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【医師監修】大腿骨頸部骨折とは?高齢者の症状・手術・リハビリを解説

2026.10.25

「母が転んで、病院で『大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)』と言われた。どんな骨折で、どんな手術になるのだろう」

「大腿骨骨折と、股関節の骨折は同じものなのか。右と左で違いはあるのだろうか」

ご家族の骨折について、まず全体像を知りたいという声を聞きます。大腿骨頸部骨折は、骨粗しょう症のある高齢の方が、立った高さからの転倒で起こしやすい骨折で、多くは手術が必要になります。

この記事では、シンセルクリニック総院長で整形外科の医師である武内晋司郎が、大腿骨頸部骨折とは何か、大腿骨骨折や股関節骨折との違い、症状、手術、リハビリ、退院後の生活、再発予防、受診の目安について解説します。なお、当院は再生医療だけを行うクリニックで、骨折の治療は行っていません。治療は、手術のできる病院で受けるものです。

この記事の結論

  • 大腿骨頸部骨折は、太ももの骨(大腿骨)の付け根にある「首」の部分が折れる骨折。股関節の骨折のひとつで、「頸部」と「頚部」は同じ。「大腿骨骨折」は、大腿骨のどこが折れても使う広い言い方

  • 原因の多くは骨粗しょう症と転倒。足の付け根の強い痛みで立てないのが典型だが、歩けることもある

  • 治療の基本は手術(骨接合術・人工骨頭置換術・人工股関節全置換術)。立てないときは、救急で手術のできる病院へ

  • 手術のあとはリハビリが回復の中心。反対側の骨折を防ぐ骨粗しょう症の治療と転倒予防も同じくらい大切

  • 再生医療は骨折の治療ではない。骨折のあとの股関節の痛みや、反対側の変形性股関節症については、診察で相談できる

大腿骨頸部骨折とは?場所と名前(大腿骨骨折・股関節骨折との違い)

大腿骨頸部骨折とは?場所と名前(大腿骨骨折・股関節骨折との違い)

大腿骨頸部骨折は、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)の、股関節に近い「首」の部分(頸部)が折れる骨折です。大腿骨の上の端は、丸い骨頭(こっとう)、細くなった頸部(けいぶ)、外側の大転子(だいてんし)、内側の小転子(しょうてんし)でできています。どこで折れたかで名前が変わります。
▶ 股関節はどこ?図解と部位別の痛みの原因

呼び方

どこの骨折か

補足

大腿骨骨折

大腿骨のどこかの骨折の総称

付け根、太ももの真ん中、膝に近い部分を全部含む

大腿骨近位部骨折

付け根の骨折(頸部+転子部)

高齢者の「大腿骨骨折」は、ほとんどがここ

大腿骨頸部骨折(頚部骨折)

骨頭のすぐ下の首の部分

関節を包む袋(関節包)の内側。「内側骨折」ともいう

大腿骨転子部骨折

大転子・小転子のあたり

関節包の外側。「外側骨折」ともいう

股関節骨折

一般には頸部骨折と転子部骨折をまとめた言い方

医師によっては骨盤側の骨折を指すこともある

右の大腿骨の付け根の各部の名称と、関節包の内側の頸部骨折・外側の転子部骨折の位置を示した模型図
大腿骨の付け根(右の股関節を正面から見た模型図)。①骨頭 ②頸部 ③大転子 ④小転子。点線は関節を包む関節包です。⑤関節包の内側の赤い線が頸部骨折、⑥関節包の外側の赤い線が転子部骨折です。

「頸」と「頚」は、どちらも「くび」を表す字で、頸部骨折と頚部骨折は同じ骨折です。

頸部骨折と転子部骨折の違い

頸部骨折は関節包の中で折れるため、骨頭に血液を送る血管が途切れやすく、骨がつきにくい、あるいは骨頭が壊れる(骨頭壊死)ことがあります。
▶ 大転子とは?場所・痛い原因・転倒後の骨折まで
▶ 大腿骨頭壊死とは?初期症状とやってはいけないこと

「右大腿骨頸部骨折」「左大腿骨頸部骨折」の違い

病名の「右」「左」は、折れた側を示しているだけです。骨折の性質も、手術の考え方も、左右では変わりません。治療を決めるのは、骨のずれの程度、骨の強さ、年齢、骨折前の歩き方、持病です。

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『大腿骨骨折と言われたり、頚部骨折と言われたり、どう違うのか』という戸惑いを聞くことがあります。主治医に『どこが、どのくらいずれているのか』と聞いてみてください。手術の説明も理解しやすくなります。」

大腿骨頸部骨折の症状|立てない・足の付け根が痛い。気づきにくい骨折もある

大腿骨頸部骨折の症状|立てない・足の付け根が痛い。気づきにくい骨折もある

典型的な症状は、転んだ直後からの足の付け根の強い痛みと、立てない、歩けないことです。ただし、症状の出方は骨のずれの大きさで変わります。

骨折の状態

見られる様子

ずれが大きい

強い痛みで立てない。足を動かせない。足が短く見える、つま先が外を向く

ずれが小さい

痛みが比較的軽く、歩ける場合もある。足の付け根のほか、お尻・太もも・膝の痛みとして感じることもある

注意したいのは、「歩けるから大丈夫」とは言えないことです。痛みをこらえて歩き続けると、骨のずれが大きくなることがあります。また、腫れや内出血が目立たないこともあり、見た目では判断できません。足の付け根の痛みには、変形性股関節症など別の病気もありますが、転倒のあとに急に痛くなった場合は、まず骨折を疑い、画像検査で確かめます。
▶ 足の付け根が痛い原因と「やってはいけないこと」

転んだ直後に、ご家族ができること

  • 無理に立たせない・歩かせない。足を引っ張ったり、動かしたりしない

  • 痛みが強く立てないときは、救急車を呼ぶ

  • 手術に備えて飲み食いを控え、救急の窓口の指示に従う

  • お薬手帳を持っていく

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『痛いけれど少し歩けたので、翌日まで様子を見た』というお話を聞くことがあります。足の付け根の骨折は、歩けても折れていることがあります。ご家族が『念のため病院へ行こう』と背中を押してあげてください。」

大腿骨頸部骨折の原因とリスク|なぜ高齢者に多いのか

大腿骨頸部骨折の原因とリスク|なぜ高齢者に多いのか

原因の中心は、骨粗しょう症で骨がもろくなっているところに、転倒の衝撃が加わることです。骨が強い若い方では、立った高さから転んだくらいで折れることはほとんどなく、強い力が加わる事故などが原因になります。

日本全国の調査では、2012年に新しく大腿骨の付け根(頸部と転子部)を骨折した方は推計17万5,700人で、女性が約8割でした。1998年から2023年の全国調査では、平均年齢は78.7歳から83.3歳に上がっています。

骨折しやすい要因

なぜ骨折につながるか

骨粗しょう症

骨がもろく、軽い転倒でも折れる。閉経後の女性は骨が弱くなりやすい

筋力・バランスの低下

つまずいたときに踏ん張れず、転びやすい

持病・家の環境

麻痺、認知症、視力の低下、薬によるふらつき。段差や暗い廊下

過去の骨折

背骨の圧迫骨折や手首の骨折があると、次の骨折が起こりやすい

骨粗しょう症は、骨折するまで自覚症状がないことが多く、「身長が縮んだ」「背中が丸くなった」は骨が弱っているサインです。
▶ 骨粗鬆症の治療法とは?薬と注射の違い
▶ 骨粗鬆症とは?不安を解消する5つの知識
▶ 圧迫骨折のやってはいけないこと

若い方の大腿骨頸部骨折は、何が違うか

若い方では、交通事故や高所からの転落など、強い力が加わって起こるのがふつうです。一般にはできるだけ早く、自分の骨頭を残す手術が検討され、高齢の方とは考え方が異なります。

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『親はまだ元気で、自分で歩いていたのに』という声を聞きます。骨粗しょう症は、骨折するまで気づきにくい病気です。身長が縮んだ、背中が丸くなった、過去に骨折をしたことがある、という方は、骨密度の検査を一度受けておくと安心です。」

検査と分類|レントゲン・CT・MRIと、「ずれ」で変わる治療

検査と分類|レントゲン・CT・MRIと、「ずれ」で変わる治療

病院では、診察とレントゲン検査で、骨折の位置とずれを確認します。ずれの小さい骨折は写りにくく、その場合はCTやMRIを追加します。
▶ 股関節のレントゲンでわかること
▶ 関節のMRI検査とは?レントゲンとの違い

骨のずれで分ける|Garden(ガーデン)分類

段階

骨の状態

治療の考え方(一般論)

ステージ1

不完全な骨折。骨が噛み合って止まっている

骨接合術が考えられる

ステージ2

完全に折れているが、ずれがない

骨接合術が考えられる

ステージ3

骨頭が部分的にずれている

年齢や活動性により、骨接合術か人工物に置き換える手術

ステージ4

完全にずれている

高齢の方では、人工骨頭置換術が選ばれることが多い

あくまで目安で、実際は骨の質、年齢、骨折前の歩き方、持病をふまえて決まります。

大腿骨頸部骨折のずれの程度を、不完全な骨折から完全なずれまで4段階で並べた模型図
骨折のずれの4段階(ガーデン分類の模式図)。①不完全な骨折 ②完全に折れているがずれなし ③骨頭が部分的にずれている ④完全にずれている。ずれが大きいほど、人工物に置き換える手術が選ばれやすくなります。

大腿骨頸部骨折の治療|基本は手術。種類と選び方

大腿骨頸部骨折の治療|基本は手術。種類と選び方

先にお伝えすると、大腿骨頸部骨折の治療は、手術ができる病院で受けるものです。当院は手術を行わず、骨折の治療もしておりません。以下は、病院で説明を受けるときの参考になる一般的な内容です。

手術をすすめられる理由は、痛みで寝たままの状態が続くと、肺炎、誤嚥(食べ物が気管に入ること)、床ずれ、足の血栓、筋力の低下、認知症の進行(せん妄)などが重なりやすいからです。また、頸部は関節の中で折れるため、骨が自然にはつきにくい性質があります。一般には、できるだけ早く手術をして、早く座る・立つ・歩く練習を始めることが勧められます。

手術の種類|骨接合術・人工骨頭置換術・人工股関節全置換術

手術

内容

主に考えられる場合

気をつけたい点

骨接合術

スクリュー(ネジ)やプレートで骨を固定し、自分の骨頭を残す

ずれが小さい場合。比較的若い方

骨がつかない、骨頭が壊れるなどで再手術になることがある

人工骨頭置換術

骨頭と首の部分を、人工の骨頭と柄(ステム)に置き換える。骨盤側は自分のまま

ずれが大きい場合。高齢の方

脱臼、ステムのゆるみ

人工股関節全置換術

骨頭側と骨盤側の両方を人工物に置き換える

ずれが大きく活動量が多い方。もともと変形性股関節症がある方

手術が大きい。脱臼に注意

骨接合術、人工骨頭置換術、人工股関節全置換術で置き換える部分の違いを並べた股関節の模型図
手術の3つの方法(右の股関節の模型図)。①骨接合術はスクリューで自分の骨頭を固定 ②人工骨頭置換術は骨頭と首を人工物に置き換え ③人工股関節全置換術は骨盤側のカップも人工物にします。

▶ 人工股関節置換術で後悔したくない人へ

転子部骨折の手術|骨接合術が基本

頸部骨折

転子部骨折

折れる場所

関節包の内側

関節包の外側

血流・骨のつきやすさ

血流が乏しく、骨がつきにくい

血流が豊富で、骨がつきやすい

手術の考え方

ずれの程度や年齢で、骨接合術か人工物への置き換え

骨接合術が基本

転子部骨折の骨接合術には、太ももの骨の中に金属の棒を入れる髄内釘(ずいないてい)と、側面からスクリューと金属板で固定するスライディングヒップスクリューがあります。76の試験・約1万1,000人をまとめた2022年のコクラン総説では、死亡や機能の回復に大きな差はありませんでした。髄内釘は骨がつかない例と感染が少ない一方、金属のまわりの骨折がやや多い結果でした。どれを使うかは、骨折の形で主治医が決めます。

研究でわかっていること

ひとつはHEALTH試験(2019年)です。ずれのある頸部骨折があり、骨折前は人の助けなく歩けていた50歳以上の1,495人を、人工股関節全置換術と人工骨頭置換術に無作為に分け、2年間追いました。

結果

人工股関節全置換術

人工骨頭置換術

2年以内に股関節の再手術を受けた人

7.9%

8.3%

脱臼・不安定性が起きた人

4.7%

2.4%

死亡した人

14.3%

13.1%

再手術の割合に大きな差はなく、股関節の点数の差も、研究者は臨床的に重要とはいえないとまとめています。

もうひとつはFAITH試験(2017年)です。骨接合術が必要な50歳以上1,108人で固定の方法を比べ、2年以内の再手術は、太いスクリューと側板の群で20%、複数の細いスクリューの群で22%と、差はありませんでした。骨接合術では約5人に1人が2年以内に再手術を受けている点を、主治医とよく話し合う必要があります。

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『人工骨頭と人工股関節のどちらがよいのか』『手術が怖い』というお話を聞くことがあります。研究を見ると、手術の名前だけで結果が大きく変わるわけではありません。状態に合った手術を選んでもらい、手術のあとに早く起きてリハビリを続けることが大切です。」

手術はいつ受けるのがよいか

カナダで4万2,230人(平均80.1歳)を調べた研究では、来院から手術までが24時間を超えると、合併症が増える傾向がありました。30日以内の死亡は、24時間以内の手術で5.8%、24時間を超えると6.5%でした。ただし、血液をサラサラにする薬や重い持病のため、全身状態を整えるために待つ場合もあります。

入院から手術までの流れ

  1. 診察とレントゲン(必要ならCT・MRI)で、骨折の位置とずれを確認する

  2. 血液検査、心電図などで全身状態を調べる。血液をサラサラにする薬を含む、飲んでいる薬を必ず伝える

  3. 麻酔科や内科も加わり、手術に耐えられるか、栄養状態や貧血を確認する

  4. 術式とリスクの説明を受け、同意する

  5. 手術。翌日から座る・立つ練習を始める

手術をしないという選択|どんなときに、何が起こるか

手術をしない(保存的治療)のは、重い心不全や呼吸不全で麻酔に耐えられない場合、もともと寝たきりに近く重い認知症がある場合、手術を望まれない場合などです。痛みを抑える薬や床ずれを防ぐ介助、ベッドの上でのリハビリを行い、車いすへの移乗を目標にすることが多くなります。2025年に185の研究・約1,076万人をまとめた総説では、手術をしなかった方は約8.4%(12人に1人)で、どの時点でも死亡の危険が高いと報告されました。ただし、状態が重い方が選ばれやすいため、手術をしなかったことだけが原因とはいえません。ご本人の願いも含め、主治医と話し合ってください。

入院とリハビリ|いつから立つ?入院期間と手術後の合併症

入院とリハビリ|いつから立つ?入院期間と手術後の合併症

経過は病院や術式で異なりますが、おおむね、手術の翌日から数日で座る練習、1〜2週で歩行器を使った歩く練習を始め、その後に家へ帰るか、回復期リハビリテーション病院に移ります。大腿骨の骨折では、回復期の入院日数に制度上の上限(90日)があります。入院期間は、主治医や病院の相談員に確認してください。

体重をかけてよい時期は、手術で異なります。人工骨頭や人工股関節では早くから体重をかけますが、骨接合術では指示が出ることがあります。自己判断をせず、必ず主治医やリハビリの担当者の指示に従ってください。リハビリは、医師のほか、理学療法士、作業療法士、看護師、管理栄養士、ソーシャルワーカーがチームで支えます。

手術のあとは、次のような合併症が起こることがあります。

合併症

どんな状態か

主な予防・対策

肺炎

寝たきりや誤嚥で起こりやすい

早く起きる。口の中を清潔にする。呼吸の練習

足の血栓

ふくらはぎの腫れ。急な息苦しさや胸の痛みは救急

弾性ストッキング、足首の運動、予防薬

せん妄

一時的な混乱。夜に落ち着かない

眼鏡・補聴器、昼夜のリズム、痛みのコントロール

脱臼

人工骨頭・人工股関節で、深く曲げたときなど

避ける姿勢を守る

2023年に15の臨床試験をまとめた分析では、手術後に通常より強度を高めた運動を行うと、歩く速さ、バランス、日常生活の動作が良くなる傾向がありました(証拠の確かさは「低い」)。無理をすればよいという意味ではなく、痛みや体調を見ながらリハビリを続けることの意義を示した結果です。

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『リハビリがつらくて、もう休みたいと言う』というご家族のお話を聞くことがあります。痛みを我慢して続けることが正解とは限りません。痛みや不安は、リハビリの担当者に伝えてください。」

退院後の生活|どこまで回復するか。住まいの工夫と、骨折後の股関節の痛み

退院後の生活|どこまで回復するか。住まいの工夫と、骨折後の股関節の痛み

退院後の回復は、骨折前の歩く力、筋力、認知機能、持病、リハビリの量によって、ひとりひとり大きく異なります。杖で外出できる方もいれば、歩行器や介助が必要な方もいます。50歳以上の研究をまとめた分析では、骨折後3か月間の死亡のリスクは、同じ年齢・性別の人と比べて女性で約5.8倍、男性で約8倍でしたが、その後は下がります。持病のある方が多いことも関わっており、早い手術、早いリハビリ、再発予防が大切という意味です。

先日、こんなご相談をいただきました。ご高齢のお母さまのことで、娘さんからです。リハビリも薬も、勧められたことはすべてやってきた。それでも痛みは続き、お母さまは長年悩んで落ち込まれ、娘さんは必死に調べておられました。毎日つらそうな姿を見ているほうがつらい、とも話されていました。ご家族がひとりで背負わなくてよいように、退院後の暮らしの準備を整理します。

住まいと介護の準備

人工骨頭や人工股関節の手術を受けた方は、脱臼しやすい姿勢(深くかがむ、脚を組むなど)に注意が必要です。どの動作を避けるかは、手術を受けた病院の説明に従ってください。
▶ 人工股関節の手術後にやってはいけないこと完全ガイド

骨折のあとも股関節の痛みが続くとき|再生医療(幹細胞治療)との関係

再生医療は、骨折の治療ではなく、手術の代わりになるものでもありません。そのうえで、当院の診察でご相談をお受けできるのは、たとえば「骨がついたあとも、股関節の痛みが長く続く」「反対側の股関節に変形性股関節症がある」といった場合です。変形性股関節症は、膝と並んで、当院の再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)の主な対象です。幹細胞は「体の修復を担当する細胞」で、傷んだ軟骨の修復に働きかけ、関節の炎症をしずめることを目指します。流れは、お腹などから脂肪を少量採取し(局所麻酔・日帰り)、4〜6週間かけて培養したのち、関節に注射します。ご自身の細胞・血液を用いるため、拒絶反応のリスクはほぼありません。自由診療(保険外)で、効果には個人差があります。人工骨頭や人工股関節の手術を受けた側の痛みは、人工物のゆるみなども関わるため、まず手術を受けた病院で確認してください。股関節が治療の対象になるかどうかは、診察で判断します。

▶ 変形性股関節症の再生医療(幹細胞治療)完全ガイド
▶ 「もう手術しかない」と諦める前に|変形性股関節症と再生医療
▶ 股関節の再生医療について

【武内院長のコメント】
「再生医療は、骨折の治療としてお受けいただくものではありません。相談に来られる方から、『骨折のあと、反対の股関節まで痛くなってきた』と聞くことがあります。その痛みが軟骨のすり減りによるものなのか、別の原因なのかを見分けるのが、診察の役割です。まずは、骨折の治療を受けた病院の主治医の診察を優先してください。」

再発予防①|骨粗しょう症の治療で、次の骨折を防ぐ

再発予防①|骨粗しょう症の治療で、次の骨折を防ぐ

一度骨折をした方は、次の骨折が起こりやすいと考えて対策をとる必要があります。日本の保険請求のデータを使った研究(2012〜2023年度)では、股関節を骨折した方のうち、1年以内に再び股関節を骨折した方は、平均で約3.4%(100人に3〜4人)でした。骨粗しょう症の薬を使っていた方の割合は、2012年度の39.1%から増え、2022年度は65.5%でした。それでも、約3人に1人は、薬を使っていなかったことになります。

薬には、骨を壊す細胞の働きを抑えるもの(ビスホスホネート、デノスマブ)、カルシウムの吸収を助けるもの(活性型ビタミンD)、骨をつくる働きを高めるもの(テリパラチド、ロモソズマブ)などがあります。骨密度、年齢、腎臓の働き、歯の状態をみて主治医が決めるため、自己判断で始めたり、やめたりしないでください。
▶ デノスマブ(骨粗鬆症の注射薬)の効果・副作用・投与期間
▶ エルデカルシトール(活性型ビタミンD)の効果と副作用

臨床試験もあります。手術から90日以内にゾレドロン酸(点滴薬)を年1回使った平均74.5歳の2,127人を、偽の薬の群と比べたところ、新たな骨折は薬の群8.6%、偽の薬の群13.9%、死亡は9.6%と13.3%でした。ただし、全員に同じように使える薬ではないため、主治医と相談してください。

食事では、カルシウム、ビタミンD、たんぱく質をしっかりとり、禁煙・節酒を心がけます。
▶ 骨を強くする食べ物・飲み物を解説

再発予防②|転倒を防ぐ。運動・家の環境・薬・目と足

再発予防②|転倒を防ぐ。運動・家の環境・薬・目と足

骨を強くすることと並んで、転ばないことが欠かせません。60歳以上の23,407人を含む108の臨床試験の分析では、運動によって転倒の回数が23%減ったと報告されています(確かさは「高い」)。運動の種類別では、バランスと日常動作の運動で24%、複数の種類の運動を組み合わせると34%減りました。一方で、歩くことだけで転倒が減るかどうかは、はっきりしていません。
▶ ウォーキングの効果はいつから?膝を痛めない歩き方

視点

チェックと工夫

家の中

段差、ラグ、電気コードを整理する。夜は廊下とトイレに足元灯。階段と浴室に手すり

運動

椅子につかまっての片脚立ち、椅子からの立ち座りなど。痛みや不安があるときは、主治医に確認してから

薬

眠気やふらつきが出る薬がないか、主治医や薬剤師に確認する

履き物・目

滑りにくく、かかとのある室内履きを選ぶ。視力の低下も転倒の原因になるため、眼科の定期検診を受ける

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『転ぶのが怖くて、家から出なくなった』という声を聞くことがあります。動かなくなると筋力はさらに落ち、かえって転びやすくなります。怖さを否定せず、安全な環境で、少しずつ動く機会を増やすことが大切です。」

受診の目安|何科に行く?救急車を呼ぶべきとき

受診の目安|何科に行く?救急車を呼ぶべきとき

骨折が疑われるときは、整形外科のある病院に行きます。夜間や休日は、救急で受け入れ可能な病院を探します。

状態

受診の目安

転倒後、立てない。足の付け根に激しい痛み。足が短く見える、つま先が外を向く

救急車を呼ぶ。手術のできる病院へ

転倒後、歩けるが、足の付け根・お尻・太もも・膝が痛い

その日のうちに整形外科を受診。レントゲンで異常なしでも痛みが続くなら、追加の検査を相談

手術後、胸の痛み、息苦しさ、ふくらはぎの腫れ。傷の赤み・膿、発熱

胸の痛みや息苦しさは救急。ほかは早めに手術を受けた病院へ連絡

人工骨頭・人工股関節の手術後、急な強い痛みで足を動かせない

脱臼の可能性。すぐに手術を受けた病院へ

骨がついたあとも股関節の痛みが続く。反対側の股関節が痛む

整形外科で原因を確認。再生医療が選択肢になるかは当院でも相談可能

当院は骨折の診断・治療をしておりません。骨折が疑われるときは、手術のできる病院へ行ってください。骨折のあとの股関節の痛みや反対側の変形性股関節症について、再生医療が選択肢になるかのご相談は、お受けしています。
▶ 股関節の痛みの原因ガイド|場所・症状別の見分け方と受診の目安
▶ ご予約・ご相談のご案内

大腿骨頸部骨折についてよくある質問

大腿骨頸部骨折についてよくある質問

Q. 大腿骨骨折と大腿骨頸部骨折は同じですか?

同じではありません。大腿骨骨折は、大腿骨のどこが折れても使う広い言い方で、頸部骨折はそのうち首の部分の骨折です。

Q. 手術をしないで様子を見ることはできますか?

全身状態が重い場合などには選ぶこともありますが、痛みで動けない状態が続きやすいため、一般には手術が勧められます。

Q. 高齢でも手術は受けられますか?

年齢だけで可否が決まるわけではありません。心臓や肺、腎臓の状態、飲んでいる薬などをみて、麻酔と手術に耐えられるかを判断します。

Q. 人工骨頭と人工股関節は、どちらがよいのですか?

ずれのある頸部骨折の1,495人を比べたHEALTH試験では、再手術の割合に大きな差はありませんでした。骨折前の活動量、歩き方、もともとの股関節の状態をみて、主治医が選びます。

Q. 手術のあと、いつごろ歩けるようになりますか?

人工骨頭や人工股関節では、手術の翌日から立つ練習を始め、歩行器、杖と進めるのが一般的です。骨接合術では、体重のかけ方に指示が出ることがあります。家の中で安定して歩けるまでの期間は、骨折前の歩く力、筋力、認知機能で大きく変わります。

Q. 入院はどのくらいかかりますか?

病院や回復の具合で大きく異なります。手術を行う病院で数週間、回復期リハビリテーション病院でさらに数週間〜数か月かかることがあります。

Q. 骨折のあとに、再生医療を受けられますか?

再生医療は、骨折そのものの治療ではありません。骨折の手術とリハビリは、手術のできる病院で受けてください。骨がついたあとも股関節の痛みが続く場合や、反対側に変形性股関節症がある場合には、診察で、選択肢になるかどうかをご相談できます。自由診療(保険外)で、効果には個人差があります。

まとめ|大腿骨頸部骨折は「手術・リハビリ・再発予防」の3つで考える

まとめ|大腿骨頸部骨折は「手術・リハビリ・再発予防」の3つで考える
  • 大腿骨頸部骨折は、太ももの骨の付け根の「首」の部分が折れる骨折。大腿骨骨折は広い言い方で、股関節骨折は頸部と転子部の骨折を合わせた言い方

  • 多くは骨粗しょう症のある高齢の方の転倒で起こる。立てない痛みは救急。歩けても、転倒後の足の付け根の痛みはその日のうちに受診

  • 治療の基本は手術。ずれの程度や年齢、骨折前の歩き方で術式を選ぶ

  • 回復の中心はリハビリ。骨粗しょう症の治療と転倒予防で反対側の骨折を防ぐ

  • 当院は骨折の治療を行わない。再生医療は骨折の治療ではないが、骨折後の股関節の痛みや反対側の変形性股関節症は、診察で相談できる

関連コラム

参考文献

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  11. Lewis SR, et al. Cephalomedullary nails versus extramedullary implants for extracapsular hip fractures in older adults. Cochrane Database Syst Rev. 2022;1(1):CD000093. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35080771/

  12. Sherrington C, et al. Exercise for preventing falls in older people living in the community. Cochrane Database Syst Rev. 2019;1(1):CD012424. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30703272/

院長監修記事

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武内 晋司郎

(たけうち しんじろう)

シンセルクリニック総院長

三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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