デメリット
日常生活では、高い棚に手が届きにくいなど、小さな不便を感じる方はいらっしゃいます。それが「困りごと」になるかどうかは、人や環境によって異なります。
お子さんが大人になったときに困るかどうかは、身長の数字だけでは決まらない、というのが研究に共通した見方です。
【長田医師のコメント】「『大人になって困りますか』と聞かれたとき、私は『身長の数字だけでは決まりません』とお答えしています。慰めのために言っているのではありません。研究でも、身長だけで、その人の心理面や暮らしの困りごとを予測するのは難しいと考えられているからです。」
治療は「寿命のため」ではありません|成長期の伸びしろと、本人の納得のために

ここまで読んで、「では、治療をする意味は何なのか」と思われた方もいらっしゃると思います。正直にお答えします。
成長ホルモン治療は、寿命を延ばすための治療ではありません
成長ホルモン治療が、寿命を延ばすことを示す確かな根拠は、私が確認できた範囲ではありません。成長ホルモンで治療された方の死亡率については、研究の数が限られていて、研究の設計にも限界があるため、解釈には注意が必要とされています。当院も、「寿命のために」とは申し上げません。
では、何のための治療か
身長が伸びるのは、骨の両端にある骨端線が開いている間だけです。骨端線が閉じると、成長ホルモンを補っても、身長はそれ以上伸びません。つまり、成長期には限りがあります。治療の意味は、この限られた成長期の伸びしろを、どう使うかを、本人と一緒に考えることにあります。
いま、伸びしろがどれくらい残っているのかを知る(手のレントゲンで骨年齢を見ます)
伸びしろが残っている間に、治療を受ける・受けない、いずれかを本人が納得して選ぶ
治療を受ける場合は、効果と副作用の両方を知ったうえで判断する
治療を受けない選択も、間違いではありません。大切なのは、どちらを選んでも、お子さん本人と親御さんが納得できていることです。
▶ 成長ホルモン治療のガイド
▶ 成長ホルモンでどれくらい伸びる?
▶ 低身長を治療しなかったらどうなる?
▶ メッシの身長と成長ホルモン
心の面への効果も、確かなことは言えません
「自信がつくなら」と考える方もいます。ここも研究は分かれます。原因の特定できない低身長の男の子を対象にした、偽薬との比較試験(60人)では、成長ホルモンで治療を受けた子どもで、身長に対する認識や自尊心の指標が改善したと報告されています。一方で、生活の質の質問票や行動の評価には変化がありませんでした。別の研究では、治療を受けたグループで、一部の項目が悪化したという報告もあります。総説では、「低身長と心の健康の関係の根拠は乏しく、成長ホルモンで改善できるという根拠も少ない」とされています。
治療の効果は、個人差が非常に大きいものです
当院では、「何センチ伸びます」というお約束はできません。伸びの幅は、骨端線がどれくらい残っているか、治療を始めた年齢、体質、生活習慣などによって変わります。副作用も、ゼロではありません。注射部位の赤みや腫れが比較的多く、まれに頭痛、関節や筋肉の痛み、むくみが出ることがあります。ごくまれに、血糖値への影響や、背骨の側弯が進むことなどが報告されています。定期的な診察と血液検査で確認します。
▶ 成長ホルモン治療の副作用の確率
▶ 成長ホルモン治療はいつまで続ける?やめどき
ネットで個人輸入した薬を、親御さんの判断でお子さんに使うことは、絶対に避けてください。骨端線を逆に早く閉じさせて、身長を止めてしまう危険があります。
【長田医師のコメント】「治療のご相談では、『やるべきか、やらないべきか』の二択で悩まれる親御さんが多くいらっしゃいます。私は、答えを決めることよりも、いま伸びしろがどれくらい残っているのかを一緒に確認して、お子さん本人が納得できる形を探すお手伝いをしたいと考えています。」
専門の外来に相談したほうがよいとき
当院の低身長治療センターでは、手のレントゲンと採血による「精密身長検査」で、骨年齢(骨端線がどのくらい残っているか)を確認しています。お近くの提携クリニックで受けられ、結果は当院のオンライン診察でご説明し、そのうえで今後の方針をご相談します。この検査と治療は自費診療です。効果には個人差があり、すべての方が治療の対象となるわけではありません。「病気とまでは言えないが、もう少し伸びてほしい」というお子さんも、相談の対象です。ご相談は、当院のLINEやお問い合わせフォームから承っています。
▶ 骨年齢検査はどこで受ける?費用は?
▶ 中学生からの成長ホルモン治療は間に合う?
低身長と大人・寿命についてよくある質問

Q. 低身長だと、寿命は短くなりますか?
低身長そのものが寿命を縮めると結論づけられているわけではありません。大規模な観察研究では、身長と死亡に統計上の関連が報告されていますが、死因によって向きが逆になり、原因が身長なのか、身長にあらわれる別の要因なのかは区別できていません。また、集団の平均の話であり、お子さん一人の寿命を予測するものではありません。
Q. 低身長だと、必ず自信をなくしますか?
いいえ、必ずではありません。心理面が他の人とほとんど変わらないとする研究が複数ある一方、生活の質の低下やいじめを報告する研究もあり、結果が分かれています。受け止め方には個人差が大きいため、本人の言葉が大切です。
Q. 遺伝で背が低いだけなら、心配しなくていいですか?
背景に病気のない体質的な低身長であれば、健康面は、身長にかかわらず、生活習慣や健診といった一般的な考え方が基本になります。ただし、「遺伝だろう」と決めつけず、成長曲線が急に寝てきていないかは、一度確認しておくと安心です。
Q. 大人になってから、成長ホルモン治療を受けられますか?
成人期にも成長ホルモンの補充が行われる場合がありますが、これは「成長ホルモン分泌不全症」と診断された成人が対象で、身長を伸ばすための治療ではありません。診断には検査が必要で、内分泌を専門とする外来で相談します。
Q. 治療をしなかったら、大人になって困りますか?
困るかどうかは、身長の数字だけでは決まりません。研究でも、身長だけで暮らしの困りごとを予測するのは難しいとされています。治療をするかどうかは、お子さん本人の気持ちと、ご家庭の考え方で決めていただくものです。
Q. 何歳までに相談すればよいですか?
治療の対象になり得るのは、6〜15歳が目安です。ただし、「15歳を過ぎたらもう無理」ということではなく、骨端線が残っていれば可能性はあります。年齢だけで判断せず、いまの骨端線の状態を確認します。
Q. ネットで買える成長ホルモンの薬を使ってもよいですか?
おすすめしません。個人輸入した薬を、親御さんの判断で使うと、骨端線が早く閉じて、身長が止まってしまう危険があります。医療機関にご相談ください。
【長田医師のコメント】「お子さんの低身長について、ご自分を責めてしまう親御さんもいらっしゃいます。低身長は、親御さんの育て方や食事のせいで起こるものではありません。遺伝や体質の影響が大きいことが多く、気づかれたタイミングも、それぞれのご家庭にとって自然なものです。責める必要はありません。」
「うちの子も治療できる?」と思われた方へ
子どもの身長について、ほかの記事もお探しの方は 子どもの身長コラム テーマ別インデックス(134本) からどうぞ。
まとめ|「大人になって困るか」は、身長の数字だけでは決まりません

身長と寿命の研究では、血管や心臓の病気による死亡は身長が低いほど多く、がんによる死亡は逆という結果が報告されている。低身長そのものが寿命を縮めると結論づけられてはいない
研究の数字は集団の平均で、個人の寿命を予測するものではない。喫煙・食事・運動・健診など、大人になってから変えられる要素も大きい
成長ホルモン分泌不全性低身長症やターナー症候群など、病気が背景にある場合は、その病気の管理が大切
心の面の研究は結果が分かれる。必ず自信を失うとは言えず、まったく影響しないとも言えない。お子さん自身の言葉が、いちばんの手がかり
仕事・恋愛・体力について、確かな根拠は示せない。「有利」「不利」と決めつけない
治療は寿命のためではなく、成長期の伸びしろと本人の納得のため。効果には個人差があり、何センチと約束はできない。治療しない選択も間違いではない
今日できることは1つだけ。母子健康手帳や学校の健康診断の記録から、身長を成長曲線に点で打ってみる。線の傾きが、いまの様子を教えてくれます
関連コラム
参考文献
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医師監修記事

長田 直祥
(おさだ なおき)
シンセルクリニック 低身長治療センター医師
大阪医科薬科大学卒業。豊田厚生病院、中東遠総合医療センター、国立長寿医療研究センター、名古屋大学整形外科などで整形外科医としての経験を積み、現在はシンセルクリニック低身長治療センターで、お子さまの成長・低身長治療に携わる。日本整形外科学会所属。
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大阪医科薬科大学卒業。豊田厚生病院、中東遠総合医療センター、国立長寿医療研究センター、名古屋大学整形外科などで整形外科医としての経験を積み、現在はシンセルクリニック低身長治療センターで、お子さまの成長・低身長治療に携わる。日本整形外科学会所属。
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