ひざ・肩・股関節の再生医療専門クリニック
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【医師監修】鼠径部とは?場所と痛み・腫れの原因|股関節・筋肉・ヘルニアの見分け方
「鼠径部って、体のどのあたりのことだろう」
「足の付け根が痛い、膨らんでいる気がする。何科に行けばいいのだろう」
鼠径部(そけいぶ)は、日常ではあまり使わない言葉ですが、「鼠径ヘルニア」「鼠径部痛」など、病名にはよく出てきます。鼠径部には、骨・筋肉・血管・神経・リンパ節が集まっているため、同じ「足の付け根の痛み」でも、診る科が整形外科・外科・内科などに分かれます。
この記事では、シンセルクリニック総院長で整形外科の医師である武内晋司郎が、鼠径部の場所と構造、痛み・腫れ・しこりの原因、受診の目安を解説します。この記事は、股関節・筋肉・腱・神経が原因の痛みに重点を置き、ヘルニアやリンパ節の腫れは外科・内科へという線引きもはっきり書きます。
この記事の結論
鼠径部とは、お腹と太ももの境目にある、足の付け根の部分。腰骨の前の出っ張りから恥骨にかけての帯状の場所で、奥に股関節がある。股関節、筋肉、血管、神経、リンパ節が集まるため、原因は一つに決まらず、診る科も分かれる
見分けの出発点は3つ。動かすと痛い(股関節・筋肉・腱・神経→整形外科)、立つと膨らみ、横になると引っ込む(ヘルニア→外科)、硬いしこりや赤い腫れ(リンパ節・できもの・感染→内科・皮膚科・外科)
急ぐサインは、膨らみが戻らず強い痛みや吐き気がある、発熱と急な腫れ、転倒後に歩けないときは、日数を待たずすぐ受診する。動かすと痛む場合は、2週間ほどたっても楽にならなければ整形外科へ
再生医療は、股関節の変形性関節症や長引く筋肉・腱の炎症が対象になりうる。ヘルニア、リンパ節の腫れ、感染、骨折は対象ではない。対象かどうかは診察で判断する
- この記事の結論
- 鼠径部とは?読み方・場所・男女の違い
- 鼠径部には何がある?骨・筋肉・血管・神経・リンパ節の地図
- 痛み・腫れ・しこりは、症状の出方で受診先を考える
- 動かすと痛い|股関節の病気が原因の鼠径部の痛み
- 変形性股関節症・臼蓋形成不全
- 股関節唇損傷・大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)
- 骨折・疲労骨折・大腿骨頭壊死
- 筋肉・腱・恥骨・神経が原因の鼠径部の痛み
- 鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)
- 治療の土台は運動療法
- 神経が原因の痛み・しびれ
- 膨らむ・しこり・腫れ|外科・内科・婦人科で診る病気との線引き
- 鼠径ヘルニア・大腿ヘルニア|外科へ
- 嵌頓(かんとん)|すぐ救急へ
- リンパ節の腫れ|内科へ
- そのほかの膨らみ・しこり
- 何科に行く?受診の目安と、急ぐサイン
- 自宅でできることと、してはいけないこと
- 治療|保存的な治療と、再生医療(幹細胞治療)
- 痛みが長引くときの選択肢|再生医療(幹細胞治療)
- 鼠径部についてよくある質問
- Q. 鼠径部と股関節は、同じ場所ですか?
- Q. 足の付け根が痛いとき、何科に行けばよいですか?
- Q. 鼠径部のしこりは、放っておいてもよいですか?
- Q. 鼠径ヘルニアは、自然に治りますか?
- まとめ|鼠径部は「いろいろな組織が集まる交差点」。症状の出方で行く科が決まる
- 関連コラム
- 参考文献
鼠径部とは?読み方・場所・男女の違い

鼠径部は「そけいぶ」と読みます。「鼠蹊部」「そけい部」と書かれることもありますが、同じ場所です。お腹(下腹部)と太ももの境目にあたる、足の付け根の部分で、左右に1か所ずつあります。脚を持ち上げたときに、足の付け根にできる深いしわのあたりです。
目印は2つの骨です。ひとつは腰骨の前の出っ張り(上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく))、もうひとつは下腹部の中央の下にある恥骨(ちこつ)です。この2か所を斜めに結ぶ丈夫な帯が鼠径靭帯(そけいじんたい)で、鼠径部の目安になります。
▶ 腰骨とは?場所(どこ)と出っ張る理由、痛いときの原因
呼び方 | 指す場所 |
|---|---|
鼠径部(そけいぶ) | お腹と太ももの境目。腰骨の前の出っ張りから恥骨にかけての帯状の部分。医学用語 |
足の付け根・脚の付け根 | 鼠径部とほぼ同じ。日常の言い方 |
股関節(こかんせつ) | 骨盤と太ももの骨がつながる関節。鼠径部の奥にあり、外からは見えない |
股関節は鼠径部のすぐ奥にあるため、「足の付け根が痛い」は、股関節の痛みの代表的な訴え方でもあります。
▶ 股関節はどこ?図解と部位別の痛みの原因

場所は男性も女性も同じです。違うのは、腹壁を斜めに通る短い管(鼠径管(そけいかん))の中身です。男性では精巣につながる血管や管の束(精索)が、女性では子宮を支える組織(子宮円索)が通ります。この管の近くは腹壁が弱くなりやすく、鼠径ヘルニアが起こりやすい場所です。国際的なガイドラインでは、危険因子として、家族歴、男性、加齢などが挙げられています。名前の由来には諸説ありますが、精巣が足の付け根を通って降りてくる様子を、ねずみにたとえたという説明がよく紹介されます。
【武内院長のコメント】
「『足の付け根が痛い』という言葉が指す場所は、人によってかなり違います。股関節のすぐ上、内ももの上のほう、おなかの下のほうなど、さまざまです。まず、痛い場所を指一本で示してみてください。どこが、どの動きで痛むかは、原因を考える大切な手がかりになります。」
鼠径部には何がある?骨・筋肉・血管・神経・リンパ節の地図

鼠径部は、体の中でもいろいろな組織が重なって通る、混み合った場所です。原因が多いのは、そのためです。
組織 | 鼠径部での位置・働き | 関係しやすい症状 |
|---|---|---|
鼠径リンパ節 | 脚・お尻・下腹部・陰部の皮膚からのリンパ液が集まる関所。健康な人でも小さく触れることがある | 腫れ、しこり |
大腿動脈・大腿静脈 | 脚へ向かう太い血管。足の付け根で脈が触れる | 拍動するふくらみ、脚の腫れ |
神経(大腿神経・外側大腿皮神経など) | 太ももの前や外側に向かう | ピリピリ、焼けるような痛み |
鼠径靭帯・鼠径管 | お腹の壁の下の縁と、腹壁を通る管 | 膨らみ(ヘルニア) |
筋肉・腱(腸腰筋、内転筋群など) | 脚を持ち上げる、閉じる、蹴る力を生む | 動かしたときの痛み |
骨・股関節(恥骨、大腿骨頭など) | 体重を支える土台と、動きの中心 | 歩き始めの痛み、引っかかり |
鼠径靭帯・縫工筋・長内転筋で囲まれた三角形は大腿三角(だいたいさんかく)と呼ばれ、外側から内側へ大腿神経・大腿動脈・大腿静脈・リンパ管が並んで通ります。筋肉では、脚の付け根の深くを通る腸腰筋(ちょうようきん)と、恥骨から太ももの内側へ伸びる内転筋群(ないてんきんぐん)が、鼠径部の痛みに深く関わります。
▶ 腸腰筋とは?場所・働き・硬いと弱いで起きること
▶ 内転筋とは?場所・働き・痛みの原因
▶ 股関節の筋肉とは?前・後ろ・横・内側・深層の地図

自分で確かめるときは、軽く触れるだけにしてください。足の付け根で脈が触れるのは普通のことですが、脈に合わせて拍動するふくらみが触れる場合は、血管の病気の可能性があるため早めに受診してください。
痛み・腫れ・しこりは、症状の出方で受診先を考える

鼠径部の症状は、原因が多すぎて整理しにくいものです。最初の見分けは「動かすと痛いのか、膨らむのか、触れるしこりがあるのか」の3つです。次の表は診断ではなく、受診先を考える目安です。
気づいたこと | 考える病気の例 | 目安の受診先 |
|---|---|---|
歩き始め、立ち上がり、靴下をはくときに痛い | 変形性股関節症、臼蓋形成不全、股関節唇損傷 | 整形外科 |
運動中〜運動後に痛む。蹴る、切り返す、腹筋で痛い | 内転筋・腸腰筋・腹筋の付け根の傷み(鼠径部痛症候群)、恥骨まわりの痛み | 整形外科(スポーツ) |
太ももの前や外側が、ピリピリ・焼けるように感じる | 外側大腿皮神経の圧迫、腰の神経の問題 | 整形外科 |
立つ・力むと膨らみ、横になると引っ込む | 鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア | 外科(消化器外科) |
硬いしこり。痛む場合も痛まない場合もある | リンパ節の腫れ、粉瘤・脂肪腫などのできもの | 内科・皮膚科・外科 |
赤く熱を持った腫れと発熱 | 感染(リンパ節炎、膿瘍) | 内科・皮膚科(急ぐ) |
陰嚢の腫れ・痛み(男性)/生理に合わせた痛み(女性) | 精巣上体炎など/子宮内膜症など | 泌尿器科/婦人科 |
膨らみが戻らず、強い痛みや吐き気がある | ヘルニアの嵌頓(かんとん)の疑い | 救急(すぐ) |
判断がつかない場合は、まず整形外科か、かかりつけの医師に相談してください。原因を8つに分けた記事もあります。
▶ 足の付け根が痛い…これって股関節?リンパ?女性に多い原因

【武内院長のコメント】
「『横になると引っ込むから、大丈夫だろう』と考えてしまいがちですが、引っ込むことは、ヘルニアの典型的な特徴でもあります。膨らみが出たり引っ込んだりするときは、整形外科ではなく、まず外科で診てもらってください。どの科に行くのが近道かを早く見つけることが、遠回りを防ぎます。」
動かすと痛い|股関節の病気が原因の鼠径部の痛み

動かしたときに鼠径部が痛む場合、まず疑うのは股関節の中の病気です。日本の研究(臼蓋形成不全にともなう変形性股関節症で、人工股関節の手術を受けた369人・443関節)では、股関節が原因の痛みのうち、鼠径部に出ていたのは89%、つまり10人に9人近くでした。お尻は38%、太ももの前は33%、膝は29%でした。
変形性股関節症・臼蓋形成不全
股関節の軟骨がすり減って炎症が起きる病気が変形性股関節症です。日本人では、生まれつき受け皿が浅い臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)が背景にあることが少なくありません。歩き始めの数歩が痛い、靴下がはきにくい・爪が切りにくい、長く歩くと足の付け根が重く痛む、といった症状が目安です。
▶ 臼蓋形成不全症は歩けなくなる?進行を防ぐ方法
▶ 股関節のレントゲンでわかること
股関節唇損傷・大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)
受け皿の縁にある軟骨の輪(関節唇(かんせつしん))の傷や、骨の形が原因で骨がぶつかるFAIでは、股関節を深く曲げたときに足の付け根の奥がズキッと痛みます。立ち上がりや車の乗り降りで出やすい痛みです。
▶ 股関節唇損傷とは?症状・原因・治療法
大切なのは、画像で骨の形が見つかったことと、それが痛みの原因であることは別という点です。症状のない人の股関節を調べた26の研究(2,114関節)のまとめでは、FAIに特徴的な骨の変化(カム変形)が約37%に見つかり、関節唇の傷は、報告した7つの研究で、MRIで約68%に見つかりました。画像だけで決めず、症状と診察を合わせて判断します。
▶ 関節のMRI検査とは?レントゲンとの違い
骨折・疲労骨折・大腿骨頭壊死
体重をかけると足の付け根が強く痛む、転倒のあとに歩けない、という場合は骨折の可能性があります。骨粗しょう症のある方は、軽い転倒でも大腿骨の付け根を骨折することがあります。長距離を走る方では疲労骨折、股関節の骨の血流が悪くなる大腿骨頭壊死も、足の付け根の痛みで始まります。休めば自然に治る痛みではないため、早めの画像検査が必要です。
▶ 大腿骨頸部骨折とは?症状・手術・リハビリ
▶ 大腿骨頭壊死とは?初期症状・やってはいけないこと
【武内院長のコメント】
「足の付け根の痛みを『年のせい』『筋肉痛だろう』と決めつけて、我慢を続けてしまう方は少なくありません。股関節の中の病気は、見た目では分かりません。靴下がはきにくい、歩き始めが痛いなど思い当たることがあれば、画像検査で軟骨や骨の状態を確かめておくことをおすすめします。」
筋肉・腱・恥骨・神経が原因の鼠径部の痛み

股関節の中に異常がなくても、鼠径部は痛みます。鼠径部には腸腰筋、内転筋、腹筋の付け根が集まり、恥骨に付いているためです。股関節まわりの痛みを整理した総説でも、関節の中、関節の外(腸腰筋の腱の炎症、内転筋の傷み、恥骨まわり)、骨の疲労骨折まで、原因は幅広いと説明されています。
鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)
蹴る、方向を急に変える動作を繰り返す競技の選手に多い痛みを、まとめて鼠径部痛症候群と呼びます。国際的な合意(ドーハ合意)では、スポーツ選手の鼠径部の痛みを、①内転筋・腸腰筋・鼠径管まわり・恥骨まわりが原因の4つ、②股関節が原因のもの、③そのほか(神経、骨、腰の病気など)の3つに分けています。恥骨まわりの痛みは、下腹部の下から股の中央付近に出て、腹筋や走る動作、咳で強まることがあります。
鼠径部の痛みで受診した100人のスポーツ選手(ほとんどが男性のサッカー選手)を調べた研究では、内転筋が原因の痛みが61%で最も多く、10人に4人強では原因が複数重なっていました。痛みの原因が一つとは限らないことが分かります。
▶ 肉離れとは?症状から早く治すコツまで
▶ 腸腰筋が痛い原因|押すと痛い・腰痛との関係と対処法
治療の土台は運動療法
内転筋が原因の長引く痛みがある68人のスポーツ選手を2つのグループに分けた無作為化比較試験では、8〜12週間、骨盤まわりの筋肉の力と協調性を積極的に鍛える運動療法を行ったグループでは23人が、痛みなく元のレベルのスポーツに復帰できました。鍛える運動を含まない理学療法のグループでは4人でした。近年の総説でも、指導を受けながら行う運動療法が最初の治療として勧められています。
神経が原因の痛み・しびれ
鼠径部から太ももの前や外側にかけて、ピリピリ、焼けるような感じが続くときは、神経が関係している可能性があります。太ももの外側の感覚を受け持つ外側大腿皮神経が骨盤の前で圧迫されると、そのような症状が出ます(感覚異常性大腿痛)。年間の発症は人口10万人あたり32人と見積もられ、肥満や糖尿病の増加に合わせて増えているとされます。
腰の神経の圧迫でも、足の付け根から太ももに痛みやしびれが出ます。股関節を動かしても痛みが変わらず、立っているだけ、歩くだけでしびれる場合は、腰が関わっている可能性があります。
▶ 坐骨神経痛の症状・原因・やってはいけないこと
▶ 太ももが痛い原因を部位別に解説
【武内院長のコメント】
「運動を続けている方ほど、『休んだら下手になる』と、痛みを押して続けてしまいがちです。原因が内転筋なのか、腸腰筋なのか、股関節の中なのかで、休み方も再開のしかたも変わります。まず原因を整理して、動かしてよい範囲を決めることが、結局は復帰への近道になると考えています。」
膨らむ・しこり・腫れ|外科・内科・婦人科で診る病気との線引き

ここからは、整形外科ではなく外科、内科、皮膚科、婦人科、泌尿器科で診る病気です。診断と治療は、それぞれの科の医師が行います。
鼠径ヘルニア・大腿ヘルニア|外科へ
鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)は、お腹の壁の弱い部分から、腸や脂肪などが皮膚の下に出てくる病気です。立つ、力む、咳をするときに膨らみ、横になると引っ込むのが典型です。初期は痛みがなく、重だるさだけのこともあります。診断は、診察だけでつくことがほとんどで、まれに超音波検査を使います。世界では年間2,000万人以上が手術を受けているとされます。
国際的なガイドラインでは、症状のあるヘルニアは手術で治療するとされ、症状がほとんどない男性では経過を見る選択もありますが、多くの人は最終的に手術が必要になるとされています。大腿ヘルニアは、鼠径部よりやや下に出るタイプで、細身の中高年の女性に多く、嵌頓を起こしやすいとされます。当院は手術を行わないため、膨らみに気づいたら外科に相談してください。
嵌頓(かんとん)|すぐ救急へ
飛び出した腸が締め付けられ、戻らなくなった状態です。膨らみが硬くなって戻らない、強い痛み、吐き気や嘔吐があるときは、夜間や休日でも、すぐに救急で受診してください。
リンパ節の腫れ|内科へ
鼠径部のリンパ節は、脚、お尻、下腹部、陰部の炎症や感染に反応して腫れます。足のけがや水虫のあとに、押すと痛いしこりが数日で現れた場合は、感染に伴う腫れのことが多く、原因が治まると小さくなります。
米国の家庭医向けの総説では、リンパ節の腫れの多くは良性で自然に治まるとされています。一方で、悪性の病気の危険因子として、40歳を超えている、男性、発熱・寝汗・原因不明の体重減少があることが挙げられています。2週間たっても小さくならない、少しずつ大きくなる、硬いしこりは、痛みがなくても内科などで早めに調べてください。リンパ節の腫れは、再生医療の対象ではありません。
そのほかの膨らみ・しこり
ヌック管水腫:女性にまれな、鼠径部の管に水がたまる病気。押しても引っ込まない膨らみで、超音波検査でヘルニアと区別する(外科・婦人科)
皮膚のできもの・膿瘍:粉瘤や脂肪腫はやわらかく動くしこり。赤く熱を持って痛む場合は膿がたまっている可能性がある(皮膚科・外科)
血管の病気:拍動するふくらみは動脈瘤、立つと目立つこぶ状のふくらみは静脈瘤の可能性がある(血管外科)
男性の陰嚢まわりは泌尿器科、女性で生理の周期に合わせて痛むときは婦人科へ
【武内院長のコメント】
「足の付け根のしこりは、自分で良いもの・悪いものを判断できません。痛くないから安心とも、痛いから悪いとも言えないのです。こうした場合は、整形外科にこだわらず、外科や内科に相談してください。整形外科の病気ではないと考えられるときは、適した科をお伝えするようにしています。」
何科に行く?受診の目安と、急ぐサイン

迷ったときの基本は、動かして痛む場合は整形外科、膨らみは外科、しこり・腫れ・発熱は内科や皮膚科です。急ぐサインは、日数を待たずに受診します。
状態 | 受診の目安 |
|---|---|
膨らみが戻らず、強い痛み・吐き気・嘔吐がある | すぐ救急で受診(嵌頓の疑い) |
発熱があり、足の付け根が急に腫れて赤く熱い | 当日〜翌日までに内科・救急で受診 |
転倒や強い外傷のあと、体重をかけると痛くて歩けない | 当日中に受診(骨折の疑い) |
脚に力が入らない、しびれが広がる、排尿や排便がうまくできない | すぐ受診(神経の障害の疑い) |
脚が急に腫れる・冷たい・色が悪い。拍動するふくらみがある | すぐ受診(血管の病気の疑い) |
立つと出る膨らみに気づいた | 1週間以内を目安に外科で受診 |
安静でも、夜も痛む。体重をかけると痛む | 1週間以内を目安に整形外科で受診 |
しこりが2週間たっても小さくならない、または大きくなる | 早めに内科・外科で受診(痛みがなくても) |
動かすと痛い。休んでも2週間ほどたっても楽にならない | 整形外科で受診 |
運動後に軽く痛むが、2〜3日で軽くなる | 運動量を減らして様子を見る。繰り返すなら整形外科 |
整形外科では、痛む場所と動きを詳しく伺い、股関節や脚を動かして痛みの出方を確かめます。必要に応じて、レントゲンで骨の形と軟骨のすき間を、MRIで関節唇・筋肉・腱・骨の中を調べます。米国の家庭医向けの総説は、診察で内転筋、恥骨、鼠径管まわり、腸腰筋の4か所を順に確かめること、腸腰筋が関わる痛みには股関節の病気を伴うことが多いため、レントゲンとMRIを使うことを勧めています。
▶ 股関節・足の付け根が右だけ・左だけ痛い原因
自宅でできることと、してはいけないこと

原因がはっきりしない間は、痛みを強める動きを減らすことが基本です。
痛む動作を減らす:脚を大きく開く、深くしゃがむ、片脚で立つ、蹴る動作は控えめに
強く押したり、揉んだりしない:足の付け根には血管やリンパ節、神経が集まっています。深く押し込む必要はありません
痛みが強いうちは、無理にストレッチをしない:伸ばして痛みが強まるときは、腱に負担がかかっています
膨らみがあるうちは、力む運動を控える:外科で診てもらうまで、重い物を持つ、強い腹筋運動は控えめにする
温める・冷やす:運動直後の強い痛みは冷やす。慢性的な重だるさは温めて楽になることがある。赤く腫れて熱を持つときは温めない
痛みが落ち着いたら、お尻や太もも、体幹の筋肉を無理なく使えるようにします。
▶ 腸腰筋の鍛え方|座って・寝てできる筋トレと鍛えすぎの注意
避けたいのは、膨らみを押し戻して様子を見続けること、腫れたリンパ節を強く揉むこと、薬で痛みを隠したまま運動を続けることです。
【武内院長のコメント】
「自宅でできることは、あくまで原因をはっきりさせるまでのつなぎです。痛みが続くのに『筋肉痛だろう』と思い込んで、ストレッチを増やしてしまう方もいます。痛みが強まるなら、いったん手を止めて、原因を調べることを優先してください。」
治療|保存的な治療と、再生医療(幹細胞治療)

治療は、痛みの原因がどこにあるかで変わります。一般的な考え方を整理します。
原因 | 治療の考え方(一般論) |
|---|---|
筋肉・腱(内転筋、腸腰筋など) | 痛む動作を減らし、段階的な運動療法で骨盤まわりの筋肉を整える。薬や注射で痛みをやわらげることもある |
股関節唇損傷・FAI | まず運動療法と生活の工夫。改善が乏しいとき、関節鏡手術が検討される |
変形性股関節症 | 薬、運動療法、杖などの補助、関節内の注射。進行した場合は人工股関節置換術が検討される |
骨折・ヘルニア・リンパ節の腫れ・感染 | 固定や手術、または外科・内科など、それぞれの科で治療する(再生医療の対象ではない) |
痛みが長引くときの選択肢|再生医療(幹細胞治療)
当院は、手術や保険診療を行わない、再生医療のクリニックです。鼠径部の痛みの背景に、股関節の軟骨がすり減る変形性股関節症がある場合や、内転筋・腸腰筋などの筋肉や腱の炎症が、薬やリハビリを続けても長引いている場合は、自己脂肪由来幹細胞治療の対象になりうると考えています。一方、受傷直後の肉離れ、運動後の筋肉痛、骨折そのもの、感染によるリンパ節の腫れ、ヘルニアなどは対象ではありません。方法は、お腹などから脂肪を少量採取し(局所麻酔・日帰り)、そこから幹細胞を取り出して約4〜6週間培養し、痛みの原因となる部位に注射します。幹細胞は「体の修復を担当する細胞」で、傷んだ軟骨や腱の修復に働きかけ、炎症をしずめることを目指します。ご自身の細胞・血液を用いるため、拒絶反応のリスクはほぼありません。自由診療(保険外)であり、効果には個人差があります。痛みの中心が股関節の中なのか、筋肉や腱なのか、別の科の病気なのかで考え方が変わるため、対象になるかどうかは、診察で判断します。
股関節に脂肪由来の幹細胞を注射した日本の研究(129人・168関節)では、股関節の症状の点数が、治療から6か月後に平均10.6点(95%信頼区間8.3〜12.8)上がっていました。ただし、比べるグループのない後ろ向きの研究です。股関節への注射治療を調べた総説(20件・735人)でも、有望な結果が多い一方、研究の数と質は限られ、細胞を使った研究は8件にとどまっていました。膝に比べて、股関節のデータは少ないのが現状です。
▶ 変形性股関節症の再生医療(幹細胞治療)完全ガイド
▶ 「もう手術しかない」と諦める前に|変形性股関節症と再生医療
▶ 股関節の再生医療について
【武内院長のコメント】
「再生医療は、すべての鼠径部の痛みに向いているわけではありません。ヘルニアやリンパ節の腫れのように、別の科で治すべき病気もあります。まず痛みの原因が何かを一緒に整理することが出発点で、そのうえで、対象になるかどうかをお伝えします。」
鼠径部についてよくある質問

Q. 鼠径部と股関節は、同じ場所ですか?
同じではありません。鼠径部は体の表面に近い場所の名前で、股関節はその奥にある関節です。位置が近いため、股関節の痛みが「鼠径部の痛み」として感じられることが多くあります。
Q. 足の付け根が痛いとき、何科に行けばよいですか?
歩く、脚を上げる、立ち上がるなど、動かすと痛むなら整形外科です。立つと膨らんで横になると引っ込むなら外科、しこりや腫れ、発熱があるなら内科や皮膚科です。判断がつかない場合は、まず整形外科かかかりつけの医師に相談してください。
Q. 鼠径部のしこりは、放っておいてもよいですか?
痛みの有無だけでは、良性か悪性かを判断できません。2週間たっても小さくならない、大きくなる、発熱や体重の減少を伴う場合は、早めに内科や外科で調べてください。
Q. 鼠径ヘルニアは、自然に治りますか?
成人の鼠径ヘルニアは、自然に治ることを期待しにくいとされ、症状があるものは手術が勧められています。ただし、膨らみの原因がヘルニアとは限らないため、まず外科で診察を受けてください。股関節や筋肉の痛みのご相談は、こちらからお受けしています。
▶ ご予約・ご相談のご案内
まとめ|鼠径部は「いろいろな組織が集まる交差点」。症状の出方で行く科が決まる

鼠径部とは、お腹と太ももの境目、足の付け根の部分。奥に股関節があり、骨・筋肉・血管・神経・リンパ節が集まるため、痛みの原因は一つに決まらない
動かすと痛いなら股関節・筋肉・腱・神経(整形外科)。立つと膨らみ横になると引っ込むならヘルニア(外科)。しこり・赤い腫れ・発熱ならリンパ節や感染(内科・皮膚科)
膨らみが戻らず強い痛みや吐き気がある、発熱を伴う急な腫れ、転倒後に歩けないときは日数を待たずにすぐ受診。動かして痛む場合は、2週間ほどたっても楽にならなければ整形外科へ
再生医療は、股関節の変形性関節症や、長引く筋肉・腱の炎症が対象になりうる。ヘルニア、リンパ節の腫れ、感染、骨折は対象ではない。対象かどうかは診察で判断する
股関節・足の付け根・太ももの痛みの全体像は、こちらにまとめています。
▶ 股関節の痛みの原因と治し方(総合ガイド)
▶ お問い合わせ・ご相談
関連コラム
参考文献
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院長監修記事

武内 晋司郎
(たけうち しんじろう)
シンセルクリニック総院長
三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。
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