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【医師監修】大転子とは?場所・痛い原因・出っ張りの理由を整形外科の医師が解説

2026.10.24

「股関節の横の、骨が出っ張っているところを押すと痛い。これは何だろう」

「お尻の横の骨が出ているように見える。大転子(だいてんし)というらしいけれど、引っ込められないのだろうか」

ご相談では、「大転子って、どこのことですか?」「大転子が痛いのは、股関節が悪いのでしょうか」と聞かれることがよくあります。実は、大転子のまわりの痛みは、股関節の中ではなく、外側の腱(けん)や滑液包(かつえきほう)という「クッション」に原因があることが少なくありません。一方で、転んだあとに大転子のあたりが痛むときは、骨折のサインのこともあります。

この記事では、シンセルクリニック総院長で整形外科の医師である武内晋司郎が、大転子とは何か、どこにあるのか、どんな働きがあるのか、痛いときに考える病気、出っ張って見える理由、引っ込められるのか、そして受診の目安について解説します。

この記事の結論

  • 大転子は、太ももの骨(大腿骨)の外側上部にある出っ張り。股関節の関節そのものではなく、お尻の筋肉(中殿筋・小殿筋など)がつく場所

  • 大転子のまわりの痛みで多いのは大転子疼痛症候群(滑液包の炎症・中殿筋の腱の障害)。50〜79歳を調べた研究では、女性の約4人に1人、男性の10人に1人弱に見られた

  • 治療の中心は負担のかけ方の見直しと運動。ある臨床試験では、教育と運動のほうが、ステロイド注射1回よりも、8週後も1年後も全体の改善度がよかった

  • 大転子の骨そのものは、ストレッチや運動で引っ込めることはできない。見た目は骨盤の幅・筋肉・脂肪・立ち方で変わる

  • 転んだあとに大転子のあたりが痛くて歩けないときは、大腿骨の骨折の可能性があり、すぐに受診が必要

大転子とは?場所(どこ)と形をわかりやすく

大転子とは?場所(どこ)と形をわかりやすく

大転子は、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)の上のほう、外側にある大きな出っ張りです。骨盤の横、いわゆる「お尻の横」「脚の付け根の外側」にあり、やせている方であれば、皮膚の上から手で触れます。

大腿骨の上端は、丸いボール状の骨頭(こっとう)、細くなった首の部分の頚部(けいぶ)、その外側にせり出す大転子、内側の奥にある小さな小転子(しょうてんし)でできています。ここで大切なのは、大転子は股関節の「関節そのもの」ではないという点です。股関節は足の付け根の奥にあり、体の表面からは触れません。大転子は、その関節のすぐ外側にある骨のでっぱりです。
▶ 股関節はどこ?図解と部位別の痛みの原因

大転子はどこ?自分で探す方法

  1. 立った姿勢で、ベルトが当たる腰骨(骨盤の上の縁)に手のひらを当てる

  2. そこから真横〜やや下へ滑らせる。手のひらの幅ひとつ分からふたつ分ほど下(個人差があります)に、硬くて丸い出っ張りが触れる

  3. 片脚の力を抜き、ゆっくり内外に回す。指先の下で骨が動くのが分かれば、そこが大転子

痛みがあるときは、強く押さないでください。

名前

場所

外から触れるか

ついている主な筋肉

大転子

太ももの骨の外側上部

触れる

中殿筋・小殿筋・梨状筋など

小転子

太ももの骨の内側の奥

触れない

腸腰筋

股関節

足の付け根の奥

触れない

—

「大転子部(だいてんしぶ)」は、大転子のあたり全体を指す言葉です。

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『股関節が痛い』と言いながら、お尻の横の骨をさすっている、という場面をよく伺います。股関節の本体は足の付け根の奥にあり、さすっているのは別の場所です。痛い場所を指1本で指していただくと、原因の見当がつきやすくなります。」

大転子の働き|お尻の筋肉がつく場所で、歩くときの土台

大転子の働き|お尻の筋肉がつく場所で、歩くときの土台

大転子の大きな役割は、お尻や太ももの筋肉の「付け根」になることです。筋肉の力は腱を通って骨に伝わり、骨が動くことで体が動きます。大転子には、股関節を支え、動かす筋肉の腱が集まっています。

筋肉・組織

大転子とのかかわり

主な働き

中殿筋(ちゅうでんきん)

大転子の外側の面にしっかりつく

脚を横に開く。片脚立ちで骨盤を水平に保つ

小殿筋(しょうでんきん)

大転子の前側につく

中殿筋と一緒に股関節を安定させる

梨状筋など(外旋筋)

大転子の上のほう〜内側につく

脚を外側に回す。股関節を深くおさえる

腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)

大転子の外側を覆って通り、膝の外側まで続く

骨盤と膝をつなぎ、歩行を安定させる

とくに重要なのが中殿筋と小殿筋です。歩くとき、片脚で全体重を支える瞬間があります。このとき、支えている側の中殿筋・小殿筋が働いて、骨盤が反対側に傾かないように保っています。ここが弱ったり、腱が傷んだりすると、片脚立ちで反対側の骨盤が下がる「トレンデレンブルグ徴候」が出て、歩き方が不安定になります。
▶ 股関節の筋肉とは?前・後ろ・横・内側・深層の地図
▶ 腸腰筋とは?(小転子につく筋肉)

大転子の上には、摩擦をやわらげるため、滑液包(かつえきほう)という薄い袋状のクッションがあります。次の項目の痛みの多くは、このクッションや、骨についた腱の傷みから起こります。

大転子が痛い原因|「大転子疼痛症候群」とは

大転子が痛い原因|「大転子疼痛症候群」とは

大転子のまわりが痛む状態は、医学的に大転子疼痛症候群(だいてんしとうつうしょうこうぐん、英語でGTPS)とまとめて呼ばれます。股関節の外側が長く痛み、大転子を押すと痛いのが特徴です。以前は「大転子滑液包炎」と呼ばれることが多かったのですが、現在は中殿筋・小殿筋の腱の傷み(腱障害)が主役のことが多いと考えられています。

正体

どんな状態か

特徴

大転子滑液包炎

骨の上のクッション(滑液包)に炎症が起きた状態

押すと痛い。横向きに寝ると痛い

中殿筋・小殿筋の腱障害

骨についた腱が使いすぎや加齢で傷んだ状態

階段、立ち上がり、片脚立ちで痛い

腱の部分断裂・断裂

傷んだ腱が裂けた状態(肩の腱板断裂の股関節版)

痛みが長引く。片脚立ちで骨盤が下がる

3つは同じ場所で重なって起こることも多くあります。腸脛靭帯のこわばりが、大転子の上でこすれて痛むこともあります。
▶ 腸脛靭帯炎(ランナー膝)の症状・原因・治し方

どのくらい多い?数字で見る大転子の痛み

アメリカで、50〜79歳の3,026人を調べた研究があります。この研究では、「股関節に痛みがあり、大転子を押すと痛い。ただし、股関節の変形性関節症などの所見がない」状態を大転子疼痛症候群とみなしました。その結果、片側と両側を合わせて、女性で約23.5%(片側15.0%・両側8.5%)、男性で約8.5%(片側6.6%・両側1.9%)に見られたと報告されています。女性では約4人に1人、男性では10人に1人弱です。別の報告では、発症は1年間に1,000人あたり約1.8人とされ、やはり女性に多いとまとめられています。

どんな人に多い?

先ほどの研究で、大転子疼痛症候群と関わりが見られたのは、女性、腰痛がある人(約2.8倍)、同じ側に膝の変形性関節症がある人(約3.5倍)、太ももの外側を押すと痛い人(約1.7倍)でした。他の条件をそろえると、体格(BMI)との関連は見られませんでした。「太っているから痛い」と決めつけることはできません。

生活の中で引き金になりやすいのは、脚を組む・横座り、片脚にもたれて骨盤を横に突き出す立ち方、歩く量の急な増加、痛い側を下にして寝ることなどです。

先日、こんなご相談をいただきました。「昼間は何とか動けるのに、夜、寝返りのたびに痛みで目が覚める」というお話です。眠れない夜が続くと、気持ちまで沈んでしまいます。画像では問題なしと言われても、痛みは確かにある。その痛みを、軽く扱わないでほしいと思っています。大転子のまわりの痛みでは、横向きに寝たときの痛みが手がかりになります。

【武内院長のコメント】
「『股関節の外側を押すと飛び上がるほど痛い。レントゲンでは異常なしと言われた』という方がいらっしゃいます。レントゲンには骨しか映らないので、腱やクッションの傷みは写らないのです。異常がないのに痛いのではなく、痛い場所がレントゲンに映らない部分にある、ということが多いのです。」

大転子が痛いときのセルフチェックと、ほかの病気との見分け方

大転子が痛いときのセルフチェックと、ほかの病気との見分け方

ここで紹介するのは診断ではなく、受診のときに医師へ伝える材料です。大転子まわりの痛みは、股関節や腰の病気と区別がつきにくいことがあります。次の特徴が当てはまるほど、大転子疼痛症候群らしい痛みです。

  • 大転子を指で押すと、強く痛む。痛い側を下にして寝ると痛む

  • 階段の上り、立ち上がり、片脚立ちで痛む。脚を組むと外側が痛い

痛む場所・症状

考えられる病気

大転子を押すと痛い。横向きで寝ると痛い

大転子疼痛症候群(この記事のテーマ)

足の付け根(前)が痛い。靴下をはく動作、あぐらで痛い

股関節の中の病気(変形性股関節症、股関節唇損傷、臼蓋形成不全など)

お尻の深いところが痛い。脚にしびれが走る

梨状筋症候群、坐骨神経痛

腰からお尻・太ももが痛い。歩くと悪化し、前かがみで楽になる

腰部脊柱管狭窄症など、腰の病気

転倒のあと、足の付け根〜外側が痛く、体重をかけられない

大腿骨の骨折(後ろの項目で説明)

股関節の中の病気については、こちらをご覧ください。
▶ 股関節・足の付け根が右だけ・左だけ痛い原因
▶ 足の付け根が痛い原因と「やってはいけないこと」
▶ 変形性股関節症でやってはいけないこと10選
▶ 梨状筋症候群とは?お尻から足が痛い・しびれる原因

腰の病気と一緒に見つかることがある

腰の変性(すり減り)で受診した273人を調べたアメリカの報告では、約半数(50.5%)に大転子疼痛症候群があり、女性に多い結果でした(女性60%、男性32.8%)。中殿筋・小殿筋に傷みがある103人を調べた別の報告でも、約半数(48.5%)に腰や腰仙部の病気(椎間板の変性や脊柱管狭窄症など)が合わせて見つかりました。ただし、どちらが原因かまでは分かっていません。お尻や太ももの外側が痛いとき、腰だけ、股関節だけ、と決めつけず、全体を見ることが大切です。
▶ 腰部脊柱管狭窄症(LSS)とは?

病院では、診察に加えて、レントゲン(骨折や変形性関節症の確認。腱やクッションは写らない)、超音波(エコー)、MRI(腱の断裂や隠れた骨折の確認)を、必要に応じて行います。
▶ 関節のMRI検査とは?レントゲンとの違い

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『腰の治療を続けているのに、お尻の横の痛みだけ残る』と聞くことがあります。どちらか一方だけを追いかけず、『痛みの場所』と『痛む動作』を整理して診てもらうことが近道です。」

大転子の痛みの治し方|自分でできること、研究でわかっていること、病院の治療

大転子の痛みの治し方|自分でできること、研究でわかっていること、病院の治療

大転子疼痛症候群は、多くの場合、手術をしなくても、負担のかけ方の見直しや運動で経過をみることができます。レビュー論文でも、保存的な方法で症状が落ち着く人が多いとされています。

自分でできること

  • 痛い側を下にして寝ない:仰向け、または痛くない側を下にして、両膝の間にクッションをはさむ
    ▶ 腰痛が楽な寝方(寝姿勢のくふう)

  • 脚を組まない、横座りをしない、「休め」の姿勢をやめる:左右均等に体重をかけて立つ

  • 痛む場所を押さない、ローラーを当てない:傷んだ腱を圧迫してしまう

  • 脚を体の中心へ引き寄せるストレッチは、痛いうちは避ける:腱を骨に押しつける形になりやすい
    ▶ 股関節ストレッチおすすめ10選

痛みが落ち着いてきたら、お尻の筋肉をやさしく使います。たとえば、仰向けで膝を立ててお尻を軽く持ち上げ、3秒止める「ブリッジ」や、痛くない側を下にして上側の脚を少しだけ上げて3秒止める運動を、5〜10回行います。目安は、運動中の痛みが「少し気になるが、翌日に残らない程度」までです。強い痛みが出る、翌朝に悪化する運動は、今の状態に合っていません。

研究でわかっていること|教育+運動 vs ステロイド注射 vs 様子見

オーストラリアの臨床試験(BMJ・2018年)では、35〜70歳で、3か月以上続く大転子の外側の痛みがあり、MRIでも腱障害が確認された204人(女性167人)を3グループに分けました。教育+運動(負担のかけ方の指導と、理学療法士による運動を8週間で14回)、ステロイド注射1回、様子見(1回の説明と、活動を続ける助言)です。

結果

教育+運動

ステロイド注射

様子見

8週後に「よくなった」と答えた人

51/66人(約8割)

38/65人(約6割)

20/68人(約3割)

1年後に「よくなった」と答えた人

51/65人(約8割)

36/63人(約6割)

31/60人(約5割)

痛みの強さ(0〜10点)8週後

1.5点

2.7点

3.8点

痛みの強さ(0〜10点)1年後

2.1点

2.3点

3.2点

この試験から言えるのは、教育と運動は、8週後も1年後も、全体の改善度でステロイド注射を上回ったということです。1年後の痛みの強さには、教育+運動と注射の間に差はありませんでした。2025年の系統的レビューでも、教育と運動が中心的な方法とされ、ステロイド注射は短期的に小さな効果と整理されています。

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『注射をしてもらうと、そのときは楽になるのに、また戻る』と聞くことがあります。注射は、痛みを一時的にしずめて、運動ができる状態にするための助けです。そのあとで、お尻の筋肉を使えるように整えていくのが、遠回りに見えて近道です。」

病院で行う治療と、腱が断裂しているときの手術

病院では、痛み止め(飲み薬・湿布。炎症が強い時期の補助)、大転子の周りへの注射(ステロイドや局所麻酔薬。効果は一時的なことが多く、同じ場所への繰り返しは慎重に)、体外衝撃波、リハビリテーションなどが行われます。
▶ 痛み止めが効きにくい痛みの種類
▶ ブロック注射は痛い?費用・効果・副作用

腱が大きく断裂し、保存的な方法で痛みが続く場合には、腱を縫い合わせる手術があります。アメリカの報告では、MRIで断裂が確認された22人(23股関節)が手術を受け、5年以上追われました。股関節の評価点(Harris hip score)は、手術前の53点から、1年後に87点、5年後に88点へ改善し、19人中16人が満足と答えました。ただし、少人数の報告です。

一方で、腱の傷みがあっても、手術が必要になるとは限りません。スイスで、腱の変性があった64股関節を平均約6年(71か月)追った研究では、病変が進行したのは約3分の1(34%)でした。部分断裂の約9割は安定したまま、または傷あとになったと報告され、著者らは「手術をしない方法も長期の選択肢になりうる」と結論しています。

股関節の軟骨がすり減っているときの選択肢|再生医療(幹細胞治療)

ここまでお話ししたのは、大転子の外側の腱とクッションの傷みです。「大転子のあたりが痛い」と感じていても、実は股関節の中の軟骨がすり減る変形性股関節症が背景にあることがあります。変形性股関節症は、膝と並んで、当院の再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)の主な対象です。薬や注射、リハビリを続けても股関節の痛みが残り、手術にはまだ踏み切れないという方に、選択肢のひとつとして考えられます。幹細胞は「体の修復を担当する細胞」で、傷んだ軟骨の修復に働きかけ、関節の炎症をしずめることを目指します。診察では、レントゲンなどで軟骨の状態を確認し、腱の傷みや腰の病気が隠れていないかも合わせて見ます。流れは、お腹などから脂肪を少量採取し(局所麻酔・日帰り)、4〜6週間かけて培養したのち、痛みの原因になっている部位に注射します。ご自身の細胞・血液を用いるため、拒絶反応のリスクはほぼありません。自由診療(保険外)で、効果には個人差があります。大転子まわりの腱やクッション(滑液包)の炎症が長引いている場合も対象になりえます。痛みの中心が大転子のまわりか股関節の中かで考え方が変わるため、対象になるかどうかは、診察で判断します。

▶ 変形性股関節症の再生医療(幹細胞治療)完全ガイド
▶ 「もう手術しかない」と諦める前に|変形性股関節症と再生医療
▶ 股関節の再生医療について

【武内院長のコメント】
「再生医療は、『お尻の横が痛いから受けられる』という治療ではありません。まず、痛みの場所が大転子まわりの腱なのか、股関節の中なのかを見分けるのが先です。大転子の痛みと思っていたら、実は股関節の軟骨のすり減りだった、ということもあります。その区別が、いちばん大切な診察の役割だと思っています。」

大転子が出ている・出すぎて見えるのはなぜ?

大転子が出ている・出すぎて見えるのはなぜ?

「お尻の横が張り出して見える」「片方だけ出ている気がする」というご相談も少なくありません。大転子は誰にでもある骨ですが、出っ張りの見え方は、次の要素で大きく変わります。

見え方に関わる要素

どう影響するか

骨盤の幅

もともと骨盤が広い方は、大転子が外に出て見えやすい。生まれつきの骨格で、女性は広い傾向がある

筋肉・脂肪のつき方

大転子の上の脂肪や筋肉の量で、目立ったり隠れたりする

立ち方・姿勢

片脚に体重をのせて骨盤が横に流れる癖があると、その側が張り出して見える

大腿骨の首の角度、脚の長さの差

個人差があり、大転子の張り出しや左右の見え方に影響する

「出ている」ように見えても、多くは生まれつきの骨格や、立ち方・脂肪の影響であり、病気ではありません。ただし、最近になって片方だけ目立つようになった、出っ張りに痛みや腫れがある、脚の長さや歩き方が変わった、生まれつきの股関節の形を指摘されている(臼蓋形成不全など)といった場合は、一度受診してください。
▶ 臼蓋形成不全とは?原因・症状・痛みの対処法

大転子を引っ込める方法はある?できること・できないこと

大転子を引っ込める方法はある?できること・できないこと

「大転子を引っ込めるストレッチはありませんか」という質問に、正直にお答えします。大転子は骨の一部なので、ストレッチ・マッサージ・体操で、骨そのものを引っ込めることはできません。ただし、「出っ張りの見え方」に関わる要素のうち、次のものは変えられる可能性があります。

要素

変えられるか

できること

骨そのものの大きさ・位置

変えられない

—

立ち方・姿勢の癖

変えられる

片脚重心、脚を組む癖、横座りを減らす

お尻の筋肉(中殿筋)の弱り

変えられる

ブリッジなど、痛みの範囲での筋力運動

大転子まわりの脂肪・むくみ

ある程度変わりうる

食事・運動・睡眠の見直し。部分やせは難しい

やってはいけないのは、大転子を手や器具で強く押し込むことです。骨は動かず、滑液包や腱を傷めて、かえって痛みの原因をつくります。考え方を、「骨を引っ込める」から「立ち方・歩き方を整えて、お尻の筋肉を使えるようにする」へ変えると、見た目も体も楽になります。

【武内院長のコメント】
「骨を引っ込めることはできませんが、お尻の筋肉をしっかり使えるようになると、歩き方が変わり、立ち姿もすっきりして見えます。『見た目のために』始めた運動が、結果として股関節を守ることにもつながります。ただし、痛みがあるときは、まず痛みを落ち着かせることを優先してください。」

転んだあとの大転子の痛みは要注意|大腿骨転子部骨折

転んだあとの大転子の痛みは要注意|大腿骨転子部骨折

「大転子部」で調べる方の中には、転倒や尻もちのあとに、股関節の外側が痛むという方もいます。この場合は、大腿骨の骨折を考えます。大腿骨の上の端の骨折は、首の部分で折れる「頚部骨折」と、大転子・小転子のあたりで折れる「転子部骨折(てんしぶこっせつ)」に分けられ、骨粗しょう症のある高齢の方に多い骨折です。

日本整形外科学会関連病院の全国調査(1998〜2000年・約11万人)では、患者数は80〜84歳でピークに達し、75歳を過ぎると、頚部骨折より転子部骨折のほうが多くなりました。原因はただの転倒がいちばん多く、約7割(68.8%)は屋内での骨折でした。9割以上の方が手術を受けています(頚部骨折93%、転子部骨折94%)。この調査は2000年前後のものです。

次のときは、骨折を疑ってください。

  • 転んだあと、立てない、または体重をかけると激しく痛い

  • 足の付け根〜股関節の外側に強い痛みと腫れ、あざがある

  • 軽い転倒、あるいはきっかけがはっきりしないのに、急に痛くて歩けなくなった(骨粗しょう症の方に多い)

骨折の一部は、レントゲンではっきり写らず、MRIで初めて見つかることもあります。「レントゲンで異常なし」と言われても、痛みで体重をかけられない状態が続くときは、追加の検査を相談してください。
▶ 骨粗鬆症の治療法とは?薬と注射の違い

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『転んで痛かったけれど、しばらく様子を見ていた』と伺うことがあります。大腿骨の骨折は、時間がたつほど体への負担が大きくなります。転んだあと、体重をかけると痛くて歩きにくいときは、様子を見ずに、その日のうちに受診してください。ご家族の方も、受診を後押ししてあげてください。」

受診の目安|何科に行く?急いだほうがよいサイン

受診の目安|何科に行く?急いだほうがよいサイン

大転子まわりの痛みは、整形外科で診てもらえます。次の表を目安にしてください。

状態

受診の目安

転倒・尻もちのあと、体重をかけると痛い。足が外を向いている

その日のうちに受診

発熱がある。大転子のあたりが赤く腫れ、熱をもっている

早めに受診(感染などの可能性)

足に力が入らない。しびれが広がる。排尿・排便の感覚がおかしい

早めに受診(腰の神経の病気の可能性)

痛みが数週間以上続く。寝返りで目が覚める。片脚立ちで骨盤が下がる

整形外科を受診

痛みはなく、昔から出っ張って見えるだけ

心配はいらないことがほとんど

当院は手術を行うクリニックではありませんが、現在の状態の確認、日常生活での工夫、そして股関節の変形性関節症があるときの再生医療が選択肢になるかどうかのご相談をお受けしています。
▶ ご予約・ご相談のご案内

大転子についてよくある質問

大転子についてよくある質問

Q. 大転子はどこにありますか?

太ももの骨(大腿骨)の外側の上のほう、お尻の横にある骨の出っ張りです。腰骨から手のひらの幅ひとつ分からふたつ分ほど下の、太ももの外側を探ると触れます。股関節そのものは足の付け根の奥にあり、大転子とは別の場所です。

Q. 大転子を押すと痛いのは、なぜですか?

大転子の上にあるクッション(滑液包)の炎症や、中殿筋・小殿筋の腱の傷みがある可能性があります。痛みが続く、寝返りや階段でつらいときは、一度整形外科で診てもらってください。

Q. 大転子の痛みは、自然に治りますか?

レビュー論文では、多くの場合、保存的な方法で症状が落ち着くとされています。ただし、数か月続く方もいます。負担のかけ方を見直さずに我慢して動き続けると、長引くことがあります。

Q. 大転子のストレッチをしてもよいですか?

痛みがないときに、気持ちよく伸びる範囲で行うのは問題ありません。痛みがあるうちは、脚を体の中心へ強く引き寄せるストレッチや、大転子を直接押す方法は避けてください。

Q. 大転子が左右で違って見えるのは、異常ですか?

多くは、生まれつきの骨格、立ち方の癖、脚の長さの違いなどによるもので、異常ではありません。急に目立ってきた、痛みや腫れがある場合は、受診をおすすめします。

まとめ|大転子は「お尻の筋肉の付け根」。痛みは場所の見分けが先

まとめ|大転子は「お尻の筋肉の付け根」。痛みは場所の見分けが先
  • 大転子は、太ももの骨の外側上部の出っ張りで、股関節の関節そのものではなく、中殿筋・小殿筋などがつく場所。腰骨から手のひらの幅ひとつ分〜ふたつ分ほど下に触れる

  • 大転子まわりの痛みで多いのは大転子疼痛症候群。50〜79歳の研究では、女性の約4人に1人に見られた

  • 治療の中心は寝方・座り方・立ち方の見直しと、お尻の筋肉の運動。臨床試験では、教育+運動がステロイド注射1回を、8週後も1年後も全体の改善度で上回った

  • 腱の断裂があっても、すべてが手術になるわけではない。部分断裂の約9割は安定、または傷あとになったという報告がある

  • 大転子の骨そのものはストレッチや体操で引っ込めることはできない。見た目は、骨盤の幅・筋肉・脂肪・立ち方でも変わる

  • 転倒後に体重をかけられない痛みは、大腿骨の骨折の可能性がある。その日のうちに受診する

関連コラム

参考文献

  1. Segal NA, et al. Greater trochanteric pain syndrome: epidemiology and associated factors. Arch Phys Med Rehabil. 2007;88(8):988-992. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17678660/

  2. Williams BS, Cohen SP. Greater trochanteric pain syndrome: a review of anatomy, diagnosis and treatment. Anesth Analg. 2009;108(5):1662-1670. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19372352/

  3. Mellor R, et al. Education plus exercise versus corticosteroid injection use versus a wait and see approach on global outcome and pain from gluteal tendinopathy: prospective, single blinded, randomised clinical trial. BMJ. 2018;361:k1662. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29720374/

  4. Bremer T, et al. The efficacy of gluteal tendinopathy treatments: A systematic review. Clin Rehabil. 2025;39(5):600-617. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40223303/

  5. Davies JF, et al. Surgical treatment of hip abductor tendon tears. J Bone Joint Surg Am. 2013;95(15):1420-1425. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23925748/

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  7. Tan LA, et al. High prevalence of greater trochanteric pain syndrome among patients presenting to spine clinic for evaluation of degenerative lumbar pathologies. J Clin Neurosci. 2018;53:89-91. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29685405/

  8. Maldonado DR, et al. High Prevalence of Lumbosacral Pathology in Patients with Greater Trochanteric Pain Syndrome. Arthroscopy. 2022;38(4):1189-1192. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34601010/

  9. Committee for Osteoporosis Treatment of The Japanese Orthopaedic Association. Nationwide survey of hip fractures in Japan. J Orthop Sci. 2004;9(1):1-5. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14767697/

院長監修記事

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武内 晋司郎

(たけうち しんじろう)

シンセルクリニック総院長

三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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