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【医師監修】股関節サポーターの選び方|医療用・ベルトの効果とつけ方

2026.10.25

「股関節が痛くて、歩くのがつらい。ドラッグストアでサポーターを買ってみたけれど、これで合っているのだろうか」

「医療用の股関節サポーターとベルトは、どう違うのだろう。つけていれば股関節を守れるのだろうか」

ご相談では、「股関節のサポーターは、どれを選べばいいですか」「寝るときもつけていいですか」と聞かれることがよくあります。実は、股関節は膝よりも深いところにある関節で、サポーターで外から直接固定することが難しいのです。何を期待するのかを決めてから選ぶことが大切です。

この記事では、シンセルクリニック総院長で整形外科の医師である武内晋司郎が、股関節サポーターの種類、医療用と市販品の違い、症状別の選び方、正しいつけ方、つけすぎのリスク、受診の目安について解説します。特定の商品名やメーカー名は出しません。

この記事の結論

  • 股関節サポーターは、股関節を支える・温める・動きを少し抑えて安心感を得るための補助具。痛みの原因そのものを治すものではない

  • 種類は大きくベルト型・スパッツ(ショーツ)型・医療用の装具の3つ。痛む動作と目的に合わせて選ぶ。ヒッププロテクターは、転倒時に骨を守る別のもの

  • 効果の研究はまだ少ない。変形性股関節症の20人が1週間つけた研究では階段での痛みが28%減ったが、小さな研究。手術後の脱臼予防では、差が出なかった研究もある

  • つけ方は、お尻の横の出っ張り(大転子)を通る高さに合わせ、きつすぎない強さで。痛い動作のときに使い、寝るときは外すのが基本。つけっぱなしは筋力低下や皮膚トラブルのもと

  • 夜も痛む、痛みが数週間続く、転んだあとに体重をかけられないときは、サポーターで様子を見ず、整形外科へ

股関節サポーターとは?期待できること・できないこと

股関節サポーターとは?期待できること・できないこと

股関節サポーターは、腰から太ももの付け根にかけて巻く・はく、股関節まわりの補助具です。痛みを和らげたり、不安を減らしたりする目的で使われます。期待できるのは、次の4つです。

  • 支える:歩くときのぐらつき感を減らす

  • 温める:冷えて強くなる痛みやこわばりをやわらげる

  • 動きを抑える:痛む方向への大きな動きを抑える(硬い装具ほど強い)

  • 安心感を得る:動くことへの不安を減らす

反対に、サポーターでできないこともあります。すり減った軟骨を元の厚さにする、骨の形を変える、傷んだ筋肉や腱を治すといったことはできません。股関節は、骨盤のくぼみ(臼蓋:きゅうがい)に太ももの骨の先(大腿骨頭)がはまり込む関節で、まわりを分厚い筋肉と脂肪が覆っています。膝のように外側から直接おさえる形にならないため、サポーターは骨盤と太ももを通して間接的に働きかける道具になります。
▶ 股関節はどこ?図解と部位別の痛みの原因

先日、こんなご相談をいただきました。70代の女性で、股関節の痛みがあっても手術は望まれていない方です。出かけるときは、傘と杖の両方が手放せないとのことでした。転ばないよう気を張って歩く毎日は、疲れますよね。サポーターや杖は歩きを助ける道具ですが、できることとできないことがあります。

目的別の早見表

こんなとき

考えやすいタイプ

ひとこと

冷えると痛い。歩き始めがこわばる

保温性のあるスパッツ型・薄手のベルト型

軽い補助。まず試しやすい

長く歩く日・立ち仕事の日に不安がある

ベルト型(骨盤〜大転子まわり)

その日だけ使う。習慣にしすぎない

痛みが強く、動きを抑えたい

医療用の装具

医師に相談してから。自己判断で長く使わない

手術のあと

主治医が指示した装具

市販品に変えない。指示の期間を守る

固定が強いほど良いわけではありません。強く固めるほど動きは制限され、使われない筋肉は落ちやすくなります。軽い痛みには軽いものから試し、足りなければ医師に相談する順番が基本です。

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『サポーターをつけると楽になるけれど、これで治るのでしょうか』と聞かれることがよくあります。楽になるのは大切ですが、サポーターは痛みを和らげる助けで、原因を取り除くものではありません。楽なうちに、原因を確かめ、筋肉の使い方も整えていきましょう。」

股関節サポーターの種類|ベルト型・スパッツ型・医療用の装具

股関節サポーターの種類|ベルト型・スパッツ型・医療用の装具

似た形の商品がたくさんありますが、形と目的で整理すると、次の5つに分けられます。

種類

形・つける場所

主な目的

注意したい点

股関節ベルト(トロカンターベルト型)

骨盤の下のほう〜お尻の横の出っ張り(大転子)を、ぐるりと巻く

骨盤と股関節まわりを軽く締め、歩行時の安定感を得る

きつく巻くと、足の付け根やお腹を圧迫する

スパッツ・ショーツ型

腰から太ももまでを覆う、はくタイプ

保温と軽い圧迫。太ももの筋肉を支える

サイズが合わないと、ずれる・食い込む

骨盤ベルト

腰骨の少し下を巻く。産後に使われることが多い

骨盤まわりを支える

股関節ベルトより位置が上。目的が違う

医療用の股関節装具

骨盤ベルトと太もものバンドを、支柱やヒンジでつなぐ

股関節の動きを制限する(術後・痛みが強いとき)

医師の指示のもとで。長く使うと筋力が落ちる

ヒッププロテクター

下着のポケットに、硬い・柔らかい保護パッドを入れる

転倒したときの骨折を防ぐ

痛みをとる道具ではない。つけ続けるのが難しい

ここで大切なのは、「骨盤ベルト」と「股関節ベルト」は同じではないということです。骨盤ベルトは、腰骨の少し下を巻き、骨盤そのものを支える目的で作られています。股関節ベルトは、もう少し下のお尻の横の出っ張り(大転子)を通ります。
▶ 大転子とは?場所・痛い原因・出っ張りの理由

骨盤ベルトは腰骨の少し下、股関節ベルトは大転子を通る高さに巻くという違いを示した横向きの図
巻く高さの違い(横から見た図)。①骨盤ベルトは腰骨の少し下を巻きます。②股関節ベルトは、もう少し下の、お尻の横の出っ張り(大転子、オレンジの丸)を通る高さに巻きます。点線が巻く高さです。

赤ちゃんの股関節の装具は、まったく別のもの

赤ちゃんの股関節が外れやすい状態(発育性股関節形成不全)では、医師が管理する専用の装具(リーメンビューゲルなど)を使います。大人用のサポーターで代用してはいけません。

医療用とドラッグストアの違い|おすすめの選び方

医療用とドラッグストアの違い|おすすめの選び方

「医療用のほうが効くのでしょうか」「ドラッグストアで買ってもいいですか」という質問も多くあります。違いは、効くかどうかよりも、目的と支える強さにあります。

医療用の装具

ドラッグストア・通販のサポーター

入手

医師の診察を受けて処方・作成

自分で選んで購入

固定の強さ

強いものが多い(動きを制限)

弱〜中(保温・軽い圧迫が中心)

目的

術後の保護、痛みが強いときの動きの制限

日常生活での補助、冷え対策、安心感

サイズ合わせ

採寸や調整をしてもらえる

自分で測る。合わないと効果が薄い

費用の扱い

医師が治療に必要と判断した装具は、健康保険の対象になる場合がある

原則として全額自己負担

医師が治療に必要と判断して作った「治療用装具」は、いったん全額を支払い、あとから保険者へ申請して一部が戻る仕組みがあります。対象かどうかは保険者に確認してください。なお、当院は保険診療の外来を行っていないため、装具の処方はできません。医療用の装具をご希望の場合は、保険診療を行っている整形外科でご相談ください。

ドラッグストアで買うときの5つのチェック

  1. 目的と場所を決める:温めたいのか、歩行時の安心感がほしいのか、動きを抑えたいのか

  2. サイズ表で選ぶ:「Mだと思う」ではなく、測った寸法で選ぶ(測り方は後の項目で説明します)

  3. 素材と調整しやすさ:夏は通気性、冬は保温性。面ファスナーなどで強さを変えられると使いやすい

  4. 肌への当たり:縫い目が肌に直接当たらないか、素材は肌に合うか(ラテックスなどに過敏な方は素材表示を確認)

  5. 合わなければやめる:楽にならない、かえって痛い、しびれる場合は無理に続けない

値段や「医療用」という表示だけで選ばず、基準は、痛む動作に合っているか、サイズが合っているか、つけ心地がよいかの3つです。

サポーターのほかにできる補助|杖・足底板・靴

負担を減らす道具は、サポーターだけではありません。杖は股関節の負担を軽くし、転倒の予防にもなります。脚の長さに差があるときは、補高や足底板(インソール)で体重の偏りを整えることがあります。靴は、クッション性があり、かかとが安定したものを選び、ヒールの高い靴や底の薄い靴は避けます。
▶ 膝に優しい靴の選び方(股関節にも共通する考え方)

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『医療用と書いてあるものを買えば安心ですよね』と聞かれることがあります。体に合うかどうかは、言葉では決まりません。痛みの原因に合った強さで、サイズが合っていることのほうが大切です。迷ったら、つけた状態で一度見てもらうのが確実です。」

症状・病気別|どんなときに使う?使わないほうがいい?

症状・病気別|どんなときに使う?使わないほうがいい?

股関節まわりの痛みには、さまざまな原因があります。サポーターが役立つ場合と、役立ちにくい場合があります。

状態

サポーターの位置づけ

ポイント

変形性股関節症(軽〜中等度)

歩行や階段のときの補助として使われることがある

運動療法・体重管理・杖と組み合わせる

臼蓋形成不全

痛みが強い日の補助。形そのものは変えられない

筋力運動と生活の工夫が中心

股関節唇損傷

術後は主治医の指示した装具。そうでなければ補助にとどまる

引っかかる痛みは受診を。股関節唇損傷とは

大転子の痛み(お尻の横)

ベルトが痛い場所に当たると悪化することがある

圧迫されない位置・強さにする

人工股関節の術後

主治医が必要とした場合のみ

自己判断で市販品に変えない

変形性股関節症・臼蓋形成不全のとき

痛みが強い日や長く歩く日に、補助として使う方がいます。ただし、サポーターだけで病気の経過を変えることは期待できません。体重管理(体重が重いほど股関節の負担は増えます)、お尻や太ももの筋肉の運動、杖と組み合わせることが大切です。
▶ 変形性股関節症とは?症状から治し方まで
▶ 変形性股関節症の杖の選び方と正しい使い方
▶ 臼蓋形成不全とは?原因・症状・対処法

お尻の横が痛い・しびれがあるとき

お尻の横の痛みは、股関節の中ではなく、外側の腱やクッション(滑液包)が原因のことがあります。痛い場所をベルトで強く締めると、かえって刺激になります。お尻から脚のしびれがあるときは、腰や神経の病気かもしれず、先に原因の確認が必要です。
▶ 股関節・足の付け根が右だけ・左だけ痛い原因
▶ 梨状筋症候群とは?お尻から足が痛い・しびれる原因

人工股関節の術後のとき

人工股関節の手術のあと、脱臼を防ぐために装具を使うかどうかは、病院や術式で方針が異なります。主治医が指示した場合は、その期間を守り、市販品で代用したり、自分の判断で外したりしないでください。
▶ 人工股関節の手術後に「やってはいけないこと」

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方に、痛い場所を指1本で指していただくと、足の付け根、お尻の横、腰のどこなのかがはっきりします。サポーター選びでは『股関節が痛い』のひとことで済ませている方が多いのですが、場所が違えば、向いている道具も変わります。」

股関節サポーターの効果|研究でわかっていること

股関節サポーターの効果|研究でわかっていること

股関節サポーターの効果を調べた研究は、膝に比べてまだ少ない状況です。2015年までの文献をまとめたレビュー論文では、股関節の変形性関節症に対する装具は、無作為化比較試験で調べられていないとされています。その後の報告を紹介します。

研究

対象

結果

ドイツ(2026年)

軽〜中等度の変形性股関節症の20人。1週間、装具をつけた

階段を歩くときの痛みが28%減った。動きの速さが増え、階段を上るときの股関節の内側へのひねりが小さくなった

日本(2009年)

痛みのある変形性股関節症の7人。専用の装具をつけて歩行を分析

歩き方が、健康な人の歩き方に近づく傾向があった

アメリカ(2025年)

股関節の手術(FAI)のあとの82人を、装具あり・なしに分けた

6週後の痛みの点数に有意な差はなかった(装具あり1.8点、なし2.3点)

アメリカ(2012年)

人工股関節の再置換術を受けた1,211股関節

90日以内の脱臼は、装具あり5.2%、なし5.7%で差はなかった

デンマーク(2025年)

妊娠中の腰・骨盤の痛みに対する骨盤ベルト。7つの研究をまとめた

痛みは小幅に減る傾向があったが、証拠の確かさは低い〜非常に低いとされた

この研究から言えること

ドイツの研究では、装具をつけると階段での痛みが減りました。ただし、20人を1週間調べた比べる相手のいない小さな研究で、装具メーカーの資金提供も受けています。日本の研究も7人でした。

一方、アメリカの無作為化比較試験では、手術のあとに装具をつけても痛みの点数は変わらず、再置換術の後でも脱臼を減らす効果は示されませんでした。後者の論文は、装具の日常的な使用は支持されないと結論づけています。

まとめると、「つけると楽になる方はいるが、病気の経過や術後の脱臼を防ぐ道具としては、はっきりした根拠がない」のが現状です。痛みを和らげる補助として使い、期待しすぎないことが大切です。

効果がはっきりしているのは、運動

股関節の変形性関節症では、運動療法の効果のほうが確かめられています。2014年のコクランレビューでは、運動をした人は、しなかった人より痛みの点数が100点満点で約8点低く、日常動作の点数も約7点よい結果でした。サポーターも、運動と組み合わせることが前提です。
▶ 股関節ストレッチおすすめ10選

【武内院長のコメント】
「『サポーターが効くかどうか』を、はっきり言い切れる研究は、まだ多くありません。正直にお伝えすると、そこが現状です。私は、『つけて楽に動けるなら、その間に筋肉を整えていく』という使い方を勧めています。サポーターはゴールではなく、運動を続けるための補助という位置づけです。」

股関節ベルトの正しいつけ方とサイズの測り方

股関節ベルトの正しいつけ方とサイズの測り方

サポーターはつける場所と強さで楽さが変わります。一般的な考え方を紹介しますが、実際には説明書にしたがってください。

サイズの測り方(一般的な目安)

  1. 薄着で立ち、お尻の横の出っ張り(大転子)を指で探し、メジャーが床と平行になるよう、締めすぎずに一周させる

  2. 商品のサイズ表にあてはめる。測る位置が商品によって違うことがあるため、必ず説明書の測り方を確認する

つけ方の手順(ベルト型)

  1. 仰向けか立った姿勢で、ベルトの中心をお尻の横の出っ張り(大転子)の高さに合わせる

  2. 骨盤に沿って巻き、前で止める。ねじれやしわをのばす

  3. 強さは「軽く支えられている」程度。座ったときに、お腹や足の付け根が食い込まない

  4. 歩いてみて、ずれない・脚の付け根が圧迫されない・しびれない、を確かめる

股関節ベルトを大転子の高さに合わせ、骨盤に沿って巻き、指が入る強さにそろえる3つの手順を示した図
股関節ベルトのつけ方(ベルト型)。①ベルトの中心をお尻の横の出っ張り(大転子)の高さに合わせる ②ねじれやしわをのばし、骨盤に沿って巻いて前で止める ③指が1〜2本入る強さに調整する。

つける時間の目安

  • 最初は、痛む動作のとき(長い距離を歩く、立ち仕事、階段の多い日)だけ試す

  • 寝るときは外す。締めつけで血行が悪くなったり、皮膚が傷んだりすることがあります

  • 2〜3時間ごとに外して、皮膚の赤みやかぶれがないか確認する。汗をかいたら替える

  • つけるのは、むくみの少ない朝がおすすめ。夕方に初めてつけると、きつさを読み違えやすくなります

こんなときは、すぐにはずす

足の付け根やお腹が苦しい、脚がしびれる、皮膚が赤くなる・かゆい、つけているのに痛みが強くなる。これらが続くときは、サイズが合っていないか、痛みの原因が別にある可能性があります。

つけすぎのデメリット|やめどきと、頼りすぎないために

つけすぎのデメリット|やめどきと、頼りすぎないために

サポーターは便利ですが、つけっぱなしにすると、かえって体を弱らせることがあります。膝のサポーターでも同じ注意があり、考え方は共通します。
▶ 膝サポーターの選び方|医療用との違い・デメリット・症状別

つけすぎで起こりうること

どうして起こるか

対策

お尻・太ももの筋力が落ちる

支えを外部に任せ、筋肉が働く機会が減る

つける時間を限る。運動を並行する

つけないと不安になる

「支えがないと動けない」という感覚が強まる

短時間ずつ外す練習をする

皮膚のかぶれ・あせも

締めつけと汗

肌着の上から、こまめに替える

血行が悪くなる、足がむくむ

強く巻きすぎる

指が1〜2本入る程度の強さ

痛みの原因に気づくのが遅れる

サポーターで楽になり、受診しない

2〜4週間たっても痛いなら受診

サポーターに頼りすぎないための、3つの習慣

やめどきの目安は、痛みが落ち着いて、つけなくても歩ける日が増えたときです。少しずつ外して試してください。

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『何年も、一日中つけています。外すのが怖いです』と聞くことがあります。気持ちはよくわかります。ただ、長く続くほどお尻の筋肉が働く場面が減ります。痛みが落ち着いている日に、外して短い距離を歩く練習から始めてみてください。」

サポーターで足りないとき|病院の治療と再生医療

サポーターで足りないとき|病院の治療と再生医療

サポーターは補助具なので、痛みが続くときは、原因に合った治療が必要です。病院で行われる主な方法は、次のとおりです。

病院で行う主な治療

手術は、痛みが強く生活に支障がある場合のきちんとした選択肢です。一方で、「手術はまだ早い、でも痛みで困っている」という方も多くいらっしゃいます。

股関節の軟骨がすり減っているときの選択肢|再生医療(幹細胞治療)

変形性股関節症は、膝と並んで、当院の再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)の主な対象です。サポーターや薬、リハビリを続けても股関節の痛みが残り、手術にはまだ踏み切れない、あるいは人工関節の手術はできれば避けたいという方に、選択肢のひとつとして考えられます。幹細胞は「体の修復を担当する細胞」で、傷んだ軟骨の修復に働きかけ、関節の炎症をしずめることを目指す治療です。診察では、レントゲンなどで軟骨のすり減り具合を確認し、お尻の腱や腰など、痛みの原因がほかにないかも合わせて見ます。流れは、お腹などから脂肪を少量採取し(局所麻酔・日帰り)、4〜6週間かけて培養したのち、関節に注射します。ご自身の細胞・血液を用いるため、拒絶反応のリスクはほぼありません。ご相談では、サポーターでどこまで楽になっているかも伺います。自由診療(保険外)で、効果には個人差があります。股関節が対象になるかどうかは、診察で判断します。

▶ 変形性股関節症の再生医療(幹細胞治療)完全ガイド
▶ 「もう手術しかない」と諦める前に|変形性股関節症と再生医療
▶ 股関節の再生医療について

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方から、『サポーターで何とかしのいできたけれど、もう限界です』と伺うことがあります。サポーターを使うこと自体は悪いことではありません。ただ、頼る期間が長くなってきたと感じたら、それは今の痛みの原因をもう一度確かめるタイミングだと思います。」

受診の目安|何科に行く?急いだほうがよいサイン

受診の目安|何科に行く?急いだほうがよいサイン

股関節の痛みは、整形外科で診てもらえます。次の表を目安にしてください。

状態

受診の目安

転倒・尻もちのあと、体重をかけると痛い

その日のうちに受診(骨折の可能性)

脚に力が入らない。しびれが広がる。排尿・排便の感覚がおかしい

早めに受診(腰の神経の病気の可能性)

夜も痛い。寝返りで目が覚める。足の付け根の痛みが数週間続く

整形外科を受診

赤ちゃんの脚の開きが左右で違う、脚の長さが違うと言われた

小児整形外科・整形外科を受診

当院は手術を行うクリニックではありませんが、現在の状態の確認、日常生活での工夫、股関節の変形性関節症があるときの再生医療のご相談をお受けしています。
▶ ご予約・ご相談のご案内

転倒のあとの股関節の痛みについては、大腿骨の骨折を考える必要があります。こちらの記事もご覧ください。
▶ 大腿骨頸部骨折とは?高齢者に多い骨折の症状・手術・リハビリ

【武内院長のコメント】
「相談に来られる方のご家族から、『親が転んでから痛がっている』と伺うことがあります。高齢の方は『年のせい』『打ち身』と我慢しがちです。体重をかけにくそうなときは、受診を勧めてあげてください。」

股関節サポーターについてよくある質問

股関節サポーターについてよくある質問

Q. 股関節サポーターは、寝るときにつけてもいいですか?

基本的には、外して寝ることをおすすめします。締めつけで血行が悪くなったり、皮膚が傷んだりすることがあります。夜に痛みで眠れない場合は、サポーターで抑えようとせず、一度整形外科で原因を確かめてください。

Q. ドラッグストアで買った股関節サポーターで大丈夫ですか?

軽い補助や保温が目的なら、使いやすさで選んで問題ありません。痛みが強い、手術のあと、脚がしびれる場合は、先に医師に相談してください。

Q. 股関節サポーターをつけたまま、運動や散歩をしてもいいですか?

ウォーキングなど衝撃の少ない運動なら、つけたままで構いません。ジャンプや急な方向転換のある運動では、ずれやすく、期待した働きをしないことがあります。

Q. 2〜3週間つけても、痛みが変わりません。どうすればいいですか?

サイズ、つける位置、強さを見直してください。それでも変わらないときは、痛みの原因が別にあるかもしれません。製品を替え続けず、整形外科で原因を確かめてください。

Q. 洗い方や買い替えの目安はありますか?

洗濯表示にしたがって洗い、乾燥機は避けて陰干しにします。汗や皮脂が残ると、かぶれのもとになります。ゴムが伸びた、面ファスナーがとまりにくくなったときは、効果が落ちたサインです。体型が変わったときも、サイズを測り直してください。

Q. 左右兼用と、左右専用では、どちらがよいですか?

軽い痛みや予防なら、兼用で足りることが多いです。痛みが片側に集中し、しっかり支えたいときは、専用のほうが体に沿いやすい場合があります。

Q. 産後の骨盤ベルトと、股関節ベルトは同じですか?

目的と位置が異なります。骨盤ベルトは腰骨の少し下で骨盤を支え、股関節ベルトは大転子の高さを通ります。妊娠中の骨盤ベルトは、痛みが小幅に減る傾向が報告されていますが、証拠の確かさは低いとされています。産婦人科の医師や助産師にも相談してください。

Q. 股関節サポーターは、保険が使えますか?

市販のサポーターは、原則として保険の対象外です。医師が治療に必要と判断して処方した「治療用装具」は、対象になる場合があります。対象かどうかは、装具の種類と加入している保険者によって異なるため、処方した医師と保険者に確認してください。

Q. 高齢の親が転びそうで心配です。ヒッププロテクターは効果がありますか?

コクランレビュー(19の試験・約17,000人)では、施設で暮らす高齢の方で、股関節の骨折が1,000人あたり11人少ない計算でした。一方、自宅で暮らす方では、はっきりした差は見られず、つけ続けることが難しい点も課題とされています。転倒を減らす工夫(足元の整理、筋力運動、骨粗しょう症の治療)と合わせて考えてください。
▶ 骨粗鬆症の治療法とは?薬と注射の違い

まとめ|股関節サポーターは「補助」。目的に合わせて選び、頼りすぎない

まとめ|股関節サポーターは「補助」。目的に合わせて選び、頼りすぎない
  • 股関節サポーターは、支える・温める・動きを抑える・安心感を得るための補助具。痛みの原因を治すものではない

  • 種類はベルト型・スパッツ型・医療用の装具。骨盤ベルトやヒッププロテクターは目的が別

  • 効果の研究は少なく、「つけると楽になる人はいるが、術後の脱臼予防などの根拠は乏しい」のが現状。運動療法の効果のほうが、確かめられている

  • つけ方は、お尻の横の出っ張り(大転子)の高さに合わせ、きつすぎない強さで。寝るときは外す。つけっぱなしは避ける

  • 痛みが数週間続く、夜も痛む、転んだあとに体重をかけられない、といった場合は、サポーターで様子を見ず、整形外科を受診する

関連コラム

参考文献

  1. Beaudreuil J. Orthoses for osteoarthritis: A narrative review. Ann Phys Rehabil Med. 2017;60(2):102-106. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27939833/

  2. Steingrebe H, et al. Effect of hip bracing on stair walking biomechanics and pain in patients with mild-to-moderate hip osteoarthritis: an intervention study. BMC Musculoskelet Disord. 2026;27(1):174. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41668095/

  3. Yamaji T, et al. Biomechanical analysis of gait in patients with painful osteoarthritis of the hip treated with WISH-type hip brace. J Orthop Sci. 2009;14(4):423-430. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19662477/

  4. Hagen MS, et al. A Randomized Controlled Trial of Postoperative Hip Bracing After Arthroscopic Osteoplasty and Labral Repair for Femoroacetabular Impingement Syndrome. Am J Sports Med. 2025;53(14):3332-3340. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41164948/

  5. Murray TG, et al. The use of abduction bracing for the prevention of early postoperative dislocation after revision total hip arthroplasty. J Arthroplasty. 2012;27(8 Suppl):126-129. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22608688/

  6. Lauridsen J, et al. The effect of pelvic belts to manage low back and pelvic pain during pregnancy a systematic review and meta-analysis. Midwifery. 2025;148:104529. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40716213/

  7. Fransen M, et al. Exercise for osteoarthritis of the hip. Cochrane Database Syst Rev. 2014;(4):CD007912. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24756895/

  8. Santesso N, et al. Hip protectors for preventing hip fractures in older people. Cochrane Database Syst Rev. 2014;(3):CD001255. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24687239/

院長監修記事

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武内 晋司郎

(たけうち しんじろう)

シンセルクリニック総院長

三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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三重大学医学部卒業。済生会中津病院や淀川キリスト教病院などで整形外科医としての経験を積み、現在は再生医療専門シンセルクリニックを開設。柔道やラグビーの経験から怪我や加齢による悩みに深く寄り添い、再生医療の可能性を追求。「思うままに動ける人生を」を信条に、患者様一人ひとりに最適な医療を提供しています。

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