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【医師監修】椎間板ヘルニアの治療法|保存療法・注射・手術・再生医療の違い
「椎間板ヘルニアと言われた。薬と湿布で様子を見るように言われたけれど、これでよいのだろうか」
「手術を勧められて迷っている。手術以外に、どんな治療があるのか知りたい」
ご相談では、「ヘルニアの治療には、どんな種類がありますか」「どの順番で考えればよいのですか」と聞かれることがよくあります。実は、椎間板ヘルニアは、多くの場合、まず手術以外の方法(保存療法)で経過をみます。一方で、排尿や排便の異常、急に進む足の脱力があるときは、早く手術を検討する必要があります。
この記事では、シンセルクリニック総院長で整形外科の医師である武内晋司郎が、椎間板ヘルニアの治療法を、保存療法・注射・手術・再生医療の順に解説します。手術が必要なサインと、時期別の考え方もまとめます。
この記事の結論
椎間板ヘルニアの治療は大きく4つ(保存療法・注射・手術・再生医療)。症状の強さ、続いている期間、神経の障害の有無で、順番を考える
多くはまず保存療法で経過をみる。11の研究をまとめた報告では、飛び出した椎間板が自然に小さくなった人は約3人に2人だった
排尿・排便の異常、急に進む足の脱力は、手術を急いで検討するサイン。様子を見ずに、その日のうちに受診する
手術は大切な選択肢。ある臨床試験では、早く手術を受けた人のほうが痛みが早く軽くなったが、1年後の回復はどちらも同じくらいだった
再生医療(幹細胞の点滴)は、相談できる選択肢のひとつ。自由診療で、対象になるかは診察で判断する
- この記事の結論
- 椎間板ヘルニアの治療法は4つ|全体像と考える順番
- 治療の前に知っておきたいこと|ヘルニアは自然に小さくなることが多い
- ヘルニアで出る症状|多くは片側の足に出る
- 診察と検査|レントゲンには椎間板が写らない
- MRIの画像と、痛みの強さは一致しないことがある
- 保存療法|薬・コルセット・リハビリと日常生活の工夫
- 薬|痛み止めと、神経の痛みの薬
- コルセット・安静・日常生活の工夫
- リハビリ|痛みが落ち着いてから、体を動かす
- 温熱・電気・牽引などの物理療法
- 注射による治療|神経ブロック・硬膜外ブロック・椎間板の中への注射
- ブロック注射でわかっていること
- 椎間板の中に入れる酵素の注射(コンドリアーゼ)
- 手術が必要なサイン|様子を見ずに受診したい症状
- 手術による治療|術式の種類と、研究でわかっていること
- 主な術式
- 手術を受けた人と、受けなかった人は、どう違ったか
- 手術以外の選択肢のひとつ|再生医療(幹細胞治療)
- 再生医療(幹細胞治療)という選択肢
- どの治療をいつ選ぶか|発症からの時期別の目安と、相談のしかた
- 治療のあとに大切なこと
- ヘルニアになりやすい要因と、予防のポイント
- どこに相談すればよい?
- 首(頚椎)の椎間板ヘルニアの場合は何が違う?
- 椎間板ヘルニアの治療についてよくある質問
- Q. 椎間板ヘルニアは、手術をしなくても自然によくなりますか?
- Q. 保存療法は、どのくらいの期間続けますか?
- Q. 手術を受けないと、悪化してしまいますか?
- Q. 手術をしたら、ヘルニアは再発しませんか?
- Q. ブロック注射は、癖になったり、副作用が心配ではありませんか?
- Q. 再生医療は、保険で受けられますか?
- まとめ|治療は4つ。最初に確かめるのは「急ぐサイン」の有無
- 関連コラム
- 参考文献
椎間板ヘルニアの治療法は4つ|全体像と考える順番

椎間板(ついかんばん)は、背骨の骨と骨の間にある、クッションの役割をする組織です。中心のやわらかい部分(髄核)が外に飛び出し、近くの神経を圧迫して、腰や足の痛み・しびれを起こす状態が椎間板ヘルニアです。治療法は、体への負担が小さいものから順に、次の4つに分けると整理しやすくなります。
▶ 腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルを4段階で解説

分類 | 主な内容 | ねらい | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
保存療法 | 薬、コルセット、リハビリ、日常生活の工夫 | 痛みをしずめ、神経の炎症が落ち着くのを待つ | 多くの方の最初の選択 |
注射 | 神経ブロック、硬膜外ブロック、椎間板の中への酵素注射 | 強い痛みをやわらげる。飛び出した部分を小さくする | 薬で痛みが残るとき |
手術 | 飛び出した椎間板を取り除く | 神経への圧迫を直接取り除く | 神経の障害が強いとき、生活が難しいとき |
再生医療 | ご自身の脂肪から培養した幹細胞の点滴 | 傷んだ組織の修復と炎症に働きかけることを目指す | 保存療法を続けても痛みが残り、手術は避けたいとき(自由診療) |
4つは、組み合わせたり、順番に移ったりします。いちばん大切なのは、今の状態が「急いで手術を考える状態」かどうかを最初に確かめることです。
個別のテーマは、それぞれの記事で詳しく解説しています。
▶ 椎間板ヘルニアの初期症状チェック
▶ 腰痛の原因を場所・動作・病名から探すガイド
治療の前に知っておきたいこと|ヘルニアは自然に小さくなることが多い

「ヘルニアと言われた=手術」と思われている方は、少なくありません。しかし、飛び出した椎間板は、時間とともに自然に小さくなることが知られています。体の免疫の細胞が、飛び出した部分を処理して吸収するためと考えられています。
保存療法で経過をみた腰椎椎間板ヘルニアで、自然な縮小が起きた割合を調べた報告があります。11の観察研究をまとめた結果、約67%(3人に2人)で縮小が確認されました。ただし、観察研究のまとめで、研究の数も多くありません。「珍しくない」という目安として受け止めてください。
ヘルニアで出る症状|多くは片側の足に出る
代表的な症状は、お尻から足にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛)で、多くは片側の足に出ます。咳やくしゃみで強まることがあります。飛び出しやすいのは腰の下のほう(4番と5番の間、5番と仙骨の間)で、つま先が上がりにくいといった脱力が出ることもあります。重いときは尿や便が出にくくなります(後の「手術が必要なサイン」で解説します)。
診察と検査|レントゲンには椎間板が写らない
診察では、足の感覚・筋力・反射を調べる神経の診察に加え、仰向けで足をまっすぐ持ち上げて痛みが出るかを見る下肢伸展挙上テストや、うつぶせで膝を曲げて太ももの前の痛みを見る大腿神経伸展テストを行うことがあります。レントゲンでは椎間板そのものは写らないため、神経と椎間板を見られるMRIが中心です。
▶ MRI検査を受けるときに気をつけたいこと
MRIの画像と、痛みの強さは一致しないことがある
もうひとつ知っておきたいのは、画像に写るヘルニアの大きさと、痛みの強さは、必ずしも結びつかないことです。痛みのない人3,110人を調べた33の研究のまとめでは、椎間板の突出が20歳で29%、80歳で43%の人に見つかりました。治療は、画像だけでなく、痛む場所、足の力、しびれの範囲といった診察の所見を合わせて決めます。
▶ MRI検査とは?レントゲンとの違い
【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『MRIで大きなヘルニアが見つかったので、もう手術しかないのでしょうか』と聞くことがよくあります。画像だけで手術が決まるわけではありません。足の力、排尿の状態、痛みの経過を見て、急ぐ状態かどうかを整理するところから始めます。」
保存療法|薬・コルセット・リハビリと日常生活の工夫

保存療法は、手術をしない治療の総称です。北米脊椎学会(NASS)の診療ガイドラインでも、手術以外の方法が整理されています。
薬|痛み止めと、神経の痛みの薬
薬の種類 | 役割 | ひとこと |
|---|---|---|
消炎鎮痛薬(内服・湿布・坐薬) | 炎症をおさえて、痛みをやわらげる | 胃腸や腎臓への影響があるため、期間は医師と相談 |
神経の痛みの薬(プレガバリンなど) | しびれや、焼けるような痛みをやわらげる | ふらつき、眠気が出ることがある |
筋肉をゆるめる薬 | こわばった筋肉の緊張をやわらげる | 眠気が出ることがある |
痛み止めが効きにくいときは、痛みのタイプが「神経の痛み」に近いことがあります。
▶ 痛み止めが効きにくい痛みの種類
飲み薬のステロイドについては、足の急な痛み(発症3か月以内)の269人で調べたアメリカの臨床試験があります。ステロイドを15日間飲んだ群は、生活の不自由さの点数がわずかに多く改善(3週後6.4点、1年後7.4点)しましたが、足の痛みの強さには差がありませんでした。3週後の副作用は、ステロイド群で約半数(49.2%)、にせの薬の群で24%でした。
コルセット・安静・日常生活の工夫
痛みが強い間は、コルセットで腰を支えると楽になることがあります。ただし、長く使うと筋力が落ちることがあるため、期間は医師に確認してください。安静も、痛みが強い数日は必要ですが、寝たきりで過ごすより、痛みの許す範囲で動くほうがよいとされています。前かがみ、重い物を持つ動作、長時間の座りっぱなしは、痛みを強めやすい動作です。
▶ 椎間板ヘルニアとコルセット
▶ 椎間板ヘルニアの「やってはいけないこと」完全ガイド
▶ 椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法
リハビリ|痛みが落ち着いてから、体を動かす
痛みが落ち着いたら、腰を支える筋肉(体幹の筋肉)を使えるようにするリハビリに移ります。理学療法士の指導のもとで、姿勢や動き方を整え、再発しにくい体の使い方を身につけます。痛みの出る動きは避け、「翌日に痛みが残らない範囲」で行うのが目安です。
▶ 椎間板ヘルニアのストレッチ完全ガイド
温熱・電気・牽引などの物理療法
リハビリ室では、温める、電気を流す、腰を引っ張る(牽引)といった物理療法も行われます。痛みを一時的にやわらげて動きやすくするための補助で、飛び出したヘルニアを引っ込める治療ではありません。牽引については、坐骨神経痛の有無を問わず腰痛を対象にした32の臨床試験(2,762人)をまとめたCochraneのレビューで、にせの牽引や何もしない場合と比べて、痛みや生活の不自由さにほとんど差がないとされています。
【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『安静にしていないと悪化しそうで、ずっと寝ていました』と聞くことがあります。痛みが強い最初の数日は休んでかまいませんが、長く寝たきりになると、筋力が落ちて回復が遅れることがあります。痛みの許す範囲で、少しずつ動く。」
注射による治療|神経ブロック・硬膜外ブロック・椎間板の中への注射

薬を飲んでも痛みが残るとき、注射が選択肢になります。
注射の種類 | 入れる場所 | ねらい | 知っておきたい点 |
|---|---|---|---|
神経根ブロック | 圧迫されている神経のまわり | 痛みの悪循環を断つ。痛みの原因の神経を確かめる役割もある | 効果の長さには個人差がある |
硬膜外ブロック | 神経を包む膜の外側 | 神経のまわりの炎症をおさえる | 効果は短期間のことが多い |
椎間板内注射(酵素) | 椎間板の中 | 髄核の水分を保つ成分を分解し、圧迫を減らす | 適した形のヘルニアに限られる |

ブロック注射でわかっていること
ステロイドを神経のまわりに入れる硬膜外注射を、にせの注射と比べた試験のまとめ(23の試験)があります。足の痛みと生活の不自由さは、短期間(2週間を超えて3か月以内)では小さいながら有意に改善しましたが、12か月以降の効果は小さく、統計的にも有意ではありませんでした。ブロック注射は、痛みを一時的にしずめ、リハビリを進めやすくする手段です。
▶ ブロック注射は痛い?費用・効果・副作用
▶ ブロック注射が効かない3つの理由とやめ時
椎間板の中に入れる酵素の注射(コンドリアーゼ)
日本では2018年に、腰椎椎間板ヘルニアで足に痛みがある方への、椎間板の中に入れる酵素の注射(コンドリアーゼ)が承認されました。アメリカの第3相試験(352人)では、13週後の足の痛みの改善が、注射群で41.7、にせの注射の群で34.2で、その差は有意でした。52週後の差は、有意とまでは言えませんでした。有害事象は注射群で多く(71.9%、にせの注射の群は60.3%)ありました。
この注射は、すべてのヘルニアが対象ではなく、飛び出した椎間板が、線維輪や靭帯の内側にとどまっているタイプなどに限られます。受けられるかどうかは、MRIと診察で判断されます。
流れは、手術室などで局所麻酔をして、レントゲンの透視で位置を確かめながら椎間板の中に針を刺し、薬を注入します。副作用を確かめるため、短期の入院で行う施設が多くなっています。注意点は、薬に対するアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こりうることと、再投与の安全性が確かめられていないため、原則として1回きりの治療とされていることです。日本の病院で行われた100人の振り返りの研究では、87人(87%)で足の痛みの改善が見られ、5人が後に手術を受けました。この研究では、アナフィラキシーなどの重い合併症は報告されていません。
【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『ブロック注射をしたら楽になったのに、数日でまた痛くなった』と聞くことがあります。注射は、痛みをしずめて、動ける時間をつくるための手段です。その間に、姿勢や筋肉を整えていくことが大切です。」
手術が必要なサイン|様子を見ずに受診したい症状

ここまでは保存療法の話でした。しかし、次のようなときは、保存療法を続けるのではなく、早く手術を含めて検討する必要があります。
サイン | 考えられること | 受診の目安 |
|---|---|---|
尿が出にくい、漏れる、便が出にくい、便意がわからない。股のあたりの感覚が鈍い | 神経の束(馬尾)が強く圧迫されている状態(馬尾症候群)の可能性 | その日のうちに受診。夜間でも救急へ |
足首が上がらない、つま先が引っかかる、足に力が入らない。脱力が急に進んでいる | 神経の障害が進んでいる可能性(下垂足など) | 数日以内に受診(進むときはその日のうちに) |
両足にしびれや脱力が出ている | 中央に大きく飛び出している可能性 | 早めに受診 |
痛みが強く、眠れない。仕事や家事がほとんどできない | 保存療法だけでは、生活を保ちにくい状態 | 早めに受診し、注射や手術を相談 |
保存療法を数週間〜3か月ほど続けても、足の痛みが変わらない | 手術を含めた選択肢を相談する時期 | 整形外科で再評価 |
とくに重要なのは、排尿・排便の異常(馬尾症候群)です。腰椎椎間板ヘルニアによる馬尾症候群の手術成績を調べた報告(322人)では、発症から48時間以内に神経の圧迫を取り除いた人は、48時間を過ぎた人に比べて、感覚や筋力、排尿・排便の機能の回復が有意によかったとされています。気づいたその日のうちに、医療機関へ連絡してください。
▶ 下垂足(足首が上がらない状態)とは?原因・装具・リハビリ
▶ 椎間板ヘルニアで激痛・歩けないときの緊急度チェック

一方で、痛みが強いだけで、足の力や排尿が保たれているなら、すぐに手術になるとは限りません。
【武内院長のコメント】
「相談に来られる方に、まずお聞きするのは、『おしっこの出方は、いつもと変わりありませんか』『つま先は上がりますか』の2つです。痛みが強くても、この2つが保たれていれば、慌てて決めなくてよいことが多いのです。反対に、この2つに変化があるときは、痛みの強さにかかわらず、早く医療機関で診てもらう必要があります。」
手術による治療|術式の種類と、研究でわかっていること

手術は、神経を圧迫している椎間板を、直接取り除く方法です。必要な状態では、迷わず選ぶべき大切な選択肢です。納得して選べるように、一般的な内容を整理します。
先日、こんなご相談をいただきました。腰や背骨の手術を勧められた方からです。「手術しても完璧には治らない」と聞いて、歩ける程度の痛みやしびれで手術はしたくない、と話されていました。「手術して痛みが変わらなかったら、やる意味がない」とも。手術のあとに何が待っているのか見えないのは、不安ですよね。ここでは、納得して選べるように、手術の一般的な内容を整理します。
主な術式
術式 | 方法 | 特徴 |
|---|---|---|
顕微鏡下椎間板摘出術 | 背中を小さく切開し、顕微鏡で拡大して、圧迫している椎間板を取り除く | 長く行われてきた標準的な方法 |
内視鏡下椎間板摘出術 | 細い筒や内視鏡を入れて、画面を見ながら取り除く。数ミリの穴から行う方法では、局所麻酔で行うこともある | 切開が小さい。ヘルニアの位置や形により適さない場合もあり、行える施設は限られる |
レーザーなどによる椎間板の減圧 | 針を刺して、椎間板の中の圧力を下げる | 傷が小さい。飛び出しが大きい重いヘルニアには向かないことが多く、実施する施設は限られる |
固定術 | 背骨をネジなどで固定する | ヘルニアだけで行うことは少なく、背骨の不安定さがある場合に検討される |
入院は数日から2週間ほどのことが多く、術式や病院で異なります。顕微鏡を使う手術と、小さく行う手術を比べたCochraneのまとめ(11の試験・1,172人)では、脚の痛みの差は小さく、臨床的に意味のある差とは言えない程度でした。ドイツの臨床試験(178人)でも、内視鏡と顕微鏡の手術で2年後の臨床成績は同等で、術後に足の痛みがなくなった人は82%、再発率は6.2%でした。術式は、ヘルニアの位置や大きさ、ご本人の状況で選びます。
手術を受けた人と、受けなかった人は、どう違ったか
研究 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
オランダの臨床試験(NEJM・2007) | 6〜12週続く強い坐骨神経痛の283人。早期手術か、保存療法を続けるか | 早期手術のほうが痛みが早く軽くなったが、1年後に回復したと感じる確率は、どちらも95%。保存療法の群の39%も、最終的に手術を受けた |
同じ試験の2年後(BMJ・2008) | 同じ283人 | 早期手術の短期的な利点は、6か月にはなくなった。保存療法の群の44%が、最終的に手術を受けた |
アメリカの臨床試験(SPORT・2006) | 6週間以上症状が続く501人 | どちらの群も2年間で大きく改善。途中で治療を変えた人が多く、優劣は結論できなかった |
24の臨床試験のまとめ(BMJ・2023) | 手術と非手術の比較 | 手術で足の痛みは短期的に軽くなったが、差は時間とともに小さくなった。証拠の確かさは低い〜非常に低い |
まとめると、手術は、痛みを早く軽くする可能性がある治療です。一方で、手術をしなかった方も、長い目で見ると多くが回復していくという研究結果があります。早く楽になりたい気持ちと、手術のリスク(感染、神経や硬膜の損傷、再発など)、費用、入院の負担を、天秤にかけて決めることになります。ご本人の状況と価値観で選べる選択肢です。
▶ 椎間板ヘルニアで仕事を休む期間の目安
【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『手術をしたら、もう元通りになると思っていた』『手術を受けないと、一生痛いままだと思った』という、両方の声を聞きます。どちらも、実際とは少し違います。手術は、必要な方にとって大切な選択肢ですし、受けなくても落ち着いていく方もいます。」
手術以外の選択肢のひとつ|再生医療(幹細胞治療)

保存療法を続けても痛みやしびれが残り、手術はできれば避けたいと考える方は、少なくありません。
再生医療(幹細胞治療)という選択肢
腰や脊椎の病気に対する再生医療は、ご自身の脂肪から取り出して培養した幹細胞を、点滴で体に戻す治療です。幹細胞は「体の修復を担当する細胞」で、傷んだ組織の修復に働きかけ、炎症をしずめることを目指します。流れは、まずお腹などから脂肪を少量採取します(局所麻酔・日帰り)。そのあと約4〜6週間かけて幹細胞を培養し、点滴で投与します。ご自身の細胞・血液を用いるため、拒絶反応のリスクはほぼありません。
ただし、自由診療(保険外)であり、効果には個人差があります。ヘルニアで対象になるかどうかは、診察で判断します。飛び出した椎間板を物理的に取り除く治療ではないため、排尿・排便の異常や、急に進む脱力があるときは、先に手術を含めた別の検査と治療が必要です。
研究の状況も、正直にお伝えします。椎間板の傷みによる腰痛に対する間葉系幹細胞の治療を調べた9つの研究(245人)のまとめでは、痛みと生活の不自由さの点数が改善し、治療に関連した重い副作用はありませんでした。ただし、結果のばらつきが大きく、小規模な研究が中心です。別のレビューは、人での使用を支える証拠は現時点では十分でないとまとめています。なお、これらの研究の多くは椎間板の中への注射で、点滴とは投与の方法が異なります。再生医療は研究が進んでいる途中の治療です。当院では、期待できることと、まだわかっていないことの両方を、診察でご説明しています。
▶ 脊柱管狭窄症の再生医療とは
▶ 椎間板ヘルニアの再生医療について(治療ページ)
【武内院長のコメント】
「手術を勧められて迷っている、できれば避けたいという相談はとても多いです。手術が必要な状態もありますし、そうでない場合もあります。再生医療は、すべての方に勧められる治療ではありません。まずは選択肢を知ってから、ゆっくり考えてください。」
どの治療をいつ選ぶか|発症からの時期別の目安と、相談のしかた

一般的な目安で、実際の判断は診察と検査をふまえて行います。
時期・状態 | 考え方 | 主な選択肢 |
|---|---|---|
発症〜約6週間 | 神経の障害がなければ、保存療法で経過をみることが多い時期 | 薬、コルセット、日常生活の工夫。痛みが強ければ注射 |
約6週間〜3か月 | 痛みが続くかを見きわめる時期。臨床試験でも、この時期の方が手術を検討する対象とされた | 注射、リハビリ。手術の相談を始めてよい |
3か月以上 | 保存療法で足の痛みが変わらず、生活に支障が大きい | 手術、再生医療を含めて相談 |
いつでも | 排尿・排便の異常、急に進む脱力がある | その日のうちに受診 |
早く受けるか、待つかは、仕事や子育てなどの事情に合わせて、医師と話し合ってください。
▶ 脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアの違い
治療のあとに大切なこと
どの治療でも、再発を完全に防ぐ方法はありません。重い物は膝を曲げて体に近づけて持つ、同じ姿勢を長く続けない、腰を支える筋肉を痛みのない範囲で使い続けることが、負担を減らす助けになります。
ヘルニアになりやすい要因と、予防のポイント
椎間板の傷みは若いころから少しずつ進み、そこに重い物を持つ、中腰、長時間の同じ姿勢といった負担が重なって起こります。椎間板の傷みやヘルニアの危険因子を調べた111の研究のまとめでは、喫煙(オッズ比3.8)、家族に同じ病気がある(同4.0)、体重が重い(BMIが高い・同2.77)などが挙がりました。生活の中で変えられるのは、禁煙、体重、体の使い方です。座り方も椎間板の負担を左右します。
▶ 腰痛の座り方|椅子・床・車で腰に負担をかけない姿勢と注意点
どこに相談すればよい?
まずは整形外科を受診してください。診察とMRIで、ヘルニアの位置と神経の障害の程度を確認できます。迷うときは、別の医師に意見を聞く(セカンドオピニオン)ことも大切です。
当院は、手術や保険診療を行わず、再生医療だけを行うクリニックです。そのため手術はできませんが、現在の状態の整理、日常生活での工夫、再生医療が選択肢になるかどうかのご相談をお受けしています。手術が必要な状態が疑われるときは、手術を行う医療機関への受診をおすすめします。
▶ ご予約・ご相談のご案内
【武内院長のコメント】
「相談に来られる方は、『何が正しい治療なのか分からず、情報を集めるほど不安になる』とおっしゃいます。治療に1つの正解があるのではなく、時期と状態によって、選べるものが変わります。急ぐサインがないかを確かめたうえで、気持ちの整理をする時間をとってください。」
首(頚椎)の椎間板ヘルニアの場合は何が違う?

椎間板ヘルニアは、腰だけでなく首(頚椎)にも起こり、首から肩、腕、手にかけて痛みやしびれが出ます。治療の基本の流れは、腰と同じです。
▶ 頸椎椎間板ヘルニアとは?首の痛み・原因・症状
大きく違うのは、首の中を通る脊髄(せきずい)が圧迫される場合があることです。手の細かい動作がしにくい(ボタンをとめにくい、箸が使いにくい)、歩くときにふらつく、両手や両足にしびれが広がる、といった症状があるときは、早めに整形外科を受診してください。再生医療が対象になるかどうかは、首でも診察で判断します。
椎間板ヘルニアの治療についてよくある質問

Q. 椎間板ヘルニアは、手術をしなくても自然によくなりますか?
珍しくありません。保存療法で経過をみた人をまとめた報告では、約3人に2人で縮小が確認されています。ただし、すべての方ではなく、時間もかかります。
Q. 保存療法は、どのくらいの期間続けますか?
決まった期間はありません。痛みが少しずつ軽くなっているなら、続ける価値があります。数週間〜3か月ほど続けても足の痛みが変わらないときは、方針を相談する時期です。
Q. 手術を受けないと、悪化してしまいますか?
排尿・排便の異常や、急に進む脱力がなければ、手術をせずに経過をみることは、よく行われています。足の力が落ちる、しびれが広がるといった変化があれば、早めに受診してください。
Q. 手術をしたら、ヘルニアは再発しませんか?
再発することはあります。内視鏡と顕微鏡の手術を比べたドイツの試験では、再発率は6.2%でした。
Q. ブロック注射は、癖になったり、副作用が心配ではありませんか?
ブロック注射は、神経のまわりに局所麻酔薬(ステロイドを加えることもあります)を入れる治療で、依存になるものではありません。ただし、まれに感染や出血などの合併症があり、ステロイドは回数が多いと体への影響も考えます。
Q. 再生医療は、保険で受けられますか?
当院の再生医療(幹細胞治療)は、自由診療(保険外)です。効果には個人差があり、対象になるかどうかは診察で判断します。費用や流れは、お問い合わせください。
まとめ|治療は4つ。最初に確かめるのは「急ぐサイン」の有無

椎間板ヘルニアの治療は、保存療法・注射・手術・再生医療の4つ。組み合わせたり、順番に移ったりして考える
飛び出した椎間板は、自然に小さくなることも多い(約3人に2人)。画像の大きさと痛みの強さは、一致しないことがある
保存療法は、薬・コルセット・リハビリ・日常生活の工夫。痛みが残るときは注射を加える
排尿・排便の異常、急に進む足の脱力は、早く手術を含めて検討するサイン。気づいたその日のうちに受診する
手術は大切な選択肢。早く受けると痛みは早く軽くなるが、1年後の回復は、受けなかった人とも同じくらいという臨床試験がある
再生医療(幹細胞の点滴)は、相談できる選択肢のひとつ。自由診療で、効果には個人差があり、対象になるかは診察で判断する
膝・股関節・腰の痛みは、互いに影響し合うことがあります。ほかの部位も気になる方は、膝の痛みの原因を場所・動作・病名から探すガイド、股関節の痛みの原因を場所・動作・病名から探すガイドもご覧ください。
関連コラム
参考文献
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院長監修記事

武内 晋司郎
(たけうち しんじろう)
シンセルクリニック総院長
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
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